首相代行の解散権行使を拒否=枢密院が勅令案差し戻し
プームタム・ウェーチャヤチャイ首相代行が9月2日に下院解散に関する勅令案を上奏したが、枢密院事務局が難色を示したことが3日、明らかになった。同事務局は上奏文を審査し、意見を付して国王に裁可と署名を仰ぐ役割を担っているが、勅令案を内閣官房に差し戻したとする報道が広まった。プームタム氏は、下院解散の上奏について、憲法と法律に従ったと述べ、法的に成立するかどうかについては言及を避けた。また、却下されたとの報道についてもコメントを控えている。一方、ワンムハマド・ノーマター下院議長は3日、首相指名投票を5日に実施すると発表した。首相の選出は憲法第159条に基づき公開投票で行なわれ、492の全議席の過半数にあたる247票以上の支持が必要。アヌティン・チャーンウィラクン氏が第32代の首相に指名される。
報道によれば、下院解散に関する勅令案が上奏手続きに則していないことが差し戻しの理由とされる。暫定政権による解散権の行使については、内閣法制委員会事務局が「上奏できない」との見解を示す一方、在野の法律家の中には「上奏できる」と主張する者もあり、意見が分かれていた。枢密院事務局は公的機関である内閣法制委員会の見解を重視し、このままでは国王への上奏は難しいと判断したとみられる。
下院で最大議席を有する野党第一党の民衆党が、プームチャイタイ党の首相候補を支持する方針を表明したことで、プアタイ党は解散総選挙に踏み切って失地回復を図ろうとしたが、出鼻を挫かれる形となった。さらに、プームタム首相代行による見切り発車的な解散権行使について「国王を政治的に利用しようとした」として、刑法第112条(不敬罪)違反で告発する動きも国会内外に広がった。3日には新民主党のスラティン・ピチャーン下院議員が、民間の政治運動家タイコーン・ポンスワン氏と連名で警察に届け出ている。
タクシン派政権が政局の混迷を下院解散で切り抜けようとして失敗するのはこれが3回目で、解散カードが機能したことは一度もない。タクシン氏が党首を務めたタイラックタイ党は2006年2月に下院を解散したが、民主党などの野党がボイコットし、4月の選挙では全選挙区で当選者が確定しない事態となり、5月に憲法裁判所が4月の選挙は無効との判断を下した。
2回目はインラック政権の2013年12月の解散で、2014年2月に総選挙が実施されたものの、反政府デモ隊が投票を妨害。投票が全国一斉で行なわれなかったことを理由に憲法裁は2月の選挙は無効との判断を下している。
そして3回目の今回は解散そのものが阻止された。

通常、首相が解散権を行使した場合、解散の勅令が出るのをまたずに下院は審議日程を取り消すが、今回は解散が報じられた3日も下院が審議を続ける異例の事態。プームチャイタイ党による少数連立政権樹立にあたっての諸条件を定める合意書にアヌティン・チャーンウィラクン党首と民衆党のナッタポン・ルアンパンヤーウット党首が署名し、粛々と下院での首相指名に向けた手続きを進めている。下院での首相指名の日程に関しては、3日に与野党の院内総務が協議したが、投票日程をめぐり合意に至らず、最終的な決定権はワンムハマド・ノーマター下院議長に委ねられることになった。
首相候補に指名される者は、憲法第88条に基づき25人以上の国会議員を有する政党の名簿に掲載されていなければならない。国会議員の氏名は、タイ語アルファベット順に読み上げられ、投票は個別に賛成、反対または棄権を表明する形で行なわれる。下院が新首相を指名した後、下院議長は、その人物の名前を国王に提出し、首相に任命する勅命を得る。
報道によると、プームチャイタイ党が支持を取り付けた友党を含めた現有議席は146議席でしかない。143議席を有する民衆党の支持がなければ、過半数に届かず、民衆党が生殺与奪の権利を持つ。同党の閣外協力がなければ法案は通らないことから、ナッタポン党首は、民衆党が新政権を主導する力を持つと述べている。
ナッタポン氏は、アヌティン氏を首相に推す選択に後悔はないと語っている。支持率低下のリスクを承知の上で、国にとって最善の策と判断したと説明した。アヌティン首相が約束を破った場合は、代償を払うことになると警告した。
ナッタポン氏は、この決定が全143名の下院議員と全国のネットワークを含む全ての党関係者による包括的な議論の結果であることを強調した。国にとっての解決策を見出すことが目標で、その第一の目標は、下院の解散と新憲法の起草に向けた政治的方向性を導くことと述べた。アヌティン氏を支持することで党の支持率が低下するリスクを慎重に評価したことを認めたうえで、支持率ではなく、国全体の解決策を優先したと述べた。
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