2025年10月1日(水)号

8月の工業生産指数は4.19%減=バーツ高や生産停止が影響

 工業省工業経済事務局(OIE)が9月30日に発表した8月の工業生産指数(MPI)は92.13ポイントとなり、前年同月比4.19%減少した。パーサコン・チャイラット事務局長[=写真]は、バーツ高が輸出コストを押し上げ、価格競争力を損なったことが要因と説明した。自動車産業は、ある大手メーカーが国内工場での新ライン設置に伴い一時的に生産を停止したことから減産が続いた。加えて、大規模製油所の定期補修による稼働停止も影響した。外国人観光客の減少も重なり、冷凍食品、ソーセージ、旅行鞄、スポーツシューズ、アルコール飲料といった関連産業が打撃を受けた。設備稼働率は57.19%にとどまった。


 9月の工業経済の警戒システムは「要注意」のシグナルを示している。国内要因では電子機器分野の輸出増や電子部品・コンピュータ部品の受注における信頼感の向上がみられた。民間投資指数は警戒レベルが上昇したが、輸入数量指数は安定しており、受注の信頼感指数と輸出価格指数は上昇した。国外要因については製造業の低迷や新規受注減が続き、依然として警戒が必要だが、資本財や農産品の輸出が増えていることから、警戒感は一部で和らいだ。
 10月1日付けで工業省副次官に異動になるパーサコン氏は、工業経済事務局が産業構造を未来型産業へと引き上げる取り組みを進めていることを強調し、自身の任期を振り返った。同氏によれば、競争力強化の面では、産業構造改革計画を策定し、それを基盤として将来の工業・サービス業の発展の統合計画を立案した。ハラル産業の振興に向けてハラルセンター設立の準備を進め、モロッコ、トルコ、カザフスタン、インドネシア、中国、オマーンなど主要国との連携を進めた。鉄鋼産業では、鉄筋コンクリート用鋼材の新設・拡張を禁止する工業省布告を発し、他の鉄鋼製品への措置適用の検討も進めるとともに、グリーンスチール政策を推進した。さらに、防衛産業の育成にも取り組んでいる。
 エコシステム強化の面では、南部経済回廊(SEC)のランドブリッジ開発を通じた付加価値の創出や国際協力プロジェクトに注力した。韓国国際協力団(KOICA)と連携し、アセアン域内電気・電子産業のカーボンニュートラル人材育成を目指す「Thailand Triangular Cooperation」事業を進めたほか、自動車産業分野で日本の経済産業省とエネルギー・産業対話(EID)を推進し、次世代エネルギーや低炭素社会への移行に対応する競争力を強化した。また、ランサン・メコン地域における新エネルギー車・スマートビークル市場の調査や、米国との関税交渉も進めた。
 情報サービス強化の面では、工業経済データの高度化に取り組み、権利の不正利用の追跡、工業経済の動向分析や予測、警戒システムの見直しと精緻化を進め、警戒精度の向上を図った。
 パーサコン事務局長は、これらの取り組みが産業構造の未来志向型への転換に欠かせないと強調した。
 8月に鉄鋼業の生産は前年同月比22.74%増となった。主に熱延鋼板、鋼管、異形棒鋼の生産増が寄与した。特に熱延鋼板は前年に一部メーカーが定期メンテナンスを行なっていたため、ローベース効果が働いた。鋼管は国内市場の拡大や新規顧客の開拓が進み、異形棒鋼は前年の注文が限られていた反動から需要が拡大した。
 コンピュータ・同周辺機器は前年同月比19.14%増となった。ハードディスクドライブの需要が堅調だった。AIシステム、クラウドサービス、データセンター事業の成長を背景に、高性能なデータ保存・処理機器への需要が増加した。
 電子部品・回路基板は前年同月比6.42%増となった。主にPCBAやその他電子部品が牽引しており、世界的なエレクトロニクス市場の拡大が続いたことが成長要因となった。
 一方で、石油精製品は前年同月比7.98%減となった。軽油、航空燃料、ガソリン91、ガソリン95の生産が減少した。一部の製油所が大規模な定期メンテナンスを実施したことが影響した。
 自動車は前年同月比8.09%減となった。主にピックアップトラック、1800cc以下のハイブリッド車、小型乗用車、大型乗用車の生産が減少した。一部メーカーが国内の別工場に新たな生産ラインを設置するため、一時的に生産を停止したことが響いた。
 清涼飲料水やその他ボトル入り飲料は前年同月比11.58%減となった。果汁飲料、エネルギー飲料、インスタントコーヒーの生産減が主因で、タイ・カンボジア国境閉鎖の影響や、一部メーカーが商標利用をめぐる問題から生産を継続できなかったことが背景にある。

その他のニュース

[経済ニュース]
中銀の月例経済金融報告=8月の景気は前月から減速

シーハサック外相=国連総会で岩屋外相と会談

スーパーセービングファンド=投資運用協会が期限延長求める

タイ・ターボ・キャピタル=SETに上場

アヌティン首相が国会で答弁=午後には第1回定例閣議を主宰

中国のゴールデンウィーク=観光客は20万人に減少見込み

エークニティ副首相兼財務相=経済立て直しに財政出動

NIAがフードテック発表会=10社が成果披露し投資家注目

タイの米価格は下落続く=世界的な在庫過多と記録的生産

クルンシーがBDFCに参加=AI・量子技術の活用示す

[社会ニュース]
NIDAの世論調査=「首相に相応しい人物いない」が最多

北部で河川氾濫の恐れ=大雨続きで洪水や土砂災害

タイ女性の出産意欲調査=子ども希望は63%

国内で使用のワクチン=保健省が安全性を強調

雨季のRSV蔓延期=保健当局が予防接種を推奨

工業学校の抗争で傷害殺人=11人に終身刑判決

汚職疑惑の元仏教本庁長官=米国から送還

[レポート]
Z世代の新卒者の増加=ビジネスシーンにおける機会と課題

[データ]
中銀月例経済指標

あわせて読みたい
無料トライアル 【無料トライアルのご案内】 タイ経済パブリッシングは毎日(土日祝を除く)、A4サイズのPDF版ニュースレターを定期購読者様にメール配信しております。 購読料金...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次