2026年2月10日(火)号

プームチャイタイ勝利で連立協議へ=プアタイ、クラータムの3党連立か

 2月8日投開票の下院議員総選挙は非公式な開票結果からプームチャイタイ党の地滑り的な勝利となり、政治の焦点は連立政権樹立の方程式に移った。実務的な観点から実現可能性が高いとされるのはプアタイ党とクラータム党との3党連立政権だ。プームチャイタイとプアタイの立場は入れ替わるが、発足当初のペートンターン政権に近い。経済政策では草の根レベルからの国内需要の刺激とインフラ投資を並行させる成長モデルが期待される。


 アヌティン首相のプームチャイタイ党は地盤の東北で盤石な選挙戦を展開。政界実力者が相次ぎ入党したことで、中部や南部でも多くの議席を獲得した。政権与党としてタイ・カンボジア国境紛争でとった毅然とした態度が保守層の支持を得た。アヌティン政権を非議員の専門家として財務、外務、商務で支えたエークニティ・ニティタンプラパート副首相、シーハサック・プアンケートゥケーオ外相、スパチー・スタムパン商業相の3氏も同党の選挙運動を支え、比例票の上積みに大きく貢献した。3氏の閣僚留任はほぼ確実で、政策の継続が期待される。
 対する民衆党は、バンコクの33選挙区すべてを確保するなど、首都圏や各県の中心区域である第1区で多くの議席を獲得したものの、予想よりも伸び悩み、現有議席を下回った。ただし、比例では最多票を獲得している。同党支持者は、源流である新未来党を旗揚げしたタナトーン・ジュンルンルアンキット氏の被選挙権が復活する4年後に期待している。
 プアタイ党は事実上のオーナーであるタクシン・チナワット元首相の甥にあたるヨットチャナン・ウォンサワット氏を前面に押し出した選挙戦を展開したが、比較第3党に転落した。タクシン氏の地元、チェンマイ県でも全選挙区で敗退するなど、曲がり角を迎えている。
 クラータム党は北部で大きく議席を伸ばし、現有議席を上回る中堅政党としての存在感を示した。プームチャイタイ党ともども政権与党の特権をフル活用する昔ながらの選挙戦を展開し、選挙区で50議席以上を獲得した。同党は第2次政権でも連立与党入りが有力視される。党最高顧問のタマナット・プロムパオ副首相兼農相は農政への強い意欲を示しており、留任を求めている。
 今後の連立工作では、民衆党がすでに連立政権に加わわらないと表明しているが、プアタイ党は連立に加わる可能性がある。プームチャイタイ党とクラータム党で下院の過半数を確保しているものの、プアタイ党が加わることで政権基盤はより盤石になる。プームチャイタイ党は「コンラクルン・プラス」、プアタイ党は現金給付と、手法は異なるものの、購買力を押し上げるため、即時実行可能な草の根レベルからの景気対策を重視しているという政策面も共通する。
◆政策の継続に期待
 民間部門は、新政権の発足について、総じて楽観的な見方を示しており、政治の安定性と政策の継続性に期待を寄せている。新政権に対し、主要閣僚ポストに適任者を登用するよう求める声が相次いでいる。
 タイ商業会議所(TCC)のポット・アラムワタナノン会頭は、プームチャイタイ党の明確な勝利を受け、国の課題解決において目標を共有する政党が連立政権を主導することを期待していると述べた。「有能で適任な人物が閣僚に任命されることを望んでいる。実務的な専門性を持つ人材を登用することが重要だ」と語った。喫緊の課題に対応し、国を前進させるには明確な戦略が不可欠だとし、汚職の一掃やグレー資本の排除を政府に求めた。さらに、「政府は国境紛争を解決し、終結させる必要がある。政府が強く安定していれば、信頼は自然と高まる」と述べ、9日の株式市場が大きく反発したことを例に挙げた。
 タイ商工業雇用者連盟(ECONタイ)のタニット・ソーラット副会長は、プームチャイタイ党の勝利は意外ではなく、経済の減速とカンボジアとの国境問題が緊張するなかで、有権者が最善の選択肢とみなした結果だと分析した。多くの有権者は、民衆党やプアタイ党が、受け入れがたい条件で国境検問所を再開するのではないかと懸念していたと述べた。また、エークニティ副首相兼財務相、スパチー商業相、シーハサック外相ら、専門性と能力が評価されている経済・外交チームへの信頼も、国民支持の背景にあると述べた。
 タイ工業連盟(FTI)のクリアンクライ・ティアンヌクン会長は、「アヌティン政府は前例のない形で民間部門と緊密に連携してきた。それが信頼感を高めた」と述べた。新政権は、消費者の購買力を高め、高水準にある家計債務への対応に注力すべきだと強調。中小企業を支援するため、的を絞った流動性対策が急務だと述べた。
 タイ荷主評議会(TNSC)のタナコーン・カセートスワン会長は、プームチャイタイ党が政権樹立で主導的な役割を担うことについて、「政策の継続性と安定性にとってポジティブなシグナル」と述べた。同党が国政運営の経験を有し、特に観光、国際貿易、草の根経済といった実体経済への理解を備えている点を評価。選挙後の移行期において、民間部門や投資家が抱く不安を和らげる効果があると指摘した。
 タナコーン氏は、財務、商務、外務といった主要省庁、国の所得創出や国際的信用の向上に不可欠な分野における経済チームの継続性を重視していると語り、企業は明確な政策方針と、実効性のある政策の実行を期待していると強調した。TNSCは、新政権に対し、①明確な経済政策、②国内外の投資家の信頼回復、③経済構造上の課題への対応の3点を優先課題とするよう求めている。
◆株式市場は急反発
 プームチャイタイ党の地滑り的な勝利を受け、株式市場でも新政権の迅速な発足と政策の継続性への期待が高まっている。選挙後の株価上昇現象が発生し、証券アナリストは2026年のSET指数の予想水準を引き上げた。
 9日のタイ株式市場は寄り付きから株価が急騰。SET指数は1400ポイント台をつけた。終値は1400.89ポイントで、前営業日比3.46%上昇した。出来高は1000億バーツを超えた。
 イノベストX証券の幹部は、今回の投票結果について、「新政権の枠組みを巡り、選挙前にアナリストが想定していたよりも、選挙後の政治情勢がはるかに明確になった」と評価した。プームチャイタイ党が200議席近くを確保したことで、連立政権の樹立において強い交渉力を持ち、主要省庁に対する影響力も高まっていると指摘。「新内閣の発足に時間がかかる可能性は低く、2027年度予算編成が遅延するとの懸念は後退した」と述べた。
 ブームチャイタイ党はすでに、財務、商務、外務といった主要閣僚の人選を公表済みで、現与党が主導する新政権では、前政権からの政策の継続性が見込まれ、今年の経済成長率予測にも上振れ余地がありそう。
 アサデート・コンシリSET所長は、新政権について、「短期的な課題対応と長期的な政策実行のバランスを取りつつ、前政権からの継続性を確保する」との見方を示した。国内経済の活性化、生活費負担の軽減、購買力の下支えに重点を置く政府の政策は、経済全体の回復基調を支え、上場企業の業績見通しにプラスの波及効果をもたらすと指摘した。

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