首相が予算執行前倒しを指示=4か月で景気浮揚策を加速
アヌティン首相兼内相[=写真中央]は10月15日に開いた経済政策委員会会合(経済閣僚会議)で、2026年度予算の執行を前倒しするよう号令した。首相は、政府が関係各方面からの協力を得て、経済成長を促進し、国民の生活問題を解決すると述べた。政権の任期は4か月しかないが、「クイックビッグウィン」政策を軸に、実効性のある施策を推進すると強調した。

会合には、関連する経済担当閣僚のほか、経済関連機関や民間3団体(商議所、工業連盟、銀行協会)が参加した。
首相は2026年度予算3兆7800億バーツの執行を加速させる方針を示した。2025年度の未執行予算額が過去最高の3000億バーツに達し、投資予算の執行率がわずか65%にとどまったことを踏まえ、2026年度は経常予算の執行率93%、投資予算の執行率75%を目標に定めた。これらの数値は、各省庁の業績評価指標(KPI)として設定される。首相は、「予算の効率的な執行を最優先とし、すでにTOR(業務仕様書)が完了している案件は2026年度第2四半期(2026年3月)までに支出を完了するよう指示した。未執行で非効率的な古い予算を回収し、景気の回復を支える」と方針を示した。
特に首相直属の内務省や運輸省に重点を置き、予算執行の効率を徹底するよう指示した。TORには「完了までの日数」を明記し、契約後の支払いは5日以内に実施するよう求めた。
一方、観光振興パッケージでは、地方都市への旅行費用の1.5倍税控除や、地方ホテルの改修費用の2倍控除といった税優遇措置が盛り込まれる見通しで、政府系機関によるセミナー予算の早期執行も促す。財務省は、これらの観光関連施策がGDPを0.4%押し上げる効果があると試算した。
また、タイ観光公団(TAT)は、新たに「LISA(リサ)」を「アメージング・タイランド・アンバサダー」に任命し、世界的なプロモーション活動を展開する。海外からの観光客500万〜1000万人の追加誘致を目指し、観光収入で2500億〜5000億バーツの増加を期待している。
アヌティン首相は、「クイックビッグウィン政策の実現には、全ての関係機関と民間の協力が不可欠だ。経済閣僚会議は、各省が推進中の施策を調整し、民間と意見交換を行なう場としたい」と述べた。首相は、各省庁が迅速な行動を重視し、不要な手続きを削減するようにと指示したうえで、「会議の決定事項のうち、各機関の権限内で実施できるものは即時に着手し、進捗や障害があれば毎週の会合で報告すること。必要であれば閣議に付して解決する」と述べた。
エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相は、政府が進める4か月間の経済推進計画のうち、すでに着手された施策として「コンラクルン・プラス」事業の店舗登録受付が開始されたことを明らかにした。21日の閣議では、観光業の低迷打開を目的とする3つの観光振興策パッケージが提出される予定。観光業は1〜8月期で前年比8%減となっており、緊急の需要刺激策が必要だとしている。
アヌティン首相はエークニティ財務相を米国との貿易交渉チームの責任者に任命した。エークニティ氏は、「最大限の利益を確保するため、商業大臣と連携し、民間部門とも非公式協議を重ねている。すべての関係者が協力する方針だ」と述べた。
首相は、米国との交渉において現行19%の関税率の見直しを指示しており、エークニティ氏は、「一部品目を19%課税リストから除外するよう協議中で、詳細は今後民間部門と調整する」と説明した。
既存の交渉枠組みは前政権時に閣議承認を受けており、全面的な見直しは行なわない方針。「交渉対象品目のうち、タイにとって最大の利益をもたらす品目を優先する」と述べ、特に中小輸出業者への影響軽減を重視する考えを示した。
財務相は、タイ中央銀行のウィタイ・ラタナコーン総裁を招いて2026年の金融政策目標(インフレ目標枠)について協議すると述べた。財務省は、現在の低インフレの要因をエネルギー価格の下落によるもので、需要の弱さではないと分析。物価全体がマイナスであっても、エネルギーと生鮮食品を除くコアインフレ率はプラス圏を維持していると説明している。エークニティ氏は、中銀と見解は一致しており、2026年のインフレ目標レンジ設定については詳細を詰めたうえで決定すると付け加えた。
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