2024年7月23日(火)号

スズキが新たな事業計画=タイでの販売継続を表明

 スズキ自動車タイランドの鈴木忠臣社長[=写真]は7月18日、タイでの事業計画を発表した。「Suzuki Worry Free」と呼ぶキャンペーンを実施する。タイ工場を25年末で閉鎖すると発表してから最初の公式記者発表で、アフターセールス・サービスに対するタイのユーザーが抱く不安を払拭することが狙い。最長3年間にわたって定期メンテナンスを無料で提供し、修理が必要な場合には代替車も無料で利用できるようにする。


 鈴木氏はスズキがタイに製造進出した経緯について、10年以上前にタイ政府が打ち出したエコカー・プロジェクトがきっかけだと説明した。エコカー・プロジェクトは25年に終了する予定で、現政府からEV以外の自動車を促進する政策が示される気配はない。一方、タイでのスズキの昨年の生産台数は1万台でしかない。インドネシア拠点は9万4900台を生産し、一部車種はタイにも輸出している。またインドでは200万台を生産し、2030年までに400万台に増やす目標を定めている。他の海外生産拠点との比較からもタイで生産を続けていくことは困難と判断した。
 タイ工場の閉鎖後はインドネシアからの輸入販売に切り替える。アセアン自由貿易協定(AFTA)を活用できるため輸入関税はかからない。将来的にインド、日本で生産する車種をタイ市場に投入する可能性もある。鈴木氏は、タイでの生産は停止するが、スズキにとって49年にわたって販売してきたタイは重要な市場であることに変わりはないと述べた。
 ワロップ・トリーリクガーム副社長によれば、ラヨン工場で生産するスイフト、シアズ、セレリオのエコカー3モデルは引き続き販売し、インドネシアから輸入するキャリー、XL7、エルティガの販売も継続する。
 タイ国内新車市場は過去6か月、低迷している。1月~6月の新車市場全体の販売台数は30万7995台。スズキの販売台数は3791台、前年同期と比べて54%減少した。新車市場が縮小し続けている主な要因は、経済状況の停滞にあり、家計の債務と生活費が急増したことで金融機関による自動車ローンに影響が及んでいる。経済情勢がまだ回復していない中、自動車業界の競争も熾烈になっている。
 鈴木氏によると、タイでの生産からは撤退するものの、スズキが今後もタイでの事業を継続していくことを強調、将来の競争に対応できるよう事業計画を作成した。今年初めにディーラー向けに発表した経営ビジョン「来るべき自動車市場での競争力強化」に現在も取り組んでいる。
 「Suzuki Worry Free」キャンペーンでは、あらゆる面でサービスのレベルを向上させる新たなビジネス・プランを設ける。顧客のケアを重視し、最高品質のサービスを提供することで、タイ国内の顧客の信頼に応えていく。
 カーボン・ニュートラルの方針に沿って、25年以降に4車種の新型車を投入する計画。ハイブリッド車とバッテリーEVで構成し、どのモデルも顧客のニーズに確実に応え、将来的に競争力のある商品になると確信している。
 同社には都内オンヌットとラヨンの2か所に倉庫があり、スペアパーツを保管している。74万1000個を確保することで10年間の需要に対応する。バンコク都内では24時間、地方では48時間以内にパーツを届ける。全国にサービスセンターは92か所あり、新たにマハサラカム県、カラシン県、ノンカイ県、ブンカーン県、パッタルン県の6か所でディーラーを指名した。スズキの標準に準拠した塗装・板金修理サービスセンターは合計32か所あり、ノンタブリ、シンブリ、スコータイ、アユタヤ、ロッブリ、コンケンにさらに9か所を年内に追加する。顧客データベース管理システム (DMS) を活用し、顧客の訪問情報をリアルタイムで把握し、顧客ニーズの評価に役立てていく。

金融ハブ政策を推進へ=「イグナイト・ファイナンス」

 セーター首相は7月19日、金融ハブを目指す政策の開始を宣言した。同日、財務省で執り行なった式典で、タイを世界の金融ハブにするとした「イグナイト・ファイナンス」政策を発表した。
 首相は基調講演「Ignite Finance: Thailand’s Vision for a Global Financial Hub」で、タイをこの地域の金融ハブに変えることで、経済の構造が変わり、すべての人に多大な利益をもたらすと述べた。銀行や金融機関だけでなく、資本、知識豊富な個人、ナレッジベースの組織をタイに誘致する戦略。
 目標とするのは、①銀行業②証券業③先物取引④デジタル資産業⑤保険業の5つの分野。成功の鍵を握るのは将来に備えた法制づくりで、柔軟性、透明性があり、ビジネスに役立つ法律を制定する必要性を強調した。 「イグナイト・タイランド」政策のもと、免許申請から監督行政まで含む包括的な枠組みを定める法案を起草する。
 首相はタイの産業構造を高度化し、ナレッジベースの産業にシフトしていくためには外資の誘致が必要だと指摘した。世界の金融機関がタイを進出先の第一の候補と考えるよう、新たな優遇特典を設ける。外国人企業の設立や事業運営を解禁し、外国人の就労ビザ発給にも便宜を図る。税制面でも他の世界の金融セクターと同等の特典を用意し、補助金制度も設ける。
 将来に向けたエコシステムの構築では、金融分野のビジネスの重要な基盤となる法的枠組を開発する。デジタル資産業法を制定したように、新しいタイプのビジネスに対応した業法を制定していく。
 財務省は金融機関システムに関する政策も改める。タイ中央銀行と共同で取り組み、財務省布告の形で発表する。仮想銀行(バーチャルバンク)免許の交付に加え、国家信用保証機関(National Credit Guarantee Agency/NaCGA)を設立し、金融機関システムが効率的で安定し、人々のニーズに応えるよう、公正な競争を促進することで、個人や中小企業の金融アクセス機会を増やす。
 首相が示す国の産業構造の変革は、製造業から高い価値を持つサービス業へのシフトを意図している。タイの金融業は、製造業と観光業の成長に支えられて堅固な地位を築いている。しかし産業構造を迅速に変革するためには、国内経済だけに依存することはできない。新たな「ハイ・ヴァリュー産業」を迎え入れる必要があるとし、そのような業界の一つが「金融、投資、銀行業界」だと指摘した。
 首相は、世界各国の企業経営者との意見交換から、金融ビジネスのための明確な法律と公正な法の執行に加え、十分なファシリティを求めていることが分かったと述べている。ファシリティの面では、空港、ホテル、宿泊施設、レストラン、病院、インターナショナル・スクールなどはワールドクラスになっている。金融ハブとしてのエコシステム全体には銀行、証券、仮想銀行だけでなく、経営戦略コンサルタント、法律顧問、テクノロジー・コンサルタントなど、多くの専門サービス部門も含まれ、タイにはこれら専門サービスの成長ポテンシャルがあると見ている。
 式典にはピチャイ・チュンハワチラ副首相兼財務相、チュラパン・アモンウィワット財務副大臣、パオプーム・ローチャナサクン財務副大臣のほか、財務省高官、タイ中央銀行、証券取引等監視委員会事務局、保険業監督委員会事務局、その他国内外の金融機関の代表も出席した。

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