2025年11月7日(金)号

厳しい状況続く観光業界=外客数の前年割れほぼ確実

 観光業界は、タイ観光公団(TAT)が掲げる今年の外国人観光客目標3340万人の達成に向けて追い込みの段階に入った。残る2か月で少なくとも671万人の誘致が必要だが、仮に達成しても前年比6%減となる見通し。海外市場からの観光収入も同5%減の1兆5100億バーツにとどまる見込みだ。
 観光・スポーツ省によると、1月1日から10月31日までの外国人観光客数は累計2668万9071人で、前年同期比7.23%減。観光収入は同4.53%減の1兆2329億6800万バーツだった。
 国・地域別上位10か国は、①マレーシア(385万6816人)、②中国(377万4771人)、③インド(198万4859人)、④ロシア(141万8101人)、⑤韓国(127万4415人)、⑥日本(87万7574人)、⑦英国(83万6907人)、⑧米国(83万539人)、⑨台湾(82万2519人)、⑩シンガポール(76万3470人)。
 10月単月では257万3743人で、前年同月比3.94%減。トップ10は、①マレーシア(37万8143人)、②中国(35万7445人)、③インド(21万3858人)、④ロシア(14万5764人)、⑤韓国(13万6382人)、⑥米国(8万3929人)、⑦台湾(8万3574人)、⑧英国(7万8947人)、⑨シンガポール(7万7095人)、⑩ドイツ(7万6709人)だった。

◆中国市場の低迷続く
 タイ旅行代理店協会(ATTA)のタナポン・チーワラタナポン会長[=写真]は、2025年の外国人観光客数は政府目標の3340万人、前年実績の3554万人をいずれも下回り、3200万人にとどまるとの見方を示した。上位5市場は①中国(460万人)、②マレーシア(450万人)、③インド(220万人)、④ロシア(160万人)、⑤韓国(150万人)と予測した。
 なかでも中国人観光客は1日1万人台前半にとどまり、日によっては1万人を下回るなど低調が続く。タナポン会長は「コロナ後で最も低い水準」と述べ、今後は底打ちからの回復を期待すると語った。政府による観光刺激策の効果に期待を寄せている。

◆B2B商談会で需要喚起へ
 ATTAは来年1月、観光セクター活性化を目的に大規模なB2B(企業間取引)イベントを開催する。海外のパートナー企業を招き、タイの事業者と商談を行なう計画で、参加者は1500人を見込む。
 また、観光客の集中を避けるため、地域をまたいだ周遊旅行パッケージを企画し、外国人と国内旅行市場の双方を対象に販売する。さらに、特別価格の航空券プロモーションを通じて誘客を図る方針で、TATに予算支援を要請する考えだ。
 同会長はまた、カンボジアに拠点を置くオンライン詐欺組織の暗躍がタイの観光業に悪影響を及ぼしているとの懸念を示した。「国際的にはタイがカンボジアと同様にスキャマー問題を抱えていると誤解されている。会員企業への聞き取りでは実際に影響が出ている」と述べ、政府に早期の対応を求めた。

◆ホテル業界も回復鈍く
 タイ・ホテル協会(THA)のティアンプラシット・チャイパタラーナン会長は、年末ハイシーズンについて「客室稼働率の大幅な上昇は見込みにくい」との見解を示した。個人旅行客が増加し、直前予約が多い一方、長距離市場の団体旅行は事前予約型が主流で、欧米向けホテルでは先行予約がみられるものの、アジアやアセアンの近距離市場を対象とするホテルでは埋まりが鈍いという。
 同協会が9月に会員ホテル121か所を対象に行なった調査によると、9月の平均稼働率は54%で、タイ人観光客と近距離市場の減少により、全地域で前月を下回った。前年同月比ではほぼ横ばい。10月は60%前後と見込まれている。
 全てのクラスのホテルの半数以上が、下半期の収入が前年同期比で少なくとも10%減少すると予測。特に中部地域のホテルで減収傾向が顕著になっている。

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