商議所が7本柱の経済対策提示=アヌティン政権に即時実行要請
アヌティン首相は9月18日、主要閣僚を連れてタイ商業会議所(TCC)を訪問し、ポット・アラムワタナノン会頭[=写真右]をはじめとする商議所幹部と会談した。タイ経済の即時回復に向けた協力の在り方について協議した。
ポット会頭は、世界経済の変動、農産品価格の下落、輸出の鈍化見通し、エネルギーコストと生活費の高騰、国際政治の不確実性などが企業活動に大きな影響を与えていると指摘した。商議所の全国ネットワークからの意見を集約し、政府への提案として「7つの柱による経済復興策」を策定したと説明した。

第1に、経済、社会、安全の3つの側面を包括した信頼感の回復・強化。第2に、中小企業と家計に資金を行き渡らせ、資金調達の利便性を高める。第3に、国民の生活費負担と事業コストを軽減する。第4に、貿易・投資や物流を円滑化し、中小企業の競争力を高める公正な取引環境を推進する。第5に、犯罪、薬物、オンラインを含む安全対策の強化。第6に、世界的な貿易戦争や為替変動の影響に備える措置。第7に、外国人観光客誘致による外貨収入増を図る。
ポット会頭は、これらの7本柱は政府が短期間で実行可能で、国民生活の安定と企業活動の支援に資すると述べ、迅速な検討を要請した。
TCCは、新政権発足直後の4か月を「即時対応期間」と位置付け、政府に対し複数の重要施策を早急に実行するよう提案した。国際貿易分野では、米国との関税協議を急ぐとともに、非関税障害の解消、新市場の開拓を中国、アフリカ、中東といった潜在力の高い地域で推進するよう求めた。併せて、バーツ相場を1ドル=34~35バーツ程度に安定させ、輸出競争力を維持するため、タイ中央銀行に積極的な為替管理を求める。
景気刺激策では、国民に馴染みのある「コンラクルン」や「イージーEレシート」の継続実施に加え、「タイ製品を使って中小企業を復活させよう」キャンペーンを提言。さらに2025年度予算の執行を加速させ、雇用の拡大につなげるよう要望した。観光分野ではワンストップ型観光サービスセンターの設立や安全対策の強化、特に中国人観光客向けの施策が不可欠とし、バンコク、パタヤ、プーケット、チェンマイといった主要観光地でライフスタイル商品の輸入関税を引き下げるよう求めた。
労働面では労働保護法第87条に基づく官労使三者協議を活用し、最低賃金の調整と労働力不足に対する解決策を講じるよう要望した。また、国民の生活負担軽減に向け、優良顧客への金利引き下げや土地・建物税の50%減免を1年間実施することも盛り込んだ。さらに、汚職ゼロの推進と、薬物、人身売買、オンライン詐欺、賭博といった社会問題の取り締まりを求めた。
中期(8か月)の施策としては、輸出業者のコスト削減と資金繰り改善のため、VATや輸出税の還付を7~14日以内に行なうよう要求。あわせて、民間部門や教育機関との連携による人材育成機関を設立し、デジタル・AI、次世代自動車、先端農業・食品といった成長産業に重点を置いたスキル開発を支援するべきだとした。税制優遇や研修クーポン制度も提案した。
国民生活に直結する課題では、制度内外の債務問題に対して債務再構成や低利融資枠の拡大を進め、生活不安を軽減するよう要望した。さらに規制改革を徹底し、重複や不要な規制を削減することで、事業効率の向上を目指すよう求めた。
ポット会頭は、「これらの提案は単なる対症療法ではなく、タイ経済を持続的に復興させるための計画。政府、民間、国民が一致協力すれば、タイ経済は再び強固な基盤を取り戻し、新たな機会を切り開くことができる」と強調した。
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