2025年7月31日(木)号

財務省の経済見通し=今年の経済成長率2.2%に上方修正

 ポーンチャイ・ティラウェート財政局長[=写真]は7月30日、財務省による最新のタイ経済見通しを発表した。それによれば、タイ経済は、米国による関税政策の影響から減速するものの、通年で2.2%の成長が見込まれるとした。4月時点での前回予測(2.1%)からの上方修正で、上半期に製造業と輸出の成長が予想を上回ったことと国内消費の継続的な拡大を考慮した。特に製造業については、前年に0.4%の収縮となった後、2025年には1.2%成長(予測範囲は0.7〜1.7%)が見込まれており、自動車・同部品、電子回路基板の生産の回復が支える。また、物品輸出額は、5.5%(予測範囲は5.0〜6.0%)の成長を見込んでおり、前回予測(2.3%成長)から上方修正した。今年前半に貿易相手国が予想を上回るペースで輸入を加速させたことによるものだが、年後半の輸出は、米国の関税措置の影響により、成長ペースが鈍化する見通し。財務省は米国のタイに対する相互関税率について、楽観的な見通しを立てている。一方で、物品輸入額は主に輸出向け生産に用いる資本財の輸入により、5.0%(予測範囲は4.5〜5.5%)の成長が見込まれている。
 民間消費はタイの経済成長の主要な原動力で、通年で3.1%増(予測範囲は2.6〜3.6%)と予測した。国内での購買力を反映したもので、国内消費からの付加価値税収が好調で、9四半期連続で拡大していることにより裏付けられているとした。


 民間投資は、3.0%(予測範囲は2.5〜3.5%)を見込んでおり、前回予測の0.4%から上方修正した。投資は継続的に回復する方向にあり、年前半には投資委員会(BOI)への投資申請が、投資予定額で1兆バーツを超える1880件あったことが投資を後押ししている。
 政府消費は、1.2%増(予測範囲は0.7〜1.7%)と予測した。政府投資は3.9%増(予測範囲は3.4〜4.4%)を見込む。継続的な予算執行と1570億バーツの予算枠組みの下での経済刺激策が支える。この経済刺激予算は、タイ経済の構造を持続的な成長に適したものにするためのもので、閣議においてすでに1153億7500万バーツの予算配分が決定済み。インフラ(特に水資源、運輸)、観光、輸出部門への影響緩和と生産性の向上、地方経済など、さまざまな分野のプロジェクトが含まれる。
 国内の安定性は健全な水準にあり、通年の一般インフレ率は0.4%(予測範囲は-0.1〜0.9%)と見積もった。一方、対外安定性については、経常収支が146億㌦の黒字、GDP比2.9%相当になる見通し。貿易収支の黒字によるところが大きい。
 財務省報道官を兼ねるポーンチャイ局長は、タイ経済は年前半に良好な成長となったが、年後半には、米国の輸入関税措置による直接的・間接的な影響を受けるため、経済の方向性を注視する必要があると述べた。財務省は、こうした事態に対応するため、輸出部門の影響軽減を目的とした経済対策の実施や、直接的な影響を受ける民間部門に対する迅速かつ的確な金融支援策の準備を進めていると明らかにした。これには政府系特殊金融機関を通じた特別低利融資の提供も含まれ、特に米国向け輸出に関係するサプライチェーンに属する中小企業の資金繰りを支援し、財務負担の軽減を図ると述べている。
 タイとカンボジアの紛争による影響については、被害は国境地域に限定され、軍事衝突による財産や経済面での損害にとどまると評価した。財務省は、国境紛争により被害を受けた人々の影響緩和のための支援策を講じている。
 国境地域の各県知事に対しては、1県あたり1億バーツの予備費を割り当て、必要に応じてさらに増額する方針とし、各県が柔軟に管理できるようにする。被災者の納税期限を延長するほか、政府系金融機関を通じた低利融資や債務返済猶予により、資金繰りを支援する。ポーンチャイ氏は、財務省が現状を注視しつつ、今後さらに適切な追加措置を速やかに講じる準備を整えていると強調した。
 今後、タイ経済に影響を与える要因として注視すべき事項として、米国の関税政策とその間接的な影響を挙げた。特に米国の関税政策によって影響を受ける国々からの製品の流入を警戒している。
 このほか、米連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利の動向、国内外の地政学的対立の状況、家計債務の水準、米国の関税政策により影響を受ける産業における投資や生産拠点移転の動向も注視する必要があると指摘した。

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[データ]
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