2025年11月12日(水)号

不良債務に新たな救済スキーム=「ピットニーワイ・パイトーダイ」

 財務省とタイ中央銀行、金融機関各社は11月11日、不良債権の買い取りを行なう整理回収会社(AMC)の仕組みを通じ、債務問題の解決を共同で進める事業を立ち上げた[=写真]。プログラムの名称は「ピットニーワイ・パイトーダイ(早期債務清算で再出発)」。今回の支援は一度限りの特別措置で、担保のない不良債権を対象とする。すべての金融機関に対して合計で10万バーツを超えない債務を抱え、返済が滞っている個人債務者が対象で、2025年9月30日時点の残高が基準。第1フェーズでは、商業銀行と銀行系ノンバンクの約160万口座、約120万人、総額約436億バーツを対象とする。来年1月から受付が開始される。


 エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相は、このスキームの目的が小口債務者を借金の罠から解放し、正規の金融システムへ戻すことにあると述べた。タイ中央銀行のウィタイ・ラタナコーン総裁は、一度限りの特別プログラムと強調した。
 家計債務は、国民の生活水準とタイ経済の持続的成長に影響を及ぼす主要な構造的問題の一つとされる。政府と中銀は、これまで協力して問題解決の方策を進めてきた。しかし、今でも多くの世帯の所得は依然として回復が遅れ、高水準の債務負担を抱えている。脆弱な世帯では返済に支障が生じ、不良債権が増加しており、問題の解決を急がなければ家計債務の状況をさらに悪化させ、今後の民間消費や経済活動に影響を及ぼすおそれがあった。
 同事業では、スクムビット・アセット・マネジメント社(SAM)が不良債権を買い取り、返済を再開できるよう緩和的な条件で債務再構成を行なう。中銀はSAMを「社会的AMC」として位置づけ、営利目的ではなく国民の債務再構成の支援に重点を置く方針に転換する。将来的には、SAMが他の金融サービス事業者からの債権も買い取れるよう対象の拡大を検討する。
 債務者は通常より緩やかな条件で債務を再構成できる。例えば、未払い利息や手数料の全額免除、一部元本の減額など。これにより、返済の再開と早期の債務の清算が可能となり、信用情報機関における返済履歴も改善され、再び正規の金融機関から融資を受けられる可能性が高まる。
 支援策は2通り設けられている。第1は「一括清算」で、債務者が一部を支払うことで即時に債務を終了できる方式。第2は「分割返済」で、最長3年間の分割払いを認め、その期間中の利息を免除する方式。定められた条件を満たせば、利息は発生しない。
 政府系特殊金融機関(SFI)の債務者は、アリAMCへの不良債権の譲渡を通じて支援を受ける。約33万口座を対象とし、財務省が同様の原則と方針に基づいて実施する。全体では約190万口座の個人債務者が救済対象となる見込みだ。
 事業の詳細は、BOTのウェブサイト(www.bot.or.th/cleardebt)、SAM(www.sam.or.th)、または各金融機関の窓口で確認できる。商業銀行とそのグループ会社の債務者でプログラムを利用したい場合は、債権を保有する金融機関へ直接連絡するか、BOTコンタクトセンター(1213)かSAMコールセンター(1443)に問い合わせができる。受付開始は2026年1月5日から。

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