2024年6月17日(月)号

BOIが自動車部品メーカー支援=14日の本会議で奨励措置決定

 投資委員会(BOI)は6月14日、ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相[=写真右から1人目]を議長に開いた本会議で、自動車部品メーカーが技術水準と生産性の向上に投資したり、医療機器や航空機部品などの新たな産業に事業を拡張するための投資を支援する新たな奨励措置を承認した。


 ナリット・トゥードサティラサック事務局長によれば、タイは東南アジアで最大、世界でも10番目の自動車生産拠点。自動車・同部品産業が年間1兆バーツ以上の収入を生み出す最大の輸出品であることからも、自動車部品産業は国にとって重要な産業となっている。サプライチェーンには2300 社を超えるメーカーがあり、部品メーカーは80~90万人を雇用している。
 国内部品メーカーがより効率的で、競争力を引き上げ、EV部品、航空機部品、医療機器、自動化機器など、新たな産業に事業を拡張することができるようにする。ナリット氏は、競争力を高めることができれば、将来的にこれら新たな産業の生産拠点にもなることができると述べている。
 自動車部品メーカーは機械の改良、デジタル技術の活用による生産性向上や、新たな産業分野への進出、高度人材育成の研修などの投資計画を提出することで、この措置に基づく投資奨励を申請できる。
 投資額は100万バーツ以上。認可されれば機械輸入関税が免除されるほか、投資額の50%まで3年間にわたって法人税の免除を受けることができる。認可から3年以内に投資事業を完了することが条件。投資申請は25年末まで受け付ける。
 BOIはこのほか、EVバッテリーの修理サービスセンター、使用済みEVバッテリーやエネルギー貯蔵システムを引き取り、再梱包 (Repack) または再利用 (Reuse) する事業を投資奨励の対象に加えることを決定した。将来的に増加する使用済みEVバッテリーによる環境への負荷を低減し、タイが包括的なバッテリー管理システムを確立できるよう支援する。
 また最新のコンピューティング機器に投資するクラウド・サービス・プロバイダーを支援するため、データ・ホスティング事業への投資奨励も決めた。成長しつつある畜産品貿易をサポートするため輸出前動物検疫事業も投資奨励の対象業種に加えた。

◆大規模投資8件を認可

 この日の会議では、バイオケミカル、データセンター、病院など大規模投資プロジェクト8件の投資奨励を認可した。ナリット事務局長によれば、この日認可を受けたのは環境保護や国のデジタル・トランスフォーメーションを支援するプロジェクトなど、タイ経済の発展に重要なターゲット産業への国内外の企業による大規模投資プロジェクト。
 世界有数のバイオポリマー製造業者であるブラスケムとSCGケミカルズの合弁会社であるブラスケム・サイアム社は、サトウキビ、キャッサバ、トウモロコシなどの農産物から生産されるバイオエタノールからバイオエチレン(グリーンエチレン)を生産する工場を建設する。投資額は193億バーツ。生産能力は年間20万㌧。工場はラヨン県のマプタプット工業団地に設ける。バイオエチレンは、食品や飲料、パーソナルケア製品のパッケージから、家庭用品、玩具、ポリ袋など、様々な商品の原料になる。
 データーセンター事業は米国に本社を置く多国籍企業によるプロジェクトと、トゥルー・インターネット・データセンター社のプロジェクトの2件が認可された。事業地はいずれもサムットプラカン県で、投資額は71億9000万バーツと33億5000万バーツ。トゥルー・インターネットの事業は同社の既存の4つのデータセンターの1つを拡張するプロジェクト。
 バムルンラート・インターナショナル・ホスピタル・プーケット社は、病床数212の病院をプーケットに開発する。投資額は49億6000万バーツ。世界的に有名な観光地であるプーケットに外国人の医療観光客を呼び込む。
 ナショナル・パワープラント21社は、パルプ製造工程の副産物などのバイオマスを使った発電所をプラチンブリ県304工業団地に建設する。投資額は94億バーツ。130メガ㍗の電力と毎時576㌧の蒸気を生産する。
 SCGグループは、130メガ㍗の電力と毎時160㌧の蒸気の生産能力を持つコジェネレーション発電所をラヨン県マプタプット工業団地に建設する。投資額は60億バーツ。工業団地内の工場に電力、蒸気を供給する。
 スーパー・アース・エナジー8社は、廃棄物発電所をノンタブリ県に建設する。投資額は28億6000万バーツで、発電容量は20メガ㍗。
 タイ・ライオン・エアの運営会社であるタイ・ライオン・メンタリ社は、航空機10機の調達で認可を得た。投資額は38億9000万バーツ。

セーター首相が否定=憲法裁判断前の辞任/下院解散

 セーター首相は6月14日、自身の大臣資格問題をめぐり、憲法裁の判断が出る前に辞任するとした噂が流れていることについて、「聞いたことも考えたこともない」と述べた。下院解散を考えているかとの記者団の質問にも「考えたことはない」と応じた。首相は、「すべては手順通りに進む。立法府と司法府の決定・判断を受け入れるのは行政府の義務。ウルトラCの出口はないし、逃げることは一切考えていない」と断言した。


 セーター首相に対する憲法裁判は、4月の内閣改造で、過去に裁判官への贈賄で禁錮刑を受けたピチット・チュンバーン氏を総理府大臣に起用したことを問題にして、40人の上院議員が訴えているもの。国務大臣の倫理規範を定めた憲法第170条第4項と5項に抵触すると主張している。渦中のピチット氏はすでに辞任しているため、憲法裁判所はピチット氏に対する原告の訴えは却下したが、セーター首相への訴えは受理している。
 憲法裁判所は18日に判断を下す予定。首相はプラユット政権で副首相を務めた法律の専門家であるウィサヌ・クルアガーム氏を顧問に任命し、弁護団を強化している。
 セーター首相はこの日、6月22日(土)午前8時から30分間にわたって「クイカップ・セーター(セーターと話す)」と題した特別番組が総理府TV局のNBT2HDで放送されることを明らかにした。初回放送分は首相官邸で12日に収録を済ませた。月1回のペースで放送していく予定で、第2回以降は毎月第3土曜に放送する。番組で聞き手を務めたのはティーラット・ラタナセーウィー氏で、インラック政権での同種番組「インラック首相が国民と会う」のインタビューアーを務めたことで知られる。聞き手はこのほかにも著名ニュースキャスターらが交代で務めるもよう。
 首相は詳しい内容について、番組を見てほしいとして明かさなかったが、消息筋によれば、政府の業績に関する最新情報、政府が打ち出した政策、数々の外遊で得られた成果を首相が自ら語る内容になっているという。

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24年6月11日

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