上半期の投資申請額1兆バーツ超に=デジタルやEV分野でFDI加速
投資委員会(BOI)は7月24日、今年上半期(1〜6月)における投資申請額が引き続き拡大し、世界情勢の不確実性が続くなかでも高い成長を記録したと発表した。申請件数は1880件、投資予定額は1兆582億2500万バーツに達し、前年同期比で件数が38%、金額が138%増加した。デジタル、電子機器、スマート電化製品といった産業分野での投資が牽引役となっている。ナリット・トゥードサティラサック事務局長は、タイが地域における強固な投資拠点としての地位を確立していることの現れだと述べている。

ナリット事務局長は、2025年のタイにおける投資動向は依然として高い成長を示しており、国内外の投資家から継続的に注目を集めていると述べた。上半期のデータは、件数、投資額のいずれにおいても前年同期を大きく上回っており、タイへの信頼と地域の中核としての役割を反映していると強調した。
投資予定額が最も多かった産業分野は、デジタル関連。89件の申請があり、投資予定額は5225億7700万バーツに達した。電子機器および電化製品が268件、1257億8600万バーツ、自動車・同部品が172件、451億9500万バーツ、再生可能エネルギー発電が191件で422億3800万バーツを数えた。
そのほか、農業・食品加工に184件で307億8500万バーツ、石油化学・化学品に161件で267億2600万バーツ、医療分野に68件で185億8200万バーツ、観光分野に17件で128億9400万バーツの投資申請があった。これらの数字は、先端産業を中心にタイへの投資が広がっている現状を示している。
◆半導体、EV、デジタル分野で大型案件相次ぐ
今年上半期に投資奨励を申請した注目プロジェクトには、タイが自動車、半導体、電子機器、デジタル分野における地域の投資拠点として際立った存在であることを示す案件が多数含まれている。
その代表例としては、大規模データセンター建設プロジェクト、日本の自動車メーカーによるEV/ピックアップトラックの生産拡張プロジェクト、ハイブリッド車向けパワーコントロールユニット(PCU)製造、EVおよびエネルギー貯蔵システム用バッテリーセルの生産、ノートパソコン、スマートフォン、データセンターなどに使用される特殊キャパシタの製造、半導体チップの組立・試験工程、プリント基板(PCB)の製造などが挙げられる。
これらのプロジェクトは、ハイテク・グリーン産業へのシフトが進むなか、タイが多国籍企業から投資先として引き続き高い評価を得ていることを浮き彫りにしている。
◆外国直接投資が引き続き拡大
上半期における外国直接投資(FDI)は、引き続き力強い拡大を示した。投資申請のあった外資の投資プロジェクトは1369件で、前年同期比59%増、投資予定額は7375億7200万バーツに達し、132%の大幅増となった。
国・地域別で、申請額が最も多かったのはシンガポールで2469億7700万バーツ、次いで香港が2186億3800万バーツ、中国が1022億6300万バーツ、英国が937億2600万バーツ、日本が498億1900万バーツとなった。
FDI増加の主因は、シンガポール、香港、英国、中国、日本からの大規模なデータセンター事業への投資で、これらのプロジェクトはタイのデジタルハブとしての潜在力を高めるとともに、AIやIoTといった新産業に対応する国内基盤を強化し、東南アジア域内市場との連携にも貢献すると期待されている。
地域別の投資動向をみると、投資額の大半は東部地域に集中しており、1011件、6606億3100万バーツにのぼった。次いで中部地域が3336億5400万バーツ、南部が200億8100万バーツ、東北部が193億5400万バーツ、西部が113億4200万バーツ、北部が45億7100万バーツとなっている。
◆スマート&持続可能産業への転換投資が拡大
今年上半期には、既存事業の高度化を図る「スマート&持続可能な産業(Smart and Sustainable Industry)」への転換を目的とした投資申請が増えている。この枠組みでは、エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーの利用、環境負荷の軽減、機械の近代化、デジタル技術や自動化、ロボット導入による生産性向上などが支援対象となっている。
1~6月の申請件数は365件で、前年同期比99%増、投資予定額は267億4100万バーツで、同43%増となった。企業の関心の高まりがうかがえる。
◆投資認可とBOI証発行も増加
また、同期間に投資奨励を正式に認可されたプロジェクトは1504件、総投資額は9040億6300万バーツに上った。これらのプロジェクトにより、今後タイ国内で11万人以上の雇用が創出される。また、年間3600億バーツ相当の国産原材料の使用が見込まれる。これは全原材料コストの42%に相当する。輸出額も年間で7800億バーツ以上増加する見通し。
実際の投資実行に最も近い段階である「投資奨励証(BOI証)発行」も順調に増えており、上半期に発行された案件は1310件、合計投資額は6529億300万バーツとなった。
ナリット事務局長は、世界情勢が不透明でリスクに満ちているなかでも、ビジネスの歩みは止められないと指摘。「多くの企業は、こうした変動を乗り越え、短期的なリスク管理に取り組むと同時に、長期的な投資戦略の構築に目を向けなければならない。重要なのは、良好な経済基盤を有し、インフラやサプライチェーンが整備され、質の高い人材がそろい、政府の支援策が充実している投資先を選ぶことだ」と述べている。
こうした条件を備えるタイには、多くの有力企業が潜在力を信頼し、投資増を決定しているとした。その結果として、今年上半期の投資統計は堅調な成長を維持しており、とりわけ高度技術産業であるデジタル、AIテクノロジー、電子製品、スマート家電、自動車・同部品のほか、農業、食品、再生可能エネルギーといった分野において顕著な動きがみられた。ナリット事務局長は、いずれも国の発展にとって重要な役割を担うターゲット産業だと述べている。
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