第2四半期GDPは2.8%に減速=経済構造改革を提言
国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局が8月18日に発表したGDP統計によると、第2四半期(4~6月)の経済成長率は2.8%となり、第1四半期の3.2%から減速した。上半期の成長率は3.0%に達した。ダヌチャー・ピチャヤナン事務局長[=写真]は会見で、米国との間で原産地規則に関する協議を急ぐ必要があると提言した。タイ経済は長期的な競争力強化に向けて内側から構造改革を進める必要があると指摘する一方、政治動向が経済に影響を及ぼすことはないとの見方を示した。

季節調整済みの前四半期比成長率は0.6%で、前四半期の0.7%から鈍化した。第2四半期の経済は、農林水産業が6.0%成長したことが大きな牽引力となった。一方で、非農業部門は2.5%増にとどまり、前四半期の2.9%から減速した。製造業は0.8%の成長、サービス部門は3.5%の拡大となり、卸小売、情報通信、金融・保険などの分野で成長が加速した。
支出面では、民間消費支出が2.1%増となったが、前四半期の2.5%から減速した。サービス消費の伸びが鈍化した一方で、耐久財、半耐久財、非耐久財の消費は増加した。政府消費支出は2.2%増だった。また、投資は5.8%増となり、前四半期の4.7%から加速した。投資の伸び率は過去5四半期で最も高い水準となった。
NESDCは2025年の経済成長率見通しを、従来の1.3~2.3%(中央値1.8%)から1.8~2.3%(中央値2.0%)に引き上げた。上方修正は、輸出、民間投資、工業生産の改善による。米国がタイからの輸入品に課す関税が19%と、アセアンの競合国に近い水準になったことも背景にある。タイ経済は当初の予想よりも良好な成長を遂げそうで、こうした要因に沿って経済予測を上方修正した。
ダヌチャー事務局長は、「米国による関税水準がある程度明確になったことで懸念が和らいだ。しかし競争力を高めるためには規制を見直す必要がある」と指摘した。タイの関税率はアセアン諸国と近似した水準にあるが、米国とは原産地規則や第三国産品の迂回輸出防止で協議を行なう必要がある。迂回輸出とみなされれば、40%の高関税を課されるリスクがある。
ダヌチャー氏によると、今回の経済見通しの上方修正には、政治的不確実性やタイ・カンボジア国境の影響は織り込まれていない。現時点では国境情勢の影響は、タイ経済全体には及ばないとみられるが、地域レベルでは影響が出る可能性がある。労働市場にも影響が及ぶが、タイ商業会議所(TCC)やタイ工業連盟(FTI)は他国からの代替労働力を確保できるとしている。
NESDCは、今後予想される政治的不確実性についても、今年残り期間の経済への影響は大きくないとの見方を示した。2026年度予算編成のプロセスがすでに大きく進展していることが理由。また、経済刺激策予算も執行準備の段階にあり、予算局が各プロジェクトの支出項目を審査済みで、調達・契約を実施できる段階にある。
タイ経済は今後、2%前後の成長にとどまり続ける可能性があり、ダヌチャー事務局長は、年率3%以上の成長を実現するには経済構造を改革する必要があると述べている。国内のサプライチェーンを広げ、新しい技術を活用した製品を増やす。今後2、3年で成長が高まる時期には、同時に高度技術を要する分野でタイ人労働力の能力を強化する必要がある。ダヌチャー氏は、コストの低い生産システムの構築と転換を急がなければならないと語った。
また、この取り組みは政府と民間の協力が不可欠で、産業分野と農業分野の双方で進める必要がある。特に、農業では従来の「量」を重視するのではなく、製造技術の高度化を通じて「質」の向上を目指す方向にシフトする必要があるとした。
ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相は、NESDCが今年の経済成長率を2%と予測したことについて、世界経済の減速、地政学的対立、生産拠点の移転、米国の貿易制限措置など複数の圧力要因が存在すると指摘した。そのうえで、適切な形で改善と課題の解決に取り組めば、経済は徐々に上向いていくとし、輸出、観光、製造業、農業部門での成長に期待を示した。
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