2026年3月2日(月)号

中銀の月例経済金融報告=1月の景気は前月比で拡大

 タイ中央銀行が2月27日に発表した月例経済金融報告によれば、1月のタイ経済は前月比で拡大した。金を除く輸出が増加し、とりわけ電子分野が継続的に拡大したことが主因。加えて、宝石・装身具や石油分野も、一部企業の特殊要因により一時的に増加した。観光部門は外国人観光客数と観光収入の双方が増え、改善した。
 国内需要は、民間消費と民間投資の双方で増加した。特に車両分野では、EV3.0措置終了前の駆け込み購入がみられた。徐々に納車が行なわれており、登録期限が1月末まで延長されたことが好影響をもたらしている。内外需要の増加は、観光や関連商業活動の拡大をもたらした。一方で、政府支出は前月に投資支出を前倒し執行した反動で伸びが鈍化した。このため、建設活動の縮小に伴いサービス部門全体は減少した。工業生産は前月比で横ばいだった。
 経済の安定面では、一般インフレ率は生鮮食品とエネルギー分野の物価下落の影響から前月よりもマイナス幅が拡大した。ただし、コアインフレ率は前月とほぼ同水準のプラスの値を保っている。自動車の価格が物品税引き上げに伴い上昇した一方、個人用品の価格は事業者の販促活動により低下した。
 経常収支は、サービス・所得・移転収支の黒字により全体として黒字となったが、貿易収支は輸入の増加により赤字となった。

◆デマンドサイド
*民間消費
 季節調整済みの民間消費の指標は、前月から伸びが鈍化した。経済刺激策が終了し、非耐久財と半耐久財の支出が減少したことが理由。ただし、耐久財は引き続き拡大した。特に乗用車の販売が貢献しており、一部は昨年末のEV3.0措置終了前に駆け込み購入されたEVの納車分だった。
 サービス部門は、外国人観光客からの収入の増加に一致して、宿泊・飲食関連の支出が増加した。
 消費者の信頼感は、新政権樹立と政府の政策への期待感から、前月から改善した。

*民間投資
 季節調整済みの民間投資の指標は、すべての分野で前月から増加した。(1)設備投資では、資本財輸入が増加した。特に通信機器と電気機械・電動工具分野が寄与した。(2)輸送機械分野は、自動車登録台数の増加により拡大した。特にEV3.0措置のもとで登録期限が1月末まで延長されたことを背景に、EVの登録が増えた。(3)建設分野は、建築許可面積の増加に伴い、特にホテル・商業施設など住宅以外の建築工事が増えたことで、やや拡大した。一方で、住宅分野の建設投資は減少した。

*外国人観光客数と観光収入
 季節調整済みの外国人観光客数と観光収入は、前月から増加した。近距離市場(ショートホール)からの観光客が増えたことが主因で、特にマレーシア人観光客は、南部での洪水の影響により一時的に旅行を控えていた状況から徐々に回復した。また、遠距離市場(ロングホール)からの観光客数も増加し、とりわけ米国と英国からの観光客が増えた。

*物品輸出
 季節調整済みの金を除く輸出額は、主として電子分野の伸びにより前月から増加した。特に、コンピュータ部品と通信機器の対米輸出、ならびに電子回路基板と部品の対欧州輸出が増加した。加えて、宝石・装身具分野がインド向け輸出の増加により拡大し、石油分野もアセアン向け輸出の増加により伸びた。これらは一時的に加速したものとみられる。
 一方、加工農産品の輸出は減少した。米国向けの調理済み食品やインド向けのパーム油の輸出が減少したことが響いている。また、自動車・同部品分野も減少した。オーストラリア、メキシコ、中東、アセアンなど主要市場向けのピックアップトラックの輸出が減少した。

*物品輸入
 季節調整済みの金を除く輸入額は、前月から増加した。(1)燃料を除く原材料・中間財分野は、台湾からの電子部品と電気製品の輸入増により拡大した。一部は、世界的なチップ不足への懸念を背景とする。(2)航空機を除く資本財分野は、主に中国からのコンピュータ輸入の増加により拡大した。(3)燃料分野は、天然ガス、原油、石炭、石油製品などすべての品目の輸入増により拡大した。一方で、(4)消費財の輸入は減少した。特に、前倒しで輸入が行なわれた反動により、中国からのEVの輸入が減少した。

*政府支出
 政府支出は前年同月比で拡大したが、前月に前倒しで執行された中央政府の投資支出の反動から、伸びは鈍化した。特に、経済刺激のための中央予算を使うプロジェクトにおける繰越予算の執行が前月に集中していたことが影響した。加えて、国営企業の投資支出は、交通インフラ分野の投資計画に沿って縮小した。一方、中央政府の経常支出は、選挙・国民投票の実施に関する支出や年金支給により、引き続き拡大した。

◆サプライサイド
*工業生産
 季節調整済みの工業生産指数は、前月から横ばいとなった。輸出比率が30%未満のグループは、国内不動産需要の低迷を背景に建設資材の生産が減少したことから縮小した。輸出比率が30~60%のグループも、二輪車と家具の生産減により縮小した。一方、輸出比率が60%超のグループは、電子部品やハードディスクドライブなど電子分野の生産増により拡大した。輸出が継続的に増加している動きと一致している。

*サービス部門
 金取引を除いた季節調整済みのサービス部門の指標は、前月からわずかに減少した。主に、前月に大きく拡大していた建設分野の活動が減少したことによるもので、政府の投資支出の伸びが鈍化した動きと一致している。ただし、商業・観光部門の活動は前月に引き続き拡大した。宿泊・飲食業や旅客輸送業が伸びており、外国人観光客数と輸出の拡大に連動している。

*農業所得
 農業所得は前年同期比で減少した。主因は農産物価格が下落し続けていることにあり、特に天然ゴム、米、パーム椰子、サトウキビの価格が下落した。国内と世界市場における供給が依然として高水準にあることや、中国からの天然ゴム需要の減少が影響した。一方、農産物の生産は前年同期比でわずかに拡大した。前月の多雨により収穫が延期されていたサトウキビの生産が増えたことに加え、天然ゴムとパーム椰子も好天により引き続き増加した。

◆金融情勢と経済安定性
*金融情勢
 企業部門の資金調達は、前月から全体として減少した。主因は銀行融資による資金調達の減少で、ほぼすべての業種で融資が縮小した。事業リスクの高まりを受けて金融機関が融資に慎重姿勢を強めたことが影響した。電子部品、食品・飲料、ゴム・プラスチックなど一部業種では融資が増加した。
 他方、債券市場と株式市場を通じた資金調達は増加した。債務返済と運転資金の確保が主な目的。債券市場からの資金調達は、食品・飲料、情報技術分野を中心にわずかに増加した。株式市場からの資金調達は、アグロインダストリー分野で増加した。
 1月31日から2月24日までの債券による資金調達コストは、タイ国債の短期・長期の利回りが平均して低下した。投資家の需要が増加したことが背景にある。

*為替相場
 2026年1月と2月(2月24日までのデータ)におけるバーツの対ドルレートは、主にドル安を背景に平均でバーツ高となった。ただし、米国の通商政策に対する不確実性、地政学リスク、米連邦準備制度理事会の金融政策の見通しを巡り、変動の大きい値動きとなった。加えて、金価格と国内政治といった個別要因もバーツに追加的な圧力となった。実効為替レート(NEER)は、1月平均でわずかにバーツ高となったが、2月は再びバーツ安に転じた。

*経済安定性
 一般インフレ率は前月よりもマイナス幅が拡大した。主に生鮮食品の物価が下落した。洪水の状況が収束した後に生産量が増加し、野菜の価格が下落したことが影響した。また、エネルギー分野では、世界の原油価格の下落と石油基金拠出金の引き下げに伴い、ガソリンと軽油の小売価格が低下したほか、電力料金も引き下げられた。
 一方、コアインフレ率は前月とほぼ同水準のプラス値となった。自動車の価格は物品税の引き上げにより上昇した一方、個人用品の価格は事業者の販促活動により低下した。
 経常収支の黒字は縮小した。主に輸入増による貿易収支の赤字が影響した。一方、観光シーズンにあることから、所得・サービス・移転収支の黒字は拡大した。

◆2025年第4四半期の不動産部門
 不動産市場全体は前年同期比で縮小した。需要と供給の双方が減少したことが要因。需要は、国内外の購買力が依然として弱いことから、戸建て住宅とコンドミニアムの双方で減少した。住宅ローンに対する規制(LTVルール)の緩和は市場を一定程度下支えしたものの、効果は限定的だった。一方、高層コンドミニアムに対する地震の影響は徐々に解消されつつある。このセグメントの融資額がこの四半期に再び拡大に転じたことに表れている。
 供給面では、新規販売は戸建て住宅とコンドミニアムの双方で減少した。住宅価格は、在庫処分を目的とした事業者による値下げにより、特に一戸建て住宅で下落した。ただし、コンドミニアムの価格は前四半期の下落から横ばいへと転じ、改善の兆しがみられる。

タイのデジタル経済に警鐘=パスワード流出6250%増

 サイバーリスクが国の信頼や競争力を揺るがす経済リスクへと拡大している。ジーエーブル(G-Able)グループ傘下でサイバーセキュリティ事業を手掛けるサイバージェニックスは、2026年のタイのデジタル経済に対し強い警戒を呼びかけた。
 同社によると、タイにおけるユーザー名・パスワードの流出件数は8万件から500万件超へと急増し、6250%増となった。週平均のサイバー攻撃件数は3200件を超え、世界平均を164%上回る水準という。累積の経済被害額は最大5兆バーツに達する可能性がある。
 アッタポン・パヤック社長代行兼最高技術責任者(CTO)[=写真]は、2026年につて、AI、クラウド、量子コンピューティングが攻撃側・防御側の双方で活用される「パーフェクト・ストーム」の年になると指摘する。ハッキングはミリ秒単位で自動化され、被害は身代金や復旧費用にとどまらず、事業停止や顧客の信頼の毀損、法的リスクにまで波及する。企業が依然としてパスワードに依存している場合、被害は指数関数的に拡大すると警告した。

◆Zero Trustへの移行を提言
 同社は、外部防御中心の従来型セキュリティは、常時接続型のデジタル環境には適合しないと分析。早急に「Zero Trust」モデルへ移行し、正しいログイン情報であっても自動的に信用せず、すべてのアクセスを検証する原則を徹底すべきだと提言した。
 主な戦略は次の3点。
 第1に「Identity-first Security」。AIで利用行動を分析し、パスワード依存から脱却する。
 第2に「Least Privilege」。職務に応じて権限を限定し、侵害時の被害範囲を最小化する。
 第3に「Autonomous Response」。機械レベルで脅威に自動対応し、人的判断への依存を減らす。
 同社は企業に影響を及ぼす3つの構造的リスクも指摘する。
 1つ目は「サードパーティー・リスク」。パートナー経由の情報漏洩の増加により、サプライチェーン全体での管理が不可欠になる。
 2つ目はAIを用いたソーシャルエンジニアリング。経営陣の音声・映像を偽造するディープフェイク詐欺が増えている。
 3つ目は「Harvest Now, Decrypt Later」。現在暗号化されたデータを保存し、量子技術成熟後に解読する手法で、金融や医療、インフラなど長期データ保有分野に影響する。
 同社は、Zero TrustやIdentity-first Securityの導入、ポスト量子暗号(PQC)への移行は追加コストではなく、事業の継続を守る先制的リスク管理だと強調する。アッタポン氏は「問題は攻撃を受けるかどうかではなく、いかに迅速に被害を制御できるかだ。サイバーセキュリティはもはやIT部門の課題ではなく、経営陣と取締役会レベルのアジェンダだ」と述べた。

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[データ]
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