競争力強化法を改正へ=「税額控除」など新たな優遇策導入
投資委員会(BOI)は、国際競争力の強化を目的とした法律の改正を承認し、新たな投資優遇策として「税額控除(Tax Credit)」制度の導入を決定した。経済協力開発機構(OECD)の新たな国際課税ルール(グローバル・ミニマム課税)への対応を視野に、ターゲットとする投資家の誘致を狙うほか、先端技術と高度人材の育成への投資を促進する。また、ディープテック分野のスタートアップを強化する新たな支援策も決定した。
ナリット・トゥードサティラサック事務局長は、8月1日に開催された「ターゲット産業のための国家競争力強化政策委員会」の会合での決定事項を明らかにした。会合はピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相[=写真]が議長を務め、2017年制定の「ターゲット産業のための国の競争力強化法」の改正を承認した。

今回の改正により、BOIのもとにある同法の枠組みに新たな優遇措置として「税額控除」が加えられる。世界各国との投資誘致競争において優位性の確保を目的とするもので、世界の新たな税制枠組みである「グローバル・ミニマム課税」に対応できる体制を整える。また、先端技術への投資や高度人材の育成に対する継続的な民間投資を促す狙いもある。改正法案は閣議決定を経て国会に提出される。
OECDはグローバル企業に対して最低課税制度を導入している。年間収入が7億5000万ユーロ以上の企業グループを対象とするもので、これらの企業は、各国の優遇措置により実効税率(Effective Tax Rate)が15%未満となることが多いため、OECDは投資受入国または親会社所在国に対して、追加課税(Top-up Tax)によって15%に達するまで課税できる仕組みを導入した。
このルールにより、各国は自国に拠点を置く多国籍企業に対する追加課税のための法令の整備を進めており、タイも財務省が2024年に「追加課税に関する緊急勅令」を制定し、今年1月1日より施行されている。現在、タイで投資奨励を受け、同制度の対象となる多国籍企業は約1500社あり、タイの大企業およそ100社も該当している。
こうした国際的な課税ルールの影響を受け、各国では「グローバル・ミニマム課税」の影響を和らげるため、独自の支援策を相次いで打ち出している。ナリット事務局長は、競争力維持と継続的な投資誘致のため、BOIが所管する産業競争力強化法の改正案を提案したと述べた。新たな投資奨励措置として、OECDが認める方式である「税額控除(Qualified Refundable Tax Credit:QRTC)」を導入し、より実効性のある投資優遇を整備する方針。ターゲット産業の生産基盤の維持を図るとともに、競争力の強化につながる新たな投資を促し、経済成長の持続につなげる。
QRTCは、国の競争力の向上に資する重要な投資や支出、たとえば、研究開発、イノベーションの創出、高度人材育成、標準の引き上げ、デジタル技術への投資、自動化、サステナビリティ関連の支出をもとに税額控除を算出し、その額を法人税、追加課税、その他財務省が定める税金の支払いに充当できる制度。控除額を使い切らずに残額がある場合、一定の条件のもと、4年以内に現金での還付も可能とする。企業のキャッシュフローの改善を実現しつつ、長期的な競争力の強化を後押しする仕組みとなる。
国家競争力強化政策委員会はまた、高いポテンシャルを持つスタートアップを成長段階(Growth Stage)で支援するため、支援策の改善を承認した。BOIが所管する競争力強化基金を活用し、スタートアップに対しマッチング・ファンド形式で資金を供与する。
支援対象となるのは、国家イノベーション機構(NIA)に登録されたベンチャーキャピタル(VC)または国内金融機関が設立したVCから、1000万バーツ以上の出資を受けたスタートアップ。BOIがVCの出資額を上限に、1社あたり最大2000万バーツまでを追加支援することで、イノベーションの発展と海外市場への展開を後押しする。
この支援策は、農業・食品、バイオテクノロジー、医療、ロボティクス/オートメーション、AI技術、サーキュラーエコノミーといった重点産業におけるディープテック開発に特化したスタートアップを対象とする。タイ国籍の個人または法人が51%以上の株式を保有し、創業者グループ(Founder)が60%以上の株式を保有していることが出資の条件。
ナリット事務局長は、「今回の産業競争力強化法改正により、OECDの最低課税ルールに対応した新たな政策手段を得ることができる。税額控除は、研究開発、高度人材の育成、生産効率向上に資する良質な投資を呼び込む有効な手段となる。また、新たに承認されたスタートアップ支援策は、特に先端技術分野でのタイ企業の成長機会を広げ、国家的な強みの強化にも寄与する」と述べた。
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