2025年4月25日(金)号

財政政策の余地縮小=公的債務の対GDP比見直し論議

 新型コロナの流行以降、タイの財政余地は大幅に縮小しており、将来の経済的な不確実性に対する対応力が低下している。カシコンリサーチセンターは最近のレポートで、財政赤字と高水準の公的債務が、今後の財政運営に重くのしかかっていると指摘した。
◆公的債務の動向と今後の課題
 政府には、準財政活動(Quasi-fiscal)を通じた支援の枠組みもあるが、費用は政府が補填しなければならず、その上限は年間予算の32%以内と定められている。2025年度の見込みは1兆300億バーツで、予算の27.4%にあたる。
 タイの財政余地はコロナ後に大幅に縮小し、今後は超高齢社会の到来や経済的リスクの高まりにより、歳出の膨張が続くと見られる。財政の持続性を確保するためには、赤字の縮小(財政再建)と歳出の効率的な運用が急務となっている。
 政府による財政出動が継続される見通しの中、公的債務の水準がGDP比70%を超える可能性が出てきた。プラユット政権時代のコロナ対策で1兆5000億バーツを借入たことなどにより、公的債務はすでにGDP比60%を超えている。現政権もデジタルマネー政策に伴う支出を継続しており、この政策だけで1750億バーツの債務が創出されている。4月には新たな給付も予定しているが、エコノミストの一部からは、財政負担の膨張に比して景気刺激効果が薄いとの懸念も出ている。一方、公的債務の増加は必要との見方もある。
 サイアム商業銀行(SCB)を傘下に置く金融持ち株会社、SCB・Xのアーティット・ナンタウィタヤーCEOは、公的債務の対GDP比上限を70%から引き上げることを提言した。家計債務がGDPの89%に達する中、財政出動による景気刺激は依然として重要だと述べた。
 CIMBタイ銀行のアモンテープ・チャワラー・チーフエコノミストも、公的債務がGDP比で5~10%増加し、70%に達することは現時点では大きな問題とはならないとし、将来的にはさらに拡大する可能性にも言及した。ピチャイ・チュンハワチラ財務相は、上限の引き上げについて即断していないが、完全には否定していないという。アモンテープ氏は、政府収支の管理が優先されるべきで、上限引き上げは最終手段になると述べた。
 1992年にEUがマーストリヒト条約で公的債務の上限をGDPの60%と定めたことで、この数値が国際的な基準と見なされるようになった。この水準は当時のEU加盟国の中央値を参考にしたもので、持続可能な経済成長の基準とは限らない。国際通貨基金(IMF)は2011年に、公的債務がGDP比60%を超える場合には財政リスク評価が必要になるとの見解を示したが、この水準を超えたからといって即座に財政が破綻するとは限らない。
 タイにおいて、2006年度末時点の公的債務残高はGDP比39.2%だったが、2012年度には41.9%に達し、その後もしばらく40%台で推移していた。コロナ禍を受けて2021年度に58.3%、2022年度には60.5%、2024年12月時点で63.9%に達している。2025年度には65.6%、2029年には69.3%に達するとの見通しを金融財政政策委員会が示している。
 公的債務の拡大に伴い、債務返済にかかる費用も増えている。2024年度の国家予算に占める債務返済費の割合は9.61%で、2025年度は10.9%、2029年度には15.2%に達する見込みとなっている。
 国債の信用格付け判断においては、政府の金利支払いが歳入の10%を下回っているかどうかが重要な指標とされており、2022年度は8.29%だった。現在のタイのソブリン格付けは「BBB+」となっている。公的債務管理事務局によると、今年度はこの比率が10%を超える可能性がある。
 政府は財政赤字の縮小を目指し、税収の増加に向けた施策を導入している。徴税効率の改善、課税対象の拡大、歳出の効率化などを進めてきたが、景気の低迷も影響し、税収は伸び悩んでいる。結果として、公的債務は依然として増加傾向にある。今後5年間で政府が計画している新規借入額は、財政赤字の補填のために総額で4兆8200億バーツに達する見通しとなっている。

マツダがディーラー会議=電動化に向けビジョン共有

 マツダは4月10日、バンコクで全国ディーラー会議「Mazda Mirai 2025」を開催した。「Joyful Driving into a New Era」(新たな時代へ、走る歓びを)をテーマに、今後のビジネス戦略とブランドビジョンを共有した。全国80拠点の正規販売店の代表、マツダの日本本社、マツダ・セールス(タイランド)の経営陣が一堂に会し、今後の協業強化と持続可能な成長への道筋を確認した。
 マツダ・セールス(タイランド)社のティー・プームポンパンCEO[=写真]は、今年の会議を「大きな変革に向けた重要な一歩」と位置づけた。今年度に投入予定の新型車と先端技術の導入に向けた準備を進める意向を表明した。マルチソリューション戦略のもと、100%電動車を含む多様なエネルギーの選択肢により、あらゆるライフスタイルや顧客ニーズに応える。


 ブランド価値を軸にした「Brand Value Management」(BVM)と、ステークホルダー中心の「Stakeholder Centric Approach」を重視。社員、ディーラー、顧客の3者すべてを主軸に据えた企業運営で、より包括的で持続可能な顧客体験の実現を図る。
 今年度の戦略は3本柱で構成される。第1に、組織文化の改革と人材育成を通じた機動的な企業体質への転換。第2に、テクノロジーと顧客データの活用を軸にしたCX(顧客体験)の最適化。第3に、オンラインとオフラインの垣根を越えたシームレスなカスタマージャーニーの提供。
 ディーラーネットワークについても構造改革を実施し、全80拠点に新たなPMA(Primary Market Area)制度を導入。高い潜在力を持つ販売店にはより広域な顧客対応の権限を付与することで、全国をカバーし、サービスの質の強化を図る。
 2030年ビジョンとして掲げる「走る歓びで人生に幸せをもたらす企業」の実現に向け、ブランドスローガン「Joy Drives Lives」(走る歓びが、人生を動かす)を企業哲学に据えた取り組みを推進する。顧客第一の姿勢(Customer Centric Mindset)を企業文化の中核とし、製品とサービスを通じた価値提供を継続することで、信頼されるブランドとしての地位を確立するとしている。

その他のニュース
[経済ニュース]

アユタヤ銀行の第1四半期=純利益は75.3億バーツ

塩分税導入=食品業界が公聴会提唱

再エネ電力購入による電気代上昇=エネルギー当局は否定

ファイナンシャルプランナー=高リスク資産の保有率下げ提唱

KバンクなどがREC取得支援=『グリーン・パス』開始

TTAがEVバイク工場=中国メーカーと提携

EVの生産と需要拡大を加速=税制優遇や補助金で支援強化

[社会ニュース]
バンコク都のペット条例=来年1月10日施行へ

チェンマイの5つ星ホテル=「ダーラテウィ」火災で全焼

ナコンパトムでも火災発生

タイの3大学が受賞=「THEアワード・アジア」

ラマ7スマート桟橋が開業

[ビジネス交流記]
ラオス航空に中国製旅客機を納入=ARJ21機を国内線に投入へ

[トピックス]
国民移転勘定(NTA)の国際会議を開催=人口構造の変化に対応した政策形成を議論

[企業紹介]
オーソトサパー社=新経営体制と長期戦略の推進

[BOI認可事業]
3月25日認可5事業

あわせて読みたい
無料トライアル 【無料トライアルのご案内】 タイ経済パブリッシングは毎日(土日祝を除く)、A4サイズのPDF版ニュースレターを定期購読者様にメール配信しております。 購読料金...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次