4~6月期経済成長率2.3%=通年予測は2.3~2.8%
国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局が8月19日に発表した第2四半期の経済成長率は2.3%増で、第1四半期の1.6%増から加速した。季節調整済み前四半期比では0.8%増となり、2・四半期連続でプラス成長となった。今年の経済成長率は2.3~2.8%増と見積もり、5月時点の2.0~3.0%増から修正したが、中間値は2.5%増で5月時点の予測から変わらず。
ダヌチャー・ピチャヤナンNESDC事務局長[=写真]によると、タイ経済には①観光業回復の持続、②消費の良好な水準での拡大、③政府の消費支出と投資支出の加速、④世界貿易の回復に沿った物品輸出の緩やかな回復という4つの支援要因がある。しかし民間のエコノミストの多くは、タイの産業が構造的な問題に直面していることから景気の先行きには悲観的だ。特に自動車、エレクトロニクス、石油化学の主要産業の不振は深刻で、多くの業界で工場閉鎖が相次いでいる。
民間消費は拡大しているものの、伸びは鈍化している。特に耐久財の消費は収縮傾向が続いている。家計債務の膨張が背景にあり、金融機関による自動車ローンと住宅ローンの拒否率が上昇している。住宅は売れ残り物件が急増し、投資は激減して新規プロジェクトが減っている。
第2四半期のGDPを支出面から見ると、政府消費支出、物品・サービス輸出が上向いたほか、民間消費も引き続き順調に拡大した。しかし民間投資と政府投資は減少した。
第2四半期のタイ経済は、多くのエコノミストの予想どおりに加速したものの、民間投資が6.8%減となったことを警戒している。下半期に経済が下降サイクルに入り、通年の成長率は2.5%を下回る可能性もあると見ている。エコノミストの多くは民間投資が大幅減になったことを信用収縮の結果と分析。経済が大きく減速する兆しを感じ取っている。投資の減少は雇用にも影響を及ぼし、購買力を低下させる。それがさらなる投資と生産の減少を招くことになりかねず、経済は失速する。下半期の経済成長率は1%に満たない水準に低下すると予測するエコノミストもいる。
GDPを生産面から見ると、製造業の生産は増加に転じたものの、生産が増えているのは国内市場向け製造業のみで、輸出向け製造業の生産は収縮している。エコノミストはタイ製造業の競争力が漸減傾向にあると見ている。
ダヌチャー事務局長は、政府による経済刺激策については新政権次第だとした。デジタルマネー給付政策を進めるかどうか不透明なことも踏まえた上で、利用可能な資源と手段を使って低所得層を支援する措置が必要だと見ている。また21~23年の外国人直接投資による資本流入が00~16年と比べて減少していることを懸念し、規制緩和、労働者のスキル向上、半導体などのターゲット産業への投資誘致など、外国人直接投資受け入れのための基盤構築の必要性を強調した。
なおタイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は21日に政策決定会合を開く。第2四半期の成長率がMPCの予測に近いものとなったことから政策金利は据え置く可能性が高い。
ペートンターン新政権=閣僚資格を厳格チェック
ペートンターン首相は8月19日、プアタイ党の幹部を招集して組閣について協議した。セーター前首相とそのブレーンも出席した。連立与党との調整も水面下で進んでおり、各党が入閣候補の名簿を提出する手はずになっている。首相は法律で定める要件を満たしていることを確認するため徹底的に閣僚候補の資格をチェックするとしている。組閣作業には時間がかかる見通しだが、今月中の発足を望んでいると述べた。
プームタム・ウェーチャヤチャイ首相代行も、セーター前首相への憲法裁判所の判断に照らして、閣僚候補の資格は慎重かつ徹底的にチェックしなければならないと述べている。前政権で連立を組む各党に割り当てた大臣ポスト配分は変わらないかとの記者団の質問には、首相が各党と協議すると述べるにとどめた。
ペートンターン首相は、19日の会議にセーター前首相を呼んだことについて、「引き継ぎにあたって訊いておきたいことがあった」と説明。政府の政策の継続性を保つため組閣作業は可能な限り簡潔にしたいとコメントした。首相は自身の政権を新政権とはみなさず、プアタイ党政権の継続と考えているとした。党の戦略チームがセーター政府のブレーンと様々な政策の進み具合を確認する作業を進めていると明らかにし、特に経済分野の政策では大規模に経済を刺激する措置を発表すると表明した。ただしすべての政策は国会での所信表明前に連立与党で議論しなければならないと述べ、プアタイ党の選挙公約で、セーター政府が着手したデジタルマネー政策については明言を避けた。
与党第3党のパランプラチャーラット党は連立にとどまるもよう。パチャラワート・ウォンスワン副首相兼天然資源・環境相の留任が予想されている。同党幹事長のタマナット・プロムパオ農相はオーストラリアで麻薬関連犯罪で有罪判決を受けた過去があり、去就が注目されている。
ルアムタイサーンチャート党党首のピーラパン・サーリラットウィパーク副首相兼エネルギー相、チャートタイパタナー党党首のワラーウット・シラパアーチャー社会開発・人間安全保障相は留任が有力視されている。
消息筋によると、ピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相やマリット・サギアムポン外相は留任しないもよう。新政府は経済問題の解決が急務なため、経済の専門知識を持つ外部の人材も探している。
タイ株式市場が急伸=バーツは34バーツ台前半に
19日のタイ株式市場は、政治情勢の進展と新政権の経済刺激策への期待感、同日に発表になった第2四半期経済成長率の予想以上の拡大を好感して株価が上昇した。SET指数は前営業日比20ポイント以上、上昇し、1323.38ポイントでこの日の取引を終えている。売買代金は600億バーツを超えた。
タイ株式市場は先週、セーター首相の失職という大方の予想を覆す憲法裁判断に動揺したものの、すぐに後継首相が決まり、プアタイ党政権が継続となり、政治状況が改善に向かったことを好感した。ペートンターン首相は正式に就任した直後の会見で、経済刺激策を進める用意があると発表した。
この日の株式市場では特に銀行株が買い進められた。第2四半期の経済成長率が2.3%と、エコノミストらの予測を上回ったことが買い材料になった。下半期は政府予算の執行加速が景気にプラスの効果をもたらすと期待している。
一方、外為市場ではバーツが急伸し、中銀参照レートで1ドル=34.452バーツをつけ、34バーツ台前半まで上昇した。アジア域内通貨高に加え、タイ国内の政治的緊張の緩和がバーツを支えた。
米国の景気後退(リセッション)に対する懸念が弱まる中、アジア通貨の多くが7か月ぶりの高値水準に上昇した。市場は米連邦準備制度理事会(FRB)が9月にも利下げを開始すると観測し、投資家がリスク資産での運用を増やし始めた。
外為ディーラーの多くは、日本を除く先進国の中央銀行が金融緩和に向かい、景気が回復傾向にあることから、アジア通貨にはさらなる上昇の余地があると見ている。バーツに関しては、国内政治の混乱が収まることで投資家が経済ファンダメンタルズにより注目できるようになるものの、弱基調に転じるとの予測もある。ペートンターン首相の過去の発言から、新政府とタイ中央銀行との関係が悪化するおそれがあるほか、デジタルマネー給付政策が廃止される可能性もある。一部のアナリストは、米大統領選後にドル高が進展する可能性があり、バーツは年末時点で1ドル=37.5バーツまで下げる展開もあると予想している。
一方でバーツの上昇を支える要因もある。世界市場の金相場は1オンスあたり2500㌦を超え、史上最高値を更新している。海外投資マネーもタイ債券市場に流入し始めた。
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