2024年9月9日(月)号

ペートンターン内閣が始動=12日に国会で所信表明へ

 ペートンターン首相は9月7日、首相官邸で閣僚懇談会を開き、国会での所信表明の内容について協議した。首相はセーター前政権の政策を継続するためにも下院の残り3年間の任期満了まで職務を全うしたいと語った。12日に国会で所信表明演説する。


 新内閣は6日夕に国王宣誓式に臨んだ。同日朝には新入閣の2人の副大臣のコロナ感染が発覚し、延期になるとの報道があったが、国王がマスク着用での列席を許可したことで、予定よりも遅れたものの午後6時15分に宣誓式を終えた。
 ペートンターン政権の主要閣僚は前政権から留任しており、前政権の政策の多くが継続される見通し。財務、外務、内務、運輸、社会開発、高等教育、法務、労働、文化、教育、保健、エネルギー、デジタル各省の大臣が留任した。ペートンターン首相は、すべての大臣が国のために働く準備はできていると述べた。
 ペートンターン政府に対しては、タクシン元首相の関与、介入をめぐって幾つかの訴訟がすでに起こされている。首相は法的助言を得るための法務チームを設けことを明らかにした。
 主要経済省で大臣が交代したのは商業省、農業・協同組合省、工業、観光・スポーツ省など。天然資源・環境省を除いて大臣の所属政党に変わりはなく、政策の継続に大きな支障はない。
 ピチャイ・ナリプッタパン商業相は6日、記者団の質問に対し、商品価格の監視を第1の課題に挙げた。商品価格が原価に比して適正かどうか、適正でないなら企業を呼んで国民が困らないよう商品の価格を引き下げる方法について話し合わなければならないと述べた。第2に中国製品の氾濫の問題を取り上げた。これまでに様々な対策が採られているが、追加の措置を講じる必要があると指摘している。
 通商政策では主要貿易相手国・地域との自由貿易協定(FTA)交渉を急ぐ考えを示した。FTAを結ぶことでタイへの投資は増えると見込んでいる。特に電子製品の基幹部品であるプリント基板製造で投資が伸びる傾向にあり、タイの新たな成長産業になる可能性がある。昨年には1500億バーツを超える投資があったことを明らかにし、適切な振興策に取り組めば投資はさらに増え、将来的にタイの輸出構造を変える役割を果たすと見ている。
 ソラウォン・ティアントーン観光・スポーツ相は、9日に初登庁して省の幹部と話し合う予定だと語った。観光を刺激するための措置を準備する考えで、関係諸機関と協議して刺激策の内容を再検討する考えを示した。国に収入を呼び込むために観光・スポーツ省が緊急に取り組む必要があるのは新たな観光市場の開拓だと指摘した。タイの観光業は間もなくハイシーズンを迎えるが、それまでの時期の観光業をできる限りサポートするため迅速に行動しなければならないとした。
 また国内観光のポテンシャルを高めることも重要で、タイ人による国内観光の振興はコミュニティへの所得分散に寄与するとした。
 スポーツ行政については、25年にタイが開催する東南アジア競技大会(SEAゲームズ)の準備に全力で取り組むと述べた。

スワンナプーム空港にオープン=マルチモーダル物流センター

 国営タイ空港社(AOT)はスワンナプーム空港内にマルチモーダル物流センターを開設し、9月5日にオープニング式を執り行なった。道路・鉄路・海路・空路のあらゆる交通手段に対応して、切れ目のない統合的な物流サービスを提供する中枢機能を担う。子会社のAOTグラウンド・アビエーション・サービス社(AOTGA)が運営する。
 AOTGA社のシリワット・トーワチラクン社長は、主にCLMV諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)向け貨物の物流機能を重視、域内における物流ハブとしての地位を確立したい考え。通関手続きを一括して同センターで処理することで物流効率の引き上げを図る。初年度となる2025年度(24年10月~25年9月)の取扱貨物量目標を4万~5万㌧、収益目標を8000万バーツに据えた。
 同センターを利用している物流会社は現在10社以上あるが、オンライン通販需要の増加に伴い利用企業はさらに増える見通し。貨物取扱量と収益は年率10~15%の伸びを示していくと期待している。
 センターの開設費用は1億5000万バーツ。床面積は4872平米に達している。あらゆる物流チャネルに対応し、有機的な接続を可能にするサービスを提供していく。特にCLMV向けの空運事業に対するサービスを重視する。近年、近隣諸国との空運による物流量はオンライン通販需要の高まりから急増している。
 AOTGAは同センター以外にも、空港内の旅客預入荷物のハンドリング・サービスを提供しており、今年度(23年10月~24年9月)の総収入見通しは34億バーツ、来年度は38億~39億バーツを見込んでいる。プーケット、ドンムアン両空港における地上サービスの需要拡大が予想されている。

自動車ローン=中銀が連帯債務認める方針

 タイ中央銀行(BOT)は、家計債務の膨張による消費者の購買力低下が自動車の販売に影響を及ぼしていることから、自動車ローンの一部規制緩和を検討している。自動車ハイヤーパーチェスローンの焦げ付きでセールバックされた車が中古車市場に大量に出回ることで、中古車価格が下落しており、販売業者を圧迫している。そこで夫婦や親子などが共同で借り入れる連帯債務を認める方針を打ち出した。1人が主債務者となり、もう1人が連帯債務者となる。両者に返済義務がある。ローンを組むにあたって2人の所得が合算されることで金融機関もローンを提供しやすくなる。
 国内の家計債務は依然として深刻な状態が続いている。国家経済社会開発評議会(NESDC)によれば、今年第1四半期末時点の家計債務残高は16兆3700億バーツ。前四半期末(23年第4四半期)から2.5%増加した。増加率は3%だった前四半期末から鈍化し、GDPに対する比率は91.4%から90.8%に低下したが、持続可能な水準とされる80%を大幅に上回っている。
 NESDCによれば、タイの家計債務には次のような特徴がある。若年就労世代(25~29歳)の58%はクレジットカード・ローン、個人ローン、自動車ローンなどの負債を抱え、4分の1が不良債権化している。クレジットカード・ローン、個人ローン債務者の30%は4枚以上のカードを使用しており、負債額は所得の10~25倍に達している(外国では5~12倍が標準)。ローン契約の8割は債務者の情報に不備がある。負債を抱える世帯の62%は緊急時に必要な蓄えが不充分で、半分以上は所得が20%減少した場合、債務返済に支障が生じる状態にある。
 60歳以上の4分の1が1人平均40万バーツ以上の負債を抱えている。クレジットカード・ローンと個人ローンの40%は最低返済額のみ支払っている状態で、負債の長期化につながっている。現在、不良債権になっている約1000万件のうち半分近い約450万件はコロナ禍の時期に不良化した。大半が個人ローンと農業ローン。不良債権の20%はすでに裁判所に告訴されている。差し押えた資産の3分の1がまだ換価できていない状況。
 また調査対象となった4600世帯の42%が、制度外金融から平均5万4300バーツを借り入れている。
 消費者ローンの不良債権は第1四半期に1630億バーツとなった。不良債権率は2.99%で、前四半期の2.88%を上回り、5・四半期連続で上昇した。
 自動車ローンの連帯債務はまだ検討段階だが、株式市場はこのニュースに反応している。証券アナリストによれば、自動車ローンの比率が高い金融機関の株価が上昇した。一方で自動車ローン拡大への貢献度は限られるという見方もある。

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