GBC会合で13項目合意=停戦厳守でアセアン監視団を設置
タイ・カンボジア国境情勢は、8月4~7日にマレーシアで開催された合同一般国境委員会(GBC)会合で大きな節目を迎えた。7日、米国、中国、マレーシアがオブザーバーとして参加するなか、タイ側代表のナッタポン・ナークパニット国防相代行[=写真右]と、カンボジア側のティア・セリハ副首相兼国防相が合意文書に署名した。タイ側は会合で13項目を提案。カンボジア側は独自案を持たず、タイ案に修正を加えて全13項目で合意した。

タイ側は、地雷除去や戦死したカンボジア兵遺体の回収、コールセンター詐欺摘発での協力を要請。カンボジア側は、戦闘発生時にタイがF-16などの空軍戦力を使用しないことや、スリン県パノムドンラック郡のタームアントム遺跡を含む11か所の鉄条網撤去を求めた。
両国は、停戦違反の有無を衛星や最新技術で確認し、アセアン各国の駐在武官による現地視察体制を構築することで一致。停戦厳守、武力挑発や偽情報拡散の回避、人道法遵守、遺体の本国送還、捕虜送還、二国間協議の継続などが合意に盛り込まれた。
今後2週間以内に地域国境委員会(RBC)を開き、停戦手順を具体化する。9月には再びGBCを開催し、外務省管轄の合同国境委員会(JBC)と並行して進捗を確認する。
ただし、タイ陸軍はカンボジア側を全面的には信用しておらず、現地ではカンボジア軍が陣地強化や兵器配置替えを行なっていると指摘。停戦中ながら双方とも戦闘態勢を維持している。
ヂラユ・フアンサップ政府報道官は7日午後3時半からの会見で、協議の結果、7月28日午前0時点の場所から動かないという「D-Day」方式を適用することとなったと説明した。兵力増強を禁止するとともに、停戦合意を厳格に順守することを再確認し、アセアン監視団の現地派遣を急ぐよう求めた。また、1か月後に再度GBC会議を開くことが決まったと述べた。
ナッタポン大将は、アセアン議長国として会議の円滑な実施に尽力したマレーシア政府に謝意を表した。今回の会議は、7月28日にマレーシアのプトラジャヤで行なわれたタイとカンボジアの首脳会談を受けて開催されたもので、その場で双方は停戦に合意した。タイ側はこの合意に基づき厳格に停戦を実行してきたが、カンボジア側には停戦違反がみられた。タイは最大限の忍耐をもって対応し、自衛のための場合に限って応戦たことを強調している。
現在、カンボジア側はドローンによる偵察という挑発的行為を行なっているほか、フェイクニュースが流されており、タイ側は交渉や信頼回復に資する雰囲気を損ねていると指摘した。
ナッタポン大将は、タイの会議参加の目的は、率直かつ誠実に話し合い、停戦を持続可能な形で進展させるための道筋を探り、タイ・カンボジア国境に再び平和と安定をもたらし、両国国民が日常生活を取り戻せるようにすることと説明。「会議で、カンボジア側は停戦措置に対する真摯な姿勢を示した。これまで発生した停戦違反は、現地の作戦部隊による独断行為だった可能性がある」と語った。
ヂラユ氏によれば、今回の会議での重要な合意事項は次のとおり。
1.停戦を厳格に順守する。すべての種類の兵器を対象とし、両国は停戦が合意された日(2025年7月28日24時)以降、現在の配置を維持し、いかなる追加の兵力増強も行なわない。
2.臨時の監視団を設置する。監視団は、タイとカンボジア駐在のアセアン加盟国の武官で構成し、マレーシアの駐在武官が率いて定期的に現地で監視活動を行なう。国境を越えることはなく、両国それぞれのRBC(地域国境委員会)およびGBC(合同国境委員会)の枠組みと緊密に連携し、いずれの側による停戦違反も発生しないよう努める。
3.両国は、軍事的挑発行為や、歪曲情報や虚偽情報の発信を避け、平和的解決に向けた対話を促進する環境を醸成する。
4.両国は、国際人道法を順守し、戦死者の遺体を尊厳と名誉を持って速やかに本国へ送還する。また、国際法の原則に従い、拘束された兵士については、武力行使が完全に終了した時点で直ちに送還することとする(ジュネーブ条約第3条に基づく)。この間、タイ側は、関係者を国際人道法の原則に則って適切に扱っていることを改めて確認した。
5.両国は、既存の二国間対話チャネルとメカニズムを活用して、事態の悪化を防ぐための問題解決を行なう。今後、合意事項の調整のため、2週間以内にRBC会議を開き、その後1か月以内に再びGBC会議を開き、本会議での合意事項の進捗を確認する。
ヂラユ氏によると、タイ側は重要な追加協議を提案したが、カンボジア側は受け入れておらず、今回はまず停戦の実施に重点を置き、この件は次回のGBC会合で協議することになった。タイ側提案は、地雷除去に関する協力と国際犯罪、とりわけオンライン詐欺の取り締まりに関する協力の2点。地雷は緊張を引き起こし、武力行使につながる主要な要因で、タイ側は両国国民の安全確保のため、カンボジアと協力して地雷除去を行なう用意があると提案した。また、オンライン詐欺はタイ国民と域内の他国に広範な影響を及ぼしている。
ナッタポン大将は、双方が協議し合意した内容が具体的な成果を生むためには、両国の協力と誠意が不可欠と指摘。タイ側は今後も協力と真摯な対話を続けることを確約し、善隣関係の原則の下で臨むとし、カンボジアも同様に対応してくれることを期待していると語った。続けて「タイとカンボジアは国境を接する隣国であり、互いから離れることはできないし、アセアンという同じ家族の一員でもある。問題を迅速に解決できれば、国境地域に平和が戻り、両国の国民は再び穏やかな通常の生活を送ることができる」と述べた。
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