2025年9月1日(月)号

ペートンターン首相失職で内閣総辞職=後継はチャイカセーム氏軸に

 憲法裁判所は8月29日、ペートンターン・チナワット首相兼文化相に重大な倫理違反があったと断定。憲法が定める国務大臣資格を喪失したとの判断を6対3の多数決で下した[=写真]。これによりペートンターン氏は首相ならびに文化相としての地位を失い、内閣も総辞職した。次期首相選びでは、プームタム党の最後の首相候補であるチャイカセーム・ニティシリ氏[=写真]が最有力だが、対立候補として野党に転じたプームチャイタイ党のアヌティン・チャーンウィラクン党首の名前も浮上している。


 憲法裁は、カンボジアのフン・セン上院議長との電話会話の音声流出をめぐり審理し、6対3の多数でペートンターン氏を職務停止の仮処分を受けた7月1日付で首相職から罷免する判決を下した。判決では「家族間の関係や自身の人気の維持を優先し、国益を二の次にした」と断じた。また国軍への批判が国境の防衛体制を揺るがし、カンボジアに介入の口実を与えたと強調した。
 この判決に伴い内閣も総辞職となるが、プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼内相は新たな首相が選出されるまで暫定首相を務める。
 裁判所は、ペートンターン氏の発言が国軍を敵視し、フン・セン氏と同調するかのような姿勢を示したことについて、国を政治的に脆弱にしたと指摘した。また、外国の指導者に同情を求めた行為は交渉戦術ではなく、職務の不適切な遂行であり、国益よりも個人的利益を優先した行為は、首相の威厳を損ない国民の信頼を失わせる重大な倫理違反と結論づけた。
 ペートンターン氏は判決後に記者会見を開き「司法手続きを尊重し、判決を受け入れる。ただし個人的利益を求めたことは一切ない」と述べた。そのうえで「政治の安定を取り戻すため、すべての関係者が協力すべきだ」と呼びかけた。
 新たな首相は下院議員の投票で選出される。すでに憲法の経過規定は施行期限を過ぎており、上院は関与しない。
 各党は次期政権の樹立に向けて動きを加速させている。プアタイ党はチャイカセーム氏を擁立する方針で、党幹部がバンコク市内のホテルに集まった。野党側ではブームチャイタイ党が他党と連携し、アヌティン氏を首相に推す動きを強めている。
 キャスティンボードを握るとされた25議席を持つクラータム党はアヌティン氏支持を表明。またプアタイ党のカンチャナブリ県選出の議員を中心とする約10人のプアタイ党所属議員も党の方針に反してアヌティン氏を指示すると伝えられている。
 この結果、両陣営の議席数は拮抗しているが、どちらの側も最大議席を持つ民衆党の支持がなけれれば過半数に届かない。
 143議席を有する民衆党のナッタポン党首は「最大政党として政治的行き詰まりを解決する。新首相は憲法改正と解散総選挙を約束すべきだ」と述べている。改憲と4か月以内の下院解散総選挙を約束するなら、首相指名に協力するが、野党として新政権を監視し続けるとの立場を強調した。
 アヌティン氏は、民衆党が出した条件を受け入れると表明している。一方、民衆党の源流である旧新未来党の創設者のタナトーン・ジュンルンルアンキット氏は、タクシン・チナワット氏が29日に接触してきたことを明らかにしている。
 今回の判決は、政界に影響力を持ち続けてきたチナワット家にとって新たな打撃となった。9月9日にはタクシン氏の入院問題「警察病院14階事件」に関する判決も予定されている。

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