プアタイ党が解散権行使=民衆党はアヌティン氏支持を表明
最大与党のプアタイ党は9月3日、下院解散のカードを切った。プームタム・ウェーチャヤチャイ首相代行[=写真]が午前10時30分に開いた記者会見で明らかにした。勅令が公示されれば、憲法の規定で45~60日以内に投票が行なわれることになるが、解散権行使の適法性が焦点になっている。一方、下院に最大議席を有する民衆党は同日、次期首相選びでプームチャイタイ党のアヌティン・チャーンウィラクン党首を支持すると発表した。党執行部が最終決定を下した。4か月以内の下院解散と新憲法起草のための憲法改正を条件として首相指名に協力するが、連立政権には参加せず、野党として政権を監視するとした。下院の解散が無効とされた場合、アヌティン政権は150議席足らずの少数政権として発足することになる。

プームタム氏は会見で、すでに前日(2日)に下院解散を上奏したことを明らかにした。現在、民主主義の制度が歪み、本来あるべき形から外れていると述べ、解散に踏み切った経緯を説明した。民衆党がプームチャイタイ党のアヌティン氏を首相に推しながら政権には加わらないと表明したことから、政治勢力は依然として3極のままで、この状況で国民の信頼を取り戻せなければ、経済を含む多方面に深刻な影響が及ぶとした。そのうえで、党の法務部門と首相代行としての自身が判断したのは、権限を国民に返すべきだということと述べた。今後は国王の裁可に委ねられ、憲法に基づくプロセスが進むことになる。プームタム氏は、「民衆党とプームチャイタイ党は今後の対応をそれぞれ考えるべきだ」と語った。
プアタイ党は、民衆党がプームチャイタイ党と連携して次期政権を樹立する可能性が高まったことを受け、下院解散の準備を進めていると明らかにしていた。プアタイ党には最後の首相候補として非議員のチャイカセーム・ニティシリ氏がいるものの、8月29日以降の同党と民衆党との協議には参加しておらず、プアタイ党からの正式な擁立発表もなかった。
ソラウォン・ティエントーン幹事長は、民衆党がプームチャイタイ党の首相候補を支持すると表明した一方で、連立には加わらない方針を示しているため、政権の議席数は130程度にとどまり、安定多数を確保できないことを解散権行使の理由に挙げた。下院解散の合法性に関しては異論が出ており、内閣が総辞職して暫定政権にあるなかでの解散はできないとの指摘もあるが、プームタム氏がすでに手続きを済ませていることを強調した。
プアタイ党は党勢の回復が困難な状況に追い込まれており、下院を解散しなかった場合でも遅くとも4か月後に実施される次期総選挙では議席を大幅に減らすとの見方が有力だ。プームチャイタイ党の政権が発足すれば、同党はカジノ推進政策などプアタイ党が進めようとした国民からの批判の多い政策を取り消すことで党勢拡大を目論むものとみられ、プアタイ党の支持率はさらに低下する。
政治評論家は、官僚機構を掌握する与党の地位を維持したまま解散総選挙に突入するのがプアタイ党にとって最善策との見方を示している。議席は減るものの、野党に転じて戦うよりは、善戦できるというのがプアタイ党の出した答えのようだ。
ただし、下院解散の権限は首相のみにあり、首相代行にはその権限がないとの法解釈があるほか、たとえ法的に可能であっても憲政の常道を外れることへの批判は免れない。
プアタイ党のチューサック・シリニン副党首はこの日朝の記者会見で、前夜の党幹部の協議で、仮に新首相を選出しても、国王の裁可後、施政方針演説から4か月以内に再び下院を解散し、45~60日以内に総選挙を実施することになるのであれば、新政権は実質的に国政運営を担うのではなく、解散のために存在する政権になるとの認識で一致したと説明。この危機的状況で、国のリーダーを選ぶプロセスが、国政運営ではなく解散のためだけに費やされるのは問題だと指摘した。
首相代行に解散上奏の権限があるかどうかについて、内閣法制委員会事務局は権限なしとの見解を示したが、他の法律家は権限ありとしていることを示し、プームタム氏が首相代行として完全な権限を持つとの立場を示した。また、憲法上、解散の布告は国王大権で、上奏する役割は首相が担う。そのため、判断は国王の裁可に委ねられ、首相代行が理由を添えて上奏すれば成立し得るとした。
チューサック氏は、首相代行による解散権の行使は違憲とする訴訟が起きた場合について、「裁判所の判断を待つしかない」と答えた。また、首相選出の手続きと解散手続きが重複する可能性については「国会が検討すべきだ」とした。
一方、民衆党のナッタポン・ルアンパンヤーウット党首は午前8時50分に開いた記者会見で両党合意により、アヌティン氏を新たな首相に推挙すると述べた。新首相は、国会での施政方針演説の日から4か月以内に下院を解散する。憲法裁判所が、憲法第256条に基づき、国会による2017年タイ王国憲法の改正に先立ち国民投票が必要と判断した場合、新内閣は、憲法起草議会による新憲法起草に向け、可能な限り速やかに2017年タイ王国憲法の改正に関する国民投票を実施する。これは、総選挙の日より遅くなってはならないとした。憲法裁判所が、憲法改正前の国民投票を行なう必要はないとの判決を下した場合、新内閣は選挙で選ばれた憲法起草議会による新憲法の起草プロセスを確立するための改正案を速やかに作成する。新首相が4か月以内に下院を解散することを確実にするため、プームチャイタイ党はいかなる手段を使っても多数派政権を樹立してはならない。民衆党は野党として存続し、新政権の運営を全面的に監督することを確認する。民衆党からは閣僚ポストに就かない。
ナッタポン党首は、アヌティン氏支持の決定は、党の利益のためではなく、外部勢力からの干渉を防ぎ、新憲法の起草を可能にし、国民に権力を返すためと断言した。
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