サマート・グループ

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24年の目標は総収入30%増

 情報通信技術(ICT)関連事業を幅広く展開するサマート・グループが1月末に事業計画を発表し、24年を持続的な成長に向けた基盤強化の年と位置付けた。収入面では30%増を超える伸びを目指す。

■合計収入130億バーツ
 グループ会長で、サマート・コーポレーション(SAMART)の副CEOを務めるワッチャイ・ウィライラックは、24年1月30日に開いた年初会見で同年の経営方針を次のように明らかにした。
 「24年は試練の年となる。世界経済は戦争やインフレから減速が見込まれ、タイでは年度歳出予算の執行の見込みがまだ立っていない。同業他社との競争はさらに激化する。したがって持続的な成長に向けた基盤強化を重視し、次の取り組みを推進する。第1に、政府予算への依存を低下させる一方で、アウトソーシングのビジネス・モデルを導入し、新たな収益源とする。第2に、競争力を向上させ、ビジネス・チャンスを拡大すべく、戦略的ビジネス・パートナーとの提携の新しい形態を探る。第3に、長期にわたる堅実な成長に向けて、グループが豊富な経験と専門性を有するテクノロジー関連サービスを拡充し、国内外での新たな顧客基盤の獲得につなげる。こうした取り組みを通じ、24年は合計収入130億バーツ、前年比で30%超増を目指す」

ワッチャイ・ウィライラック

■デジタルICTソリューション
 デジタルICTソリューション事業のサマート・テレコムズ社(SAMTEL)は、23年に合計で23億バーツ超の新たなプロジェクトの契約を締結した。現在のバックログ(受注残)は合計約45億バーツになっている。24年には合わせて100億バーツ超の新規プロジェクトの入札に参加する計画で、収入は60億バーツ、30%増を目指す。デジタル・トランスフォーメーション(DX)の流れに対応し、先端技術を駆使したソリューションの提示によって官民の顧客による業務を支援する。SAMTELが提示するソリューションは、デジタル・バンキング・ソリューションや企業資源計画(ERP)、企業資産管理(EAM)、人事・人材管理(HCM)、顧客関係管理(CRM)などの組織マネジメント・ソリューションなどだ。政府系組織の業務支援では、例えばスマートCCTVに見られるように、AIを導入して設備の作業効率の向上をサポートする。社会と環境の課題に応えるソリューションを継続的に提示し、太陽光のようなクリーンなエネルギーの技術を応用したソリューション、工業部門から排出される汚染物質の監視ソリューション、エネルギー管理運用システムのソリューションなどの提示を通じ、社会と環境の持続性や国の安全保障に関する課題に応えていく。

■ユーティリティ&トランスポーテーション
 ユーティリティ&トランスポーテーション事業の24年の収入目標は55億バーツ、23%増に設定した。多くの側面でビジネス・チャンスが期待されている。特にカンボジア・エアトラフィック・サービス社(CATS)を通じてカンボジア国内の航空管制業務に携わるサマート・アビエーション・ソリューション社(SAV)は、収入が30%以上増えると予測している。支援要因はカンボジアの経済と観光産業の成長で、同国政府は関連サービス業の支援に本腰を入れる政策を有し、インフラ開発や各種施設のグレードアップに取り組んでいる。23年10月にはシェムリアップに700万人の観光客を受け入れる能力を持った新空港が開港した。24年にはココン州にダラ・サコア国際空港が開港する予定だ。SAVは、空港内の各種サービスや他国での航空無線事業に進出する機会も視野に入れている。
 変電所の建設や地上・地下の送電線敷設などに従事するテーダー社の現在のバックログは40億バーツで、24年中にさらに35億バーツ超の工事の入札に参加する。
 ダイレクト・コーディング(梱包材上に管理コードを印字するサービス)事業の収入目標は9億8100万バーツ、10%増に設定された。ビザ免除や娯楽施設の営業時間の延長を含む政府の観光振興策から、ビールの消費量が増える見通しにあり、それに対応すべく新しいビール工場が操業を開始するとともに、現存する工場も生産能力の拡大が進められている。加えて、顧客基盤を医薬や石油など他の物品税対象製品の生産者にまで拡大する計画もある。

■デジタル・コミュニケーション
 デジタル・コミュニケーション事業では、デジタル・トランク無線サービス(DTRS)事業が23年に顕著な成長を見せ、子機の販売台数の増加や通信サービス利用時間の拡大から収入が300%増えた。24年にはサービス利用者の基盤を広げ、政府系の組織から民間組織、一般個人にも拡大する計画を立てている。サービス利用者を12万人以上に増やす目標が設定された。
 他方、大きく拡大する可能性がある信仰市場に対しては、サマート・デジタル社(SDC)の子会社として22年に設立されたラッキー・ヘンヘン(幸運が舞い込みますようにという意味)社が国内外のムーテック(信仰とテクノロジーを掛け合わせた造語)のリーディング・カンパニーとなることを目標に、4つの形態の総合的なオンライン・サービスを提供する。占い分野では、「ホロワールド」のアプリとウェブサイトを通じ、200人を超える様々なタイプの占い師が24時間体制でサービスを提供する。参詣分野では、現在は「タイ・メリット」が100か所を超えるタイ国内の有名な仏教寺院へのオンライン・タンブン・プラットフォームとして多忙なタイ人のタンブンを受け付けている。このほか、タンブン/参詣好きのタイ人向けの各種ライフスタイル製品を購入できる電子商取引のプラットフォーム「ムー・コマース」、団体顧客向けに信仰関連サービスを提供するマーケティング・プラットフォームの「ムー・ケティング」といったサービスもある。加えて、サマート・マルチメディア社やIスポーツ社も24年に新たな事業をスタートさせる。

■航空管制事業
 ワッチャイは、業況の回復と金融コストの軽減でグループの財政ポジションは堅固になったと語る。
 中核会社のSAMARTのほか、SAMTEL、SDCがタイ証券取引所(SET)に上場している(いずれも情報通信関連株)。加えて23年9月にはSAVも上場を果たし、4社がSET上場企業となった。ワッチャイはSAVの上場に際し、次のように語った。
 「60年以上前から放送・通信関連の事業を実施してきたが、航空管制に進出したのは01年にカンボジアの航空管制事業権を取得したことが契機となった。これにより02年から41年までカンボジアの航空管制業務に従事できるようになり、グループの大規模な事業再編にともない17年に持ち株会社となったSAMARTの下に完全子会社のサマート・トランソリューション社(現SAV)を設立した。SAVは、カンボジア国内で総合的な航空無線サービスを独占的に提供する事業権を取得している。21年間にわたり、カンボジアの航空管制のために技術と設備に投資してきており、事業権の付与期間の延長にも対応する用意がある。最近、49年間に期間が延長されたことで、SAVの事業も安定して継続的に成長する目途が立った」
 SAVが100%株式を保有するCATSは、現在はプノンペン、シェムリアップ、シアヌークビルの国際空港3か所とココン、バタンバン、ストゥントレンの国内線用空港3か所、合わせて6か所の空港における航空機の離着陸管制、さらにはカンボジア領空を通過する航空機に対する管制サービスから収入を得ている。カンボジアの空運は成長を続けており、政府も大きく増加する見通しの旅客数に対応すべく新空港の建設を進めている。外国のシンクタンクは、24年にカンボジアに空路から出入りする旅客数は、観光客、ビジネス客両方の増加によりコロナ前を上回り、便数も延べ13万4000便に増えると予測している。
 サマート・グループは90年代からカンボジアで携帯電話関連事業に従事していた関係で政府とのパイプができ、00年にカンボジア政府がオープンスカイ政策を採用したのを契機に、このパイプを利用して航空管制システムの開発と設備投資に参入する機会を獲得し、航空管制事業権も付与された。

■サイバー・セキュリティ・サービス
 23年9月27日に総合的なサイバー・セキュリティ・サービスを提供するSAMTELの子会社、セキュアインフォ社が、提携先であるAECTICセキュリティ社、セキュアイロン社と共同で法人顧客向けにサイバー・セキュリティ・ツールのソリューション・サービスと携帯端末用アプリの安全性確保に関するソリューション・サービスを提供すると発表した。サイバー・セキュリティの効率向上を重視しつつ、法人顧客に包括的なサービスを提供する。
 SAMTELのチョーティカー・カムルンウェーサラットICT関連応用技術事業担当副社長によれば、ARCTICセキュリティと提携して提供するソリューション・サービスは、リアルタイムで顧客の資産に生じる可能性のあるリスクに関するデータを提供し警告を行なう。、顧客は事業に影響が及ぶ前に適切な対策を選択し講じることができる。
 セキュアイロンのモバイル・アプリケーション・プロテクション・ソリューションに関しては、携帯端末上のアプリのリスク評価を自動で行なう。リスク評価の結果はレポートにまとめられ、問題解決に向けたアドバイスとともにユーザーに提示される。リバース・エンジニアリングを防止することができ、アプリのコードを書き換える必要はない。デジタル個人認証のソリューションも付随しており、ユーザーの個人情報の保護に寄与する。これらソリューション・サービスとセキュア・インフォの主要サービス、例えば24時間サイバー・セキュリティ・オペレーション・センターのサービスやサイバー・セキュリティ・リスク・アセスメントのサービスを組み合わせることで総合的なセキュリティ・サービスを提供する。

■企業管理運用システム
 23年8月には、SAMTELが大企業向け管理運用システム関連のコンサルティングやシステムの設計、整備を手掛ける子会社のポータルネット社を通じデジタル技術を用いた法人顧客向けの総合的な管理システム導入支援サービスを提供すると発表した。ターゲット顧客の管理運用システムのグレードアップを支援するのが主目的だ。手始めにIBMと提携して「IBMマキシモ」ソリューションを提示することになり、1億3500万バーツの資金を投じて行なわれる首都電力公団(MEA)のコンピュータによる修理・メンテナンス作業管理システム(CMMS)開発プロジェクトの工事を受注した。ポータルネットのシリラック・チューンプラスート社長は、「10年以上にわたる法人顧客に対する資源管理運用システム整備の経験から、特に巨大組織の場合は業務が複雑になり多くの手順を要することがわかっている。したがって近年は、先端技術を導入して資源の管理運用効率を向上させる取り組みが重視されるようになった。当社は法人顧客向けの総合的なサービスを提供する用意がある。例えばエンタープライズ・コンテンツ管理(ECM)やロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)のシステム導入にも対応できるようにしたい。こうしたシステムは、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)のシステムと組み合わせることができる。24年の収入目標は10億バーツ以上に設定している」

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