2025年1月6日(月)号

タイ中銀の月例経済金融報告=24年12月27日の発表より

 11月のタイ経済は前月比で減速した。前月に政府の現金給付で消費の伸びが加速していた反動から民間消費が収縮した。これに一致して商業部門の活動も鈍化した。民間投資は設備投資と建設投資の双方で減少に転じた。観光関連のサービス業は引き続き拡大した。また物品輸出も増加した。自動車とアグロインダストリーの輸出が拡大した。政府支出は経常的経費と投資的経費の双方で引き続き増加した。工業生産は底ばいし、前月比で収縮した。在庫が高水準にあることが響いている。また一部の工業部門は構造的問題と競争の激化に直面している。
 経済安定性では一般インフレ率が前月比で上昇した。比較ベースとなる前年同月の数値が政府の援助措置により低くなっていたエネルギーの物価が上昇したことによる。他方、コアインフレ率は小幅上昇した。これまでの時期の旱魃の影響から原料コストが増えた食品の物価が上昇した。労働市場は総じて前月比で安定している。観光関連サービス業の雇用は上向いているが、自動車販売や建材製造では雇用が減少した。経常収支は黒字が増加した。サービス・所得・移転収支の改善と貿易黒字の拡大による。
 前月比で見た11月の景気動向の詳細は次のとおり。
 民間消費の指標は、ほぼすべてのカテゴリーにおいて季節調整済み前月比で減少した。経済刺激策(1万バーツの現金給付)による反動減で、特に燃油を中心に非耐久財の消費が減少した。耐久財の指標では二輪車の新規登録台数が前月に加速していた反動から減少した。乗用車とピックアップ・トラックの指標はやや上向いたが、依然として低位にとどまっている。サービス消費は横ばい。消費者信頼感指数は改善を続けている。北部と東北部の洪水が終息したことで、国内旅行が上向いたほか、政府部門の経済刺激策が寄与した。
 民間投資の指標は季節調整済み前月比で収縮した。設備投資の指標では商用車の登録台数が減少した。特にピックアップ・トラックとトラクターが落ち込んだ。資本財輸入も前月に加速していた反動で減少した。このほか建設投資も減少に転じた。建材販売と建設許可面積の指標が下落した。建設許可面積は特に住宅と工業目的で減少した。
 外国人観光客数は季節調整済み前月比で増加した。特にインド、日本、中国からの観光客が増えた。マレーシアからの観光客はタイ南部の洪水の影響で減少した。季節調整済みの観光業の収入は前月に加速していた反動から減少した。またこの月には1人あたり観光支出の大きいロシアからの観光客が減った。
 金地金を除いた輸出額は季節調整済み前月比で増加した。主に自動車、アグロインダストリーの輸出が伸びた。自動車では乗用車のオーストラリア、アセアン向け輸出が増加した。アグロインダストリーでは中国向けのゴムの輸出が増えた。ただし米国向け輸出は、機械機器、エレクトロニクス、電機など多くの物品カテゴリーで減少した。中でも太陽電池パネルの輸出が減少した。米国の輸入関税引き上げの影響を受けた。
 金地金を除いた輸入額は季節調整済み前月比で減少した。原材料・中間財では原油と天然ガスの輸入が減少した。また電機・電子部品の輸入も減少した。消費財の輸入は前月に加速していた反動から減少した。中国からの携帯電話の輸入が減少した。非耐久財では医薬の輸入が減少した。資本財では中国からコンピュータの輸入が増加した。
 移転金を除く政府支出は前年同月比で増加した。経常的経費では年金・一時金や公務員の医療費予算の執行が増えた。投資予算は前年同月の数値が予算法の成立の遅れにより低位にとどまっていたこともあって増加した。多くは運輸・インフラ分野での予算執行による。他方、国営企業の投資支出は主に運輸分野のプロジェクトの支出増から微増した。
 工業生産指数は季節調整済み前月比で収縮した。食品・飲料では砂糖の生産が反動減となった。在庫が高水準にある飼料の生産も減少した。自動車の生産は乗用車とピックアップ・トラックで減少した。ただし石油や集積回路など一部の製品の生産は微増した。
 経済安定性では、一般インフレ率は前月比で上昇した。エネルギーの物価の上昇によるもので、前年同月に政府の援助措置があったローベース効果による。また石油の価格もガソリンで上昇した。一方で生鮮食品の物価は下落した。天候に恵まれた野菜は出荷量増から値下がりした。コアインフレ率は小幅上昇した。主に食品の物価が上昇した。これより前の時期の旱魃による原料コストの上昇というコスト・プッシュによる。労働市場は総じて前月から安定した。観光関連サービス業における雇用の増加が、自動車や建材分野の雇用の減少を穴埋めした。経常収支は黒字幅が増加した。観光業のサービス収支の改善によりサービス・所得・移転収支が均衡したことに加え、輸入の減少で貿易黒字が増加した。ビジネスセクターの資金調達は総じて前月から増加した。持ち株会社と製造業で融資による資金調達が増加したほか、サービス業や建設業を中心に債券発行による調達額も増えた。サービス業は資本市場を通じて事業拡張のための資金を調達した。11月のバーツの対ドル・レートは平均で下落した。米国の大統領選挙の結果を受け、米連邦準備制度理事会による政策金利の下げ幅が不透明になったことに加え、市場は主要国の政策の不透明さがタイの商業部門や観光業に及ぼす影響を懸念した。

未来産業の投資誘致で=法改正と規制緩和を推進

 ペートンターン政府は今年、5つの主要な「未来産業」への投資を促すため、法律や規制を改正してビジネス環境を改善させる計画だ。ヂラユ・フアンサップ政府報道官[=写真]が1月2日の年初会見で明らかにした。経済成長率を3%以上に引き上げるための投資振興計画の一環で、首相の政策顧問のプロムミン・ルートスリデート氏が立案した計画に基づいていると説明した。


 ヂラユ氏によれば、5つの未来産業は①データセンター②AI③EV④精密農業⑤フードテックで、これら産業に今年だけで8000億バーツ以上の投資を見込んでいる。規制緩和に加えサプライチェーンの支援と振興を通じて外資を呼び寄せる。データセンターでは、すでにアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、グーグル、マイクロソフト、ファーウェイなどがタイでの投資を開始している。さらなる投資を引き付け、ビジネスを円滑に進めることができるよう、時代遅れの法律や規制は改正または廃止すると述べた。ヂラユ氏によれば、首相はビジネス環境を大幅に改善する必要があり、それが経済成長を押し上げる重要な手段になると考えている。

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[経済ニュース]

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[閣議決定]
24年12月24日

[商品市場]
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[金融市場]
外為相場

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