アヌティン首相が所信表明=国難克服へ5分野の緊急課題
9月29日午前9時半過ぎ、国会議事堂において両院合同本会議が開催され、アヌティン首相が所信を表明した[=写真]。政府の基本理念として(1)国・宗教・国王の三本柱の護持、(2)国王を元首とする民主主義体制の堅持、(3)法の支配、公正な法執行、ガバナンスに基づく統治を挙げ、国民の利益のために実行すると強調した。首相は、あらゆる手段を尽くして国の課題の解決と持続可能な発展の基盤構築を進め、国民の幸福のために尽力すると述べた。

首相は演説で、不確実性が高まる情勢下で政権を担うことになったとし、限られた任期と現政権が編成していない予算、さらには少数与党という条件下で、当面の課題の解決と併せて競争力の強化と持続的発展の基盤づくりを進めると述べた。また、国民投票の実施や憲法改正についても、国民の声を広く聴き、あらゆる関係者の参加を得ながら推進する考えを示した。
国が直面する緊急課題として5分野を優先政策に掲げ、早急に対応すると表明した。
経済分野における緊急課題への対応として5項目の政策を示した。第1に、国民の日常生活を支えるため、所得の向上と生活費軽減を同時に図る施策を進める。第2に、家計債務の問題に取り組み、金融機関と借り手の双方にとって公平なリスク分担のもとで流動性を確保する。第3に、小規模世帯や低所得層の貯蓄機会を拡大し、国民の資産形成を後押しする。第4に、観光客の信頼回復を図るため、安全対策を徹底し、利便性の向上に努めるとともに、観光客を狙った詐欺や不正行為の取り締まりを強化し、さらに年内に国内観光需要を刺激する追加策を講じる。第5に、貿易戦争による影響を最小化するため「チーム・タイランド」を設置し、事業者の支援や競争力のある投資環境の整備を進める。首相はこれらの施策を通じて、短期的な国民生活の安定と長期的な競争力強化の双方を実現する姿勢を強調した。
安全保障分野での緊急課題は2点を挙げた。第1に、タイとカンボジアの係争問題を平和的手段で解決することを最優先とする。急速に変化する国際環境に即応した積極的な外交政策を展開するとともに、国際社会におけるタイの信頼と地位を一層高める。第2に、南部国境県における問題解決を急ぎ、治安対策と並行して経済発展や住民の生活の質の向上を持続的に推進していく。
社会分野での政策は4点を示した。第1に、あらゆる形態の違法賭博を徹底的に取り締まる。第2に、法の支配を厳格に守り抜く。第3に、汚職や不正行為を断固として排除する。第4に、仏教をはじめとするすべての宗教を保護し、尊重する。
自然災害と環境分野での政策では、第1に、高リスク地域を中心に警報機器の設置と災害警報ネットワークの整備を急ぎ、被災者への迅速な救済と復旧を進める。第2に、低炭素社会の実現を推進し、クリーンエネルギーの利用を奨励・支援する。
国政運営と法制度改革の分野では、第1に、デジタル政府の開発を加速させ、行政の近代化を図る関連法案を提出する。第2に、法律および各種規制の改革を迅速に推進する。
政府は、国の任務、基本政策と国家戦略に沿って行政を進め、6分野にわたる国の基本政策と国家戦略に基づく開発を一貫して推進していく。喫緊の課題に対応する一方で、国の基盤づくりを開始し、タイを最大限に前進させることを目指すと表明した。その際、国益を最優先に据え、財政政策の遂行においては信頼性を確保し、規律、透明性、効率性を保ち、費用対効果を追求し、国全体に最大の利益をもたらすことを重視するとした。財政規律と経済の安定性の強化を枠組みとし、年度予算と予算外資金を活用し、関連法規や規則に従って厳格に予算を執行すると強調。予算外資金の使用については効率的に管理し、民間部門の役割を促進して国のインフラ開発への投資を進め、投資の促進とともに長期的な公的債務の負担軽減を図ると述べた。
首相は所信表明後の質疑で、今回任命された閣僚は各分野で経験を有し、過去に大臣経験がない者についても職歴や学歴を精査したうえで適性を確認済みであり、国と国民に最大の利益をもたらすことができると述べた。また、自身がこの地位に至るまでに10年以上を費やしたことに触れ、「最善を尽くし、国と国民に最大の利益をもたらす名誉ある機会にする」と述べた。政府にとっては成果を示す好機であり、閣僚全員と理解を共有しているとし、政党の違いは関係なく、国民の信頼と能力を備えた人材で構成されていると強調した。
首相は、「閣僚全員が職責を全うし、国に利益をもたらす。党派を超えて国民のために働く」と述べ、政府は透明性と説明責任を重視し、全ての政策や実施過程を法令に則って進め、あらゆる立場からの監視を受け入れる用意があると表明した。この政権は「特別目的政府」として国難の解決にあたり、民衆党との合意に基づき明確な期限を設けて下院を解散し、国民に権力を返すと断言した。
さらに、カジノを含む統合型リゾート開発を含む賭博関連政策とデジタルマネー給付政策の中止を発表し、「賭博を経済の原動力とはせず、国民を悪習に染めるようなことはしない」と明言した。この方針は、国民多数の支持を得ていると述べ、政府は国を安定的かつ持続的に前進させるための施策を推進していくとした。首相は最後に、「政府と閣僚全員が全力で働き、全ての政策を国の解決策として推進する。勝者は全ての問題に出口を見いだす」と結んだ。
その他のニュース
財政局の経済財政報告=民間消費に減速の兆し
「タイ・中国協力エキスポ2025」=国交樹立50年、連携を強化
シーハサック外相=国境紛争で各国高官と協議
「コンラクルン」10月始動=国民3300万人へ給付開始
エネルギー相=電力料金を監視へ
商業相、国境・物価に対応=「クイックウィン」策を準備
低品質の中国製品の流入=新工業相が検査強化を指示
「ツーリストデジペイ」=事業者の登録受付開始
観光収入回復に現実路線=観光相は国内消費を重視
タイの格付け見通し=フィッチが引き下げ
タイの信用格付け見通し=引き下げ受け、バーツは下落
ウォラパック副財務相が方針=4か月で財政安定の基盤構築
1~8月の新規法人登記=5万9千社超
[社会ニュース]
アヌティン首相=アユタヤの洪水被災地を視察
タイ人の47%が金融詐欺被害=世代ごとに手口が多様化
国境封鎖で不法越境急増=3か月で870人を摘発
出入国管理局=ロイター報道に反論
警察庁視察団=大阪府警を訪問
[セミナー]
気候変動フォーラム2025~ネットゼロに向けて
[データ]
財政局の2025年8月の経済指標
コメント