パオプーム財務副大臣=自動車物品税の改正に言及
パオプーム・ローチャナサクン財務副大臣が自動車の物品税構造の改正に言及している。11月5日に物品税局を訪れ、環境、社会、健康、ガバナンスに焦点を当てた物品税改革案を提示した[=写真左]。その中で自動車の物品税構造は世界的な需要動向に合わせて修正する必要があると指摘した。バッテリーEV(BEV)一本やりの現在の自動車物品税制は答えではないかもしれないと述べ、税制全体のバランスを維持する必要があるとした。
パオプーム副大臣は物品税制のメカニズムを利用して投資を刺激し、自動車産業全体をサポートすると述べている。自動車や部品の生産は雇用も含め中小企業から大企業までを結ぶサプライチェーンを持っている。物品税をツールの一つに使ってプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)、バッテリーEV(BEV)、燃料電池車(FCEV)生産への投資のインセンティブを生み出す一方で、エンジン車とハイブリッド車の生産基盤も維持する。短期的に物品税収を失うことになったとしても長期的な自動車産業の再編を支援すると述べている。
2022年に決定された自動車の物品税構造では、ハイブリッド車(HEV)とPHEVの物品税率は2026年から2年間にわたって現行税率よりも引き下げられるが、2030年以降は現行税率を上回ることになっている。その後、国家EV政策委員会は今年7月26日、「EV産業への移行支援策」として、HEVの物品税率の引き下げを決定している。
政府はEVの生産拠点化を進めるため、バッテリーEVの税率を低く抑え、販売補助金も出しているが、国内市場はここに来てハイブリッド車の売れ行きのほうが好調。世界的にもEVシフトの動きに変化が見られ、欧州は35年までにエンジン車の販売を禁止するとした方針を撤回し、EV以外の選択肢を模索している。
タイ政府はタイを東南アジアにおけるバッテリーEV/電動二輪車の生産拠点とするため、これら環境負荷の少ない自動車の物品税率を低く抑えている。これに対し、エンジン車は二酸化炭素排出量に基づいて税率が定められており、E10またはE20燃料を使用し、二酸化炭素の排出量が1㌔㍍走行あたり100㌘以下の車は25%、E85または圧縮天然ガス(CNG)燃料を使用する車は20%、1㌔㍍走行あたり200㌘以上の二酸化炭素を排出する車は排気量に応じて30〜35%の物品税が課税されている。
タイ政府は2022年2月22日の閣議で、新たな物品税率を決定している。EVの振興を目的とするもので、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)の乗用ピックアップ車の物品税率は10%(2035年12月末まで有効)、バッテリーEVの乗用は2%、エコカーは同14%(2023年12月末までだが、排気量、二酸化炭素排出量、安全基準を満たす乗用車は10~12%で、2025年12月末まで有効)、PHEVのダブルキャブ・ピックアップトラックは5%、バッテリーEVのピックアップトラックは25年12月末まで0%、26年1月1日から35年12月末までは2%、燃料電池(FC)のピックアップトラックは0%にすることを決定し、実施に移している。
一方でエンジン車は低公害車の生産を奨励する目的から2026年から2030年にかけて物品税率を変更することになっている。乗用車は26年1月1日から27年末までは1㌔㍍あたり100㌘以下のCO2を排出するエンジン車で13%、28年1月1日から29年末までは14%、30年1月1日以降は15%とすることが決まっている。
1㌔㍍走行あたり200㌘以上の二酸化炭素を排出する乗用車のエンジン車では26年に34%、28年に36%、30年以降は38%が課税される。エンジン車の物品税率は13~38%の幅があることになる。
エンジン車のピックアップは26年以降、18~50%に引き上げられ、軽油に国産バイオディーゼルを20%混合したB20バイオディーゼルを使用できる車両の場合でも16~50%になる。
ハイブリッド車(HEV)の場合、税構造は26年から30年に徐々に引き上げになる。 1㌔㍍あたり100㌘以下のCO2を排出するHEVは、26年に6%が課税され、28年には8%、30年には10%が課税される。現在のHEVの税率は8%。1㌔㍍あたり200㌘以上のCO2を排出するHEVは26年に24%(現在は26%)、28年に26%、30年以降は28%に上昇することになっていた。
HEVの物品税優遇は継続
国家EV政策委は今年7月の会議で、CO2排出量が1㌔㍍走行につき100㌘未満のハイブリッド車の物品税率は6%、100㌘超120㌘以下では9%に引き下げることを決めている。ただしこの税率の適用を受けるためには24~27年にかけて30億バーツ以上の追加投資が必要。また国内で生産または組み立てられた主要部品を使用することも条件になっている。26年からは国産バッテリーを使用し、その他の重要部品も28年以降は国内で生産または組み立てられたものを使用する必要がある。重要部品は、①トラクション・モーター②減速器③インバーターの3点。中程度に重要な部品は①BMS②DCU③空調システム用コンプレッサー④電気回路ブレーカー⑤DC/DCコンバーター⑥高電圧ハーネス⑦バッテリー冷却システム⑧回生ブレーキシステムの8点。
50億バーツ以上を追加投資する場合、重要部品3点で国産品を使用するか、重要部品2点と中程度部品2点、重要部品1点と中程度部品4点を選ぶことができる。追加投資額が30億バーツ超50億バーツ以下の場合は重要部品3点を国内で調達しなければならない。
このほかにも先進運転支援システム(ADAS)は、①AEB(Advanced Emergency Braking System:衝突被害軽減制動制御装置)②FCW(Forward Collision Warning:前方衝突警告)③LCAS(Lane Keep Assist System:車線維持支援システム)④LDW(Lane Departure Warning:車線逸脱警報)⑤BSD(Blind Spot Detection:死角検出システム)⑥ACC(Adaptive Cruise Control System:アダプティブ・クルーズ・コントロール)の6つのシステムのうち少なくとも4つが搭載されている必要がある。
タイ中央銀行の理事長人事=キティラット氏を指名
タイ中央銀行の次期理事長を選ぶ指名委員会は11月11日に開いた非公開の会合で、キティラット・ナ・ラノーン氏[=写真]を選出した。この日の会議は午前10時に始まり、約5時間を費やしている。キティラット氏選出の結果は公式発表されていないが、複数の関係者が認めている。閣議の承認後、国王による任命と官報掲載で正式に決まる。
インラック政権で財務相、商業相を務めたキティラット氏は与党プアタイ党の重鎮の一人で、セーター前政権では首相顧問も務めた。次期中銀理事長には財務省が推薦した。
中銀の理事長は役員集会の議長を務める。理事会はタイ中央銀行法第7条に基づく目的を達成するため、中銀の業務を監督する権限と義務を有するが、中銀の金融政策委員会、金融機関政策委員会、決済システム委員会を指揮したり、関与したりする権限はない。理事会は勅任の理事長と中銀総裁が就く副理事長、中銀副総裁3人、国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局長、財政局長、その他有識者5人が理事を務める。
政界に近い人物の理事長就任には、エコノミストや中銀OB・OG、社会から反対の声が上がっている。
キティラット氏を送り込んだプアタイ党の狙いは、①中銀の独立性に修正を加える中銀法改正の推進、②金融機関再建開発基金(FIDF)債務の国から中銀への移管、③外貨準備の活用にあると見られている。97年経済危機で破綻した金融機関の処理で生じたFIDFの負債は国が肩代わりしているが、中銀に移すことで公的債務にカウントされなくなり、政府財政の自由度が増す。2000億㌦を超える外貨準備をソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)を設置して運用すれば、政府のプロジェクトに活用できる。
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