2025年8月1日(金)号

トランプ関税、タイは19%=7日後に施行と発表

 トランプ大統領は、タイ時間の8月1日、新たな相互関税を課すための大統領令に署名したと発表した。7日後に発効する。タイ政府は、8月1日の交渉期限までに通商交渉で大筋合意を得たとしており、この日、発表された個別の貿易相手国・地域からの輸入品に対する関税率の一覧表では、タイの税率は19%となっている。
 タイ政府は、トランプ氏が進める相互関税への対応で、米国からの輸入拡大や対米投資増などを含む包括的な戦略を策定して交渉に臨んだ。ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は、7月29日の時点で、米国のタイに対する関税率が8月1日または2日に発表される見通しで、36%という現行水準が維持される可能性は低いと述べていた。ピチャイ氏は、この時点で、米国との交渉は継続中であり、多くの論点はすでに合意に達しており、残るのはわずかだと述べていた。
 トランプ大統領は、これより前、タイとカンボジアが停戦に合意しなければ、いずれの国とも関税交渉を進めないとXで発表していた。停戦合意後、トランプ大統領は米政府関係者に対し、両国との通商交渉を再開するよう指示したと発表している。
 ピチャイ氏は、「我々は国の安全保障と経済の両面を考慮しなければならない」と述べ、「米国に提出した提案は双方にとって利益があり、タイの民間部門の競争力向上につながる措置を講じる機会にもなる」と強調した。
 トランプ氏は個別の通商協定を締結していない国々には近く15〜20%の関税が課されることになると述べていた。最近の報道によれば、トランプ氏は7月28日の停戦合意に満足しているようで、タイとの通商合意にとって好材料となったとの見方もある。
 米国は各国との関税交渉を急ピッチで進めており、これより前には交渉を終えた英国に10%、日本に15%、EUに15%、韓国に15%、インドネシアとフィリピンに19%、ベトナムに20%、インドに25%の関税を課す方針を明らかにしていた。
 ピチャイ副首相は、タイの交渉方針として、米国製品の関税引き下げ、国内で供給が不足する商品の米国からの輸入拡大、対米投資の促進、非関税障壁の是正などを挙げ、「ウィン・ウィンの関係を重視しており、タイが他国と締結している自由貿易協定(FTA)と同様の形で米国に対しても関税を引き下げることは不自然ではない」と語っていた。また、関税を引き下げたからといって全ての商品を購入するわけではなく、タイ国内で生産が不十分な品目に限定する方針を示している。輸入増により、米国との貿易黒字は圧縮される見通し。
 投資に関しても、対米投資の拡大を提案しており、さらに米国側がタイへの投資に関心を示せば、全面的にこれを支援するとした。米国から15〜20%の関税を課された国の多くは5000〜6000億㌦規模の投資を提案しているが、ピチャイ副首相は「各国の規模や経済状況は異なるが、タイの提案は相応な規模」と述べている。
 最大の課題は非関税障壁の是正で、煩雑な規制や認可の遅延を解消して競争力を高める必要があると指摘。これらの改革は、今回の交渉とは無関係に本来取り組むべき課題でもあると指摘した。
 ピチャイ氏は、今回の新たな貿易ルールにより、すべての国が影響を受けるとし、タイもコスト削減や中小企業の競争力強化、制度の簡素化などによって対応力を高める必要があると強調。影響を受ける産業には個別の支援策や投資奨励、デジタル化支援などを講じる考えを示した。
 関税水準については「最終的に影響を受けるのは米国の消費者で、タイが他のアセアン諸国に比べて不利な税率を課されない限り、大きな問題にはならない」との見解を示した。
 7月31日には下院に米国との関税交渉に関する政府の対応方針を説明した。影響を受ける産業への支援策を含む1570億バーツ規模の経済刺激予算を政府が準備しており、現時点で残る420億バーツの一部を支援策の財源にするとした。産業界は、生産コストの上昇や農業部門の脆弱性を懸念しているが、ピチャイ副首相は関税問題がなくとも、タイ経済は輸出競争力、技術移転、行政の効率、制度的障壁など多くの構造的問題を抱えていると述べている。
 タイが今後輸入する可能性のある商品については、価格や品質面で優位なものを選定する方針で、石油やLNG、国内需要が国内生産量を上回るトウモロコシなどを挙げた。
 一方、チャトゥポン・ブルットパット商業相は、タイの提案があらゆる側面から検討され、国全体の利益を基盤にしたものだとし、企業への支援体制を強化すると述べた。ソフトローンによる資金繰り支援や、貿易振興局のワンストップ輸出サービスセンターに「米国関税相談窓口」を設置し、関係機関が連携して対応にあたると述べた。新市場の開拓や貿易交渉、国内消費促進キャンペーン「タイタム・タイチャイ・タイチュアイタイ(生産・消費・支援)」などの取り組みも進める。
 なお、トランプ大統領は銅製品の輸入に50%の関税を課す大統領令に署名し、8月1日から実施される。自動車、鉄鋼、アルミに続くもので、安全保障上の観点から調査されたうえでの措置。対象となるのは銅の半加工品や加工品で、銅管、電線、ケーブル、端子、電子部品などが含まれる。
 米国は従来適用していた「de minimis」規定(一定金額以下の商用荷物に対する関税免除)を廃止する。これにより、8月29日以降、800㌦以下の商用小包でも関税が課される。国際郵便を通じたものは除外。

タイ・カンボジア国境紛争=4日にGBC会合

 マリット・サギアムポン外相は、タイ・カンボジア国境の状況について、「タイは国際社会で優位を保っている」と強調した。8月4日に開催予定のタイ・カンボジア一般国境委員会(GBC)では、主権と国民の安全確保という2つの目標を掲げて臨むと明言した。
 国防省は、マレーシアに対し、仲介国として会合の開催を引き受けるよう求める文書を送付した。当初、カンボジアでの開催を予定していたが、当事国での開催は国際慣行に反すると主張している。
 GBC会合の議題は二国間の枠組みによる平和的解決の強化。マリット外相は31日の記者会見で国境問題について言及し、国際政治と外交の舞台において、タイは、平和的手段と国際法、国連憲章およびアセアンの原則を堅持して対応していると述べた。国連安全保障理事会もタイの二国間協議による解決方針を支持しているとした。
 軍事面では、タイ軍が主権の及ぶ地域11か所を奪還するなど優位に立っているとし、カンボジア兵の拘束はタイの主権を侵害したためで、ジュネーブ条約に基づき、侵略や攻撃の恐れがないと判断された場合にのみ送還すると説明した。外相はまた、GBC会合におけるタイ側の2つの目標として、①主権と領土保全の堅持、②国民の安全確保を挙げ、「主権と領土は一切譲らない」と強調した。
 国防省のスラサン・コンシリ報道官によると、カンボジアからナッタポン・ナークパニット国防大臣代行にGBC会合の招待状が届いている。しかし国際慣行に基づき、対立当事国が自国で会合を開催すべきではないとし、マレーシアが第三国として中立的に開催すべきだとの立場を表明した。タイ側はこの旨を記した文書をカンボジアとマレーシアに送付済みで、カンボジアからの回答を待っている。
 陸軍は8月1日、停戦違反の現場視察旅行を実施。11か国の大使および公使、23か国の駐在武官26名、外国メディア、タイ国内メディア、安全保障関係機関の職員らがウボンラチャタニ県の第21航空団に向けて出発した[=写真]。視察団の訪問先には、カンボジア軍によるミサイル攻撃を受けた7イレブン店舗が含まれる。この攻撃ではタイ国民8人が死亡し、うち1人は子どもで、さらに10人が負傷した。

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