2025年4月18日(金)号

仮想銀行免許を3陣営に交付へ=SCB、クルンタイ銀、CP

 ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は4月17日、タイ中央銀行が仮想銀行(バーチャルバンク)の免許交付で、審査をパスした3陣営のリストを財務省に提出済みであることを明らかにした。当初の構想通り3者を選出したが、免許の交付を許可するかどうかは再度の評価を待つ必要があると述べた。関係筋が明らかにしたところによれば、3陣営はSCB・X、クルンタイ、CPグループで、早ければ今年末までに商業サービスを開始する見込み。
 仮想銀行は、支店を持たない銀行で、中銀は、2025年半ばにも免許取得者のリストを正式発表する。昨年3月20日から9月19日まで申請を受け付けていた。中銀の定めたスケジュールによれば、年央にリストを発表した後、財務省に送付して承認を得る。その後、ライセンス取得者は事業準備に1年を要し、サービス開始は2026年中頃になる見通し。ただし、正式発表はないものの、財務省筋によれば、中銀はすでにライセンス取得者を決定済みだ。
 SCB・Xが率いるグループは、中国の有力デジタル銀行のウィーバンク、韓国のカカオバンクと組んだ。
 クルンタイ銀行のグループは、AIS、PTTグループ(PTTオイル&リテール・ビジネス社)と組んだ。
 CPグループのアセンド・マネーグループは電子財布「トゥルーマネー」を提供しており、中国のアリババ傘下でフィンテック大手のアント・グループと提携している。
 仮想銀行の免許は5グループが申請していた。3陣営以外の申請者は、シー・グループとチャチャワン・ヂアラワンノン氏が率いるライトネット・グループ。前者は、バンコク銀行、BTSグループ・ホールディングス(BTS)傘下のVGI、サハ・グループ、タイランド・ポストと組んでいる。ライトネットはアジア太平洋地域のバーチャルバンクのリーダーであるWeLabと提携している。
 ピチャイ副首相兼財務相は、中銀が3陣営のリストを提出しことを明らかしたうえで、これ以上の件数が認められるかどうかは、さらに検討していく必要があると述べた。

◆SCB・X
 3陣営はいずれも、すでに金融サービスの提供に関して専門性と経験を有している。中でもSCB・Xは、サイアム商業銀行(SCB)を傘下に持ち、大口顧客から中小企業、小規模事業者といったあらゆる顧客層に対する本支店を通じた対面サービスとデジタル経由のサービスの両面で高い専門性を備えている。韓国最大のデジタルバンクで、仮想銀行事業で実績を有し、技術面でも優れているカカオバンクと提携している。さらに、中国で首位のデジタルバンクであるウィーバンクも加わっており、金融サービス提供に関する豊富な経験を有し、労働者層や銀行のサービスを利用していない、または不充分な層へのアクセスにも長けている。
 このグループは強固な体制を有し、国内有数の大手商業銀行としての実績からも信頼性が高い。そこに、技術面での高い専門性を持つ強力なパートナーとの提携、底辺層へのサービス提供に関するノウハウが加わっている。
 SCB・Xのアーティット・ナンタウィタヤーCEO[=写真]は、あらゆる面で準備が整っているため、免許を正式に取得すれば、今年末までにサービスを開始できると述べている。仮想銀行事業のCEOの人選も完了しており、事業展開のための人材や技術面での準備もサービスを開始できる水準まで整えていると述べた。

◆CPグループ
 仮想銀行免許の取得が見込まれているもう1陣営は、CPグループのアセンド・マネー。CPグループは小売店舗のネットワークが全国規模に広がっている。「7イレブン」は全国1万5000店舗を超え、「ロータス」は2451店。このほか「マクロ」も展開している。さらに、トゥルー・グループのユーザーベースもあり、移動通信のトゥルームーヴHは3380万回線、DTACは2120万回線のユーザー数を誇る。トゥルー・オンラインのブロードバンドインターネット利用者は500万人、トゥルービジョンの有料テレビサービス利用者は320万人に上る。
 消費者へのアクセスに疑問を挟む余地はなく、小売業と通信業のサービス提供者を合算すれば、すでに国内人口の過半数以上にアクセスしている計算となる。さらに7イレブンの1万5千を超える店舗網は、タイ全土の隅々をカバーしている。
 既存のネットワークをすべて活用して、多くの人々に容易にアプローチできるため、仮想銀行事業では商業銀行系よりも優位に立つ可能性も。アセンド・マネーはすべてのサービスを主にデジタル経由で提供しているため、他の金融サービス提供者や銀行と異なり、高コスト構造を抱えていない点も強みだ。

◆クルンタイ銀行
 クルンタイ銀行の陣営も他者に劣らない競争力を持ち、特に顧客基盤において大きな優位性がある。クルンタイ銀行とAISの顧客基盤と石油小売事業の顧客基盤を網羅する。このグループの大半の顧客はすでにデジタル上に存在しているため、顧客層に合致する商品を開発することができれば、競争で優位に立つことができる。

 ただしバーチャルバンク事業が成功するかどうかについては疑問が持たれている。海外では設立を試みた国がいくつかあるものの、成功に至らなかった例が多い。想定数のユーザー獲得に至らず、多くのバーチャルバンクが敗退を余儀なくされている。
 タイのバーチャルバンク事業で懸念点として挙げられるのが投資コストの高さ。登録資本金は50億バーツと高額で、新規参入を考える事業者にとっては慎重な判断が求められる。事業が軌道に乗らなければ、多額の投資が失われる。競争も激しい。仮想銀行は3者の競争にとどまらず、モバイル・バンキングとも競合する。新規参入であることから、顧客を獲得するため、デジタル預金に高金利を提示するなどの対応も必要になる。初期コストもかさむため、短期間での投資回収は難しい。

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