2024年8月8日(木)号

憲法裁が前進党解党の判断=9日に議員の移籍先を発表へ

 憲法裁判所は8月7日、野党第1党、前進党の解党判断を下した。選挙委員会(EC)が求めていたもので、合わせてチャイタワット・トゥラートン党首、ピター・リムジャルンラット党最高顧問ら執行部メンバー11人の被選挙権の10年間剥奪の判断も下した。


 21年3月に刑法典第112 条(不敬罪)の改正法案を下院に提出したことと昨年の下院議員総選挙時の選挙公約で同条項の改正を明記したことが、憲法に定める「国王を元首とする民主主義統治体制」を転覆させる、または敵対する行為にあたると判断した。
 同党の法改正案は、不敬罪の告発者を王室に限定することで、為政者に政治利用させないことや罰則規定の緩和を骨子とする内容。判決では、同党が選挙公約に掲げたことで政治の道具にしたと断じた。
 20年半ば以降、不敬罪が適用されたケースは270件に達している。国軍によるクーデタで発足したプラユット前政権に対する抗議運動がエスカレートする中で急増した経緯がある。前進党は同条の適切な適用を訴え続けてきたが、その姿勢が王制への批判や否定と見做された。
 同党は昨年の総選挙で若年層の支持を集めて最多議席を獲得したが、ピター党首(当時)が上下両院合同での首相指名で敗れ、第2党のプアタイ党が前進党を外した連立政権を発足させて現在に至っている。政権取りに失敗した最大の理由が不敬罪見直しの姿勢だった。
 前進党の前身にあたる新未来党も20年に解党になっており、当時の主要メンバーと所属議員が前進党に移籍した。前進党の現有議席は148。執行部メンバー以外の議員(142人)は60 日以内に他政党に移籍できる。今のところ下院に議席を持たない「ティンガーカーオ・チャオウィライ党」に、ほぼ全員が移籍するとの見方が有力視されている。
 シリガンヤー・タンサクン副党首は9日にも移籍先の政党を発表すると述べている。

「AIタイランド・フォーラム」=NECTECが10月に開催

 国立電子・コンピュータ技術センター(NECTEC)は10月25、26日にサムヤーン・ミットタウンで、「第2回AIタイランド・フォーラム」を開催する。タイAI協会(AIAT)、AI事業者協会(AIEAT)、サイアム商業銀行(SCB)の持株会社であるSCB・Xとの共催で、テーマは「AIによる持続可能な成長」。
 NECTECのチャイ・ウティウィワッチャイ所長は、「AIを活用して持続可能な成長を実現するために、AIの単なるユーザーからAIアプリのクリエーターへと脱皮する必要がある」という。データセンターや高水準のコンピューティングなどのインフラに加え、熟練技術者の育成、R&Dのエコシステムが要件になってくる。現在、NECTECのAI研究者とデータ技術者は約100人。AI試験センターがあり、AIアプリの試験を実施できるるが、充分とはいえない状態だという。今後3年でAI技術者3万人を養成するため10億バーツを投資する。生産性向上と経済成長の実現に向けたAIエコシステムの構築に取り組んでいく。タイ大規模言語モデル(TLLM)とAI対応アプリの開発がクリエーターへの脱皮に向けた課題だ。
 現在、国内にはAI系スタートアップが約300社あり、シード・ファンディングのステージで15億バーツを調達している。AI関連の労働市場には約1000人の熟練労働者がいる。同所長は、「タイはオンライン通販やソーシャルメディアでは時流に乗り遅れた部分もあったが、AIのエコシステム開発に力を入れれば、この分野で先頭に立つことは可能」と指摘する。
 タイ政府はOPEN・AI社のチャットGPTが国内に紹介される前からAI開発を国家的課題に位置付け、戦略を策定してきた。その結果、現在ではクラウド・サービスにAIが採用され、タイ語のGPT大規模言語モデルを利用できる環境ができ上がっている。
 現在は第2次AI戦略行動計画(2022~27年度)期間中で、新たに国家AI委員会を設置する計画。計画が予定より遅れる場合、高等教育・科学・研究・技術革新省とデジタル経済社会省が予算を割いて計画の一部を推進する準備も整っているという。
 NECTECは高等教育・科学・研究・技術革新省から10億バーツの予算を受け、27年までに3万人、さらにその後2年で5万人のAI関連人材養成に着手する。教育省とも連携し、一般教育課程にAI関連カリキュラムを盛り込むことも検討している。
 AIATも「スーパーAIエンジニア」プロジェクトを立ち上げ、AI関連人材育成に着手した。年間200人の養成が可能だが、市場の人材需要は3万人で、道のりは遠い。
 AIEATのコープクリット・ウィリヤユタコン会長は、「優秀な人材が揃えば時流に乗り遅れることはない。AIは世界的にもまだ初期段階で、人材を増やすことができれば国を変えられる」と指摘している。AIEATはNECTECと提携してタイ語のGPT大規模言語モデルの開発を手掛けてきた。すでに1億バーツを投資した。さらなる開発には予算の上乗せが必要で、同会長は「5年後を見据えればAI関連投資には今の10倍の予算が必要」と述べている。
 SCB・Xのカウィウット・テムプワパット先端技術研究開発室長は、3年以内に自社をAIファースト企業にすると宣言。国の持続可能な開発にとってAIのエコシステムづくりが重要と強調した。

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