2025年12月9日(火)号

経済3団体合同常任委が月例会見=世界経済減速と南部洪水被害を懸念

 タイ工業連盟(FTI)、タイ商業会議所(TCC)、タイ銀行協会(TBA)の経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)が12月2日、月例記者会見を開き、2026年の世界経済の減速や中国の過剰供給構造を背景に競争環境の厳しさが増すとの見方を示した。南部洪水の甚大な被害により経済成長率にも下押し圧力がかかるとして、短期的な復旧と中長期の構造改革を並行して進める必要性を強調した。


 会見にはFTIのクリアンクライ・ティアンヌクン会長、TCCのタワッチャイ・セートチンダー事務局長、TBAのコープサック・ドゥアンディ事務局長が出席した。
 2026年の世界経済は減速基調にあり、特に中国経済は過剰供給の状態にある。主因は国内需要の弱さで、中国は輸出依存を強める戦略へと転換している。国家経済社会開発5か年計画に沿う動きで、タイ企業は厳しい競争にさらされる。
 南部の大洪水は家計と事業に甚大な被害をもたらした。一部地域では2004年の津波に匹敵する『最大(レベル4)』の災害となり、数千億バーツ規模の修復と復興が必要となる。12月の損失はGDPの0.1~0.2%に相当する200億~300億バーツと推定される。この結果、2025年通年の経済成長率は2.0%にとどまる。2026年の損失額(機会損失を含む)は約900億バーツにのぼる見通し。
 2026年の経済成長率は1.6~2.0%に減速する。米国の税制措置の不確実性や輸入品との競争激化が製造業、雇用、国内の購買力に影響するためで、政府と民間部門による短期的な問題解決、とりわけ洪水からの復興が欠かせない。同時に『Reinvent Thailand』による経済構造改革を進め、ビジネスの潜在能力を高め、サプライチェーン全体を強化する必要がある。『ピー・チュアイ・ノーン(兄が弟を助ける)』の概念に基づき、税制措置、資金援助、政府調達上の優遇措置などを通じ、国内調達(ローカルコンテンツ)と国産品使用を促すことが具体策となる。これは政府の中小企業向け『クイック・ビッグ・ウィン政策』にも合致する。
 JSCCIBは南部洪水被災者への迅速な支援を進めている。救援物資配布、被災地での病人・負傷者の支援、個人と事業主の金融負担軽減、住居・工場・事業所の早期復旧を支援する措置を実施している。TBAと加盟行はタイ赤十字社を通じて5000万バーツを寄付し、TCCは780万バーツ相当の寄付金と物資を提供した。FTIは『ピー・チュアイ・ノーン・ウサハカム・タイ(タイ産業界の兄が弟を助ける)』プロジェクトを実施し、専門家派遣による機械・設備の修理、被災企業への機器寄付の受け付け、特別割引価格での商品提供を通じて工場の復旧を支援している。JSCCIBは災害対応を体系的かつ効果的に進めるため、短期・中期・長期措置を含む『災害管理の国家課題化』を支持する。
 事業者のコスト削減と競争力強化では、移民労働者の雇用に関する雇用主の保証金基準の見直しが閣議決定された。従来の移民労働者1人あたり一律1000バーツから、人数に応じた保証金料率制度に改められ、事業所の負担軽減と資金繰り改善が期待される。
 JSCCIBとゼロ・コラプション・ネットワークは、汚職対策にはキャンペーンではなく体系的な制度改革が必要との認識から、ビジネス部門、公共部門、国の構造改革に焦点を当てた6つの推進枠組みを打ち出した。意識啓発、汚職防止・撲滅政策、汚職リスク管理システム構築、先端技術導入、政府情報公開、苦情申立てと内部告発者保護ガイドライン構築の6項目で、四半期ごとの実行計画を公開し、成果を可視化する。主な内容は、①民間部門における贈賄拒否の意思表示促進、②企業の反汚職活動への参加奨励、③ACT Aiデータベース活用による不正検出、④許認可機関の贈収賄調査、⑤許認可プロセス透明化のための『我慢できない10の賄賂』公表、⑥「グレーマネー」「不正口座」阻止の教育プラットフォーム整備、⑦市民が安全に通報できるCorruption Watchを通じた『要求されたら通報する』キャンペーン実施、OECDとOGP基準に沿った政府データ公開法整備への働きかけなどで、これらを政府に提案する。規制システムの検証可能性を高め、費用削減と長期的な透明性の確立を目指す。
 エネルギー構造改革では、政府、特にエネルギー省と国家エネルギー政策委員会(NEPC)が民間部門の意見を重視し、耳を傾けている点を評価した。11月28日のNEPC会合では、産業部門が引き続きプールガス参照の天然ガス価格構造を使用することが認められた。政府が経済問題の解決と民間・国民の負担軽減に取り組む姿勢の表れと位置づける。JSCCIBは、国のエネルギー政策が安定し、持続可能で公正かつバランスの取れたものとなるよう、政府と協力して計画・政策策定を進める考えを示した。

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