10月のインフレ率はマイナス0.76%=政府の生活支援策と原油安が寄与
商業省が11月5日に発表した10月の消費者物価指数(CPI)は100.00ポイントで、前年同月と比べて0.76%低下した。マイナス・インフレは7か月連続となった。ナンタポン・チララートポン商業政策戦略事務局長[=写真]によると、政府の「クイックビッグウィン」プログラムを通じた生活費負担軽減策と、世界的なエネルギー価格の動向に沿って電力料金と燃油価格が下がった。また、豚肉、鶏卵、生鮮野菜や果物などは供給量の増加により価格が低下した。日用品は事業者による販促活動の影響で価格が下がった。一方で、他の品目やサービス価格はインフレに大きな影響を与えなかった。

10月の一般インフレ率を品目別にみると、マイナスインフレは非食品物価が前年同月比1.10%下落したことが大きい。電力、ガソホール、軽油、ガソリンなどエネルギー関連の価格が下がり、パーソナルケア(制汗剤、洗顔フォーム、石けん、シャンプー、スキンケア、フェイスパウダー)、自動車、航空運賃、衣料品(Tシャツ、シャツ、ズボン)、洗濯・掃除関連用品(洗剤、柔軟剤、床用洗剤、漂白剤など)も価格が下がった。一方で、家賃、海外旅行費、ごみ収集料、理美容代、ペットフードなどは値上がりした。
食品・非アルコール飲料の物価は前年同月比で0.17%下落した。野菜類ではネギ、白菜、トウガラシ、ライム、キャベツ、パクチー、ショウガ、ナスなどが下がり、果物ではブドウ、マンゴー、バナナ、ミカンが下がった。卵、豚肉、鶏肉、もち米も値下がりした。一方で、惣菜や弁当、麺類などの調理済み食品、白米、魚介類(アジなど)、インスタントコーヒーなどの非アルコール飲料、植物油、ココナツミルク、カレーペーストなどの調味・加工品、菓子類(スイーツ、アイスクリーム)は価格が上昇した。
生鮮食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は前年比0.61%上昇で、9月の0.65%上昇からやや鈍化した。
10月の一般消費者物価指数は、前月と比べて0.11%低下した。非食品物価が0.14%下落したことによるもので、特に燃油(ガソホール、軽油、ガソリン)の価格が、世界市場での原油価格の動向に沿って下落した。政府が「クイックビッグウィン」プログラムを通じてエネルギー関連の生活費負担を軽減したことも寄与した。この施策の一環として、公休日には高速道路の通行料金を免除し、国民の利便性向上と支出削減を図った。また、一部のパーソナルケア製品(制汗剤、洗顔フォーム、生理用ナプキン)や衣料品(Tシャツ、ブラジャー、子ども用Tシャツ)は、事業者による販促キャンペーンにより価格が下がった。一方で、清掃関連の支出項目(ごみ収集サービス料、床用洗剤、アイロン用仕上げ剤、トイレ用洗剤)や、パーソナルケアの一部(シャンプー、トイレットペーパー、スキンケア製品)は値上がりした。食品・飲料物価は前月比で0.05%低下した。主に、肉類(豚肉、鶏肉)、鶏卵、果物(ミカン、ブドウ、バナナ)などの価格が、出荷量増により下がったほか、デリバリー食品も事業者による販促活動の影響で価格が下落した。これに対し、白米や生鮮野菜(ネギ、カイラン、パクチー、キャベツ、ライム)は価格が上昇した。
1~10月の平均一般消費者物価指数は、前年同期比で0.09%低下した。
商業省によると、11月の一般インフレ率は引き続き低下する見通し。複数の要因が物価の下押し圧力として働く。世界市場におけるドバイ原油価格は前年を大きく下回っている。OPECプラス諸国による増産が続いていることが背景にある。加えて、政府の生活費軽減策の一環として、石油基金が基金拠出料率を引き下げた結果、小売段階の軽油価格は1㍑当たり30.94バーツに低下した。政府は引き続き生活費負担軽減策を実施しており、特に今年9月から12月までの電力料金の燃料係数(Ftチャージ)を1ユニット当たり15.72サタンに引き下げた結果、電力料金は1ユニット当たり3.94バーツに低下している。生鮮野菜と果物の価格も前年を大きく下回っている。市場への供給量が多いことに加え、前年の価格水準が高かったことが理由。
また、観光業者で、政府の国内観光促進策に歩調を合わせ、宿泊料金を引き下げる動きがみられる。特に、10月21日時点で発表された国内旅行費最大2万バーツの税控除措置が寄与している。
一方、インフレ率を押し上げる要因は、観光需要の回復による航空運賃の上昇傾向や、ココナツミルク、インスタントコーヒー、食塩、植物油など一部の農産品と調味・加工食品の価格が前年を上回る見通しなどがある。
商業省は2025年の一般インフレ率の見通しを0.0%に据え置いている。
10月の生産者物価指数(PPI)は109.3ポイントとなり、前年同月比で1.4%低下した。農林水産物が13.9%下落した。精米用うるち米、もち米、飼料用トウモロコシ、キャッサバ、ゴム、肥育豚、生体牛など主要農産物の価格が下落した。鉱業製品は7.0%下落した。原油・天然ガス価格の下落が主因。一方で、工業製品は0.5%上昇した。金・宝飾品など「その他工業製品」の価格上昇が寄与した。
加工段階別では、完成品の指数が2.3%上昇した。金・宝飾品などの消費財価格が上がった。半製品(中間財)は4.5%下落した。主要品目であるゴム(RSS、ブロック状ゴム)、飼料原料、燃油の価格下落が影響した。原材料の指数は13.7%下落した。精米用うるち米、ゴム、サトウキビ、ラテックス、原油などの価格が低下した。
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[データ]
2025年10月の一般消費者物価指数と基本消費者物価指数
2025年10月の生産者物価指数


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