2025年1月14日(火)号

複合娯楽施設法案を閣議決定=カジノ合法化で観光業を活性化

 ペートンターン首相[=写真]は1月13日に開いた閣議後の会見で、財務省が提出した「複合娯楽施設事業法」案を原則認可したことを明らかにした。内閣法制委員会事務局が審議した後に国会に提出する。


 法案はカジノを含む複合娯楽施設事業の国家政策委員会と同監督委員会の設置、事業運営許可の基準などを定める内容。観光業の効率を高め、国内投資を促進し、違法ギャンブルの問題を解決することが目的だと説明した。首相は将来的に社会全体に良い影響を与えることを期待していると述べた。また、この取り組みは持続可能な観光や「人工の観光地(Man-made Destination)」の推進という政府の政策にも沿うと付け加えた。詳細は財務省が追って発表するとした。
 シンガポールがカジノの設立により観光業を強化した例を挙げ、年内の法案成立に向けて最善を尽くすとしている。組織犯罪との関連についての記者団の問いには、効果的な法の執行がなされれば、ギャンブルの合法化は組織犯罪の問題を解決し、国家財政にも貢献すると答えた。また「透明性を確保できれば、国にとって利益になる。関係省庁が詳細を説明し、皆が全体像を把握できるようにする」と述べた。
 チュラパン・アモンウィワット財務副大臣は、この法案がショッピングモール、ホテル、スポーツアリーナ、テーマパークなどを含む統合型施設の枠組みを定めるもので、政府の「人工観光地」政策に沿ったものだと説明した。世界中に成功例があり、カジノを含む複合娯楽施設は海外からの観光客数を5~10%増やし、オフシーズンの観光輸入は少なくとも13%増え、9000~1万5000人の雇用を創出すると見積もった。国には120億~400億バーツの収入をもたらすと試算した。
 法案は国会提出前に内閣法制委員会が政府方針に沿って精査する。パコーン・ニラプラパン事務局長は、法制委がこの法案に反対していないが、法案の内容が下院委員会の報告に基づいているため、政府の政策目標に合致しない部分があると説明している。内容の見直しが必要で、精査には約2か月を要する見通し。またこの法案が違法ギャンブルを直接的に解決することを目的としていないことも指摘した。違法ギャンブルは別の法律で規制されるとした。
 ギャンブル合法化には反対意見も多い。国家経済社会開発評議会(NESDC)事務局は、ギャンブルの収入が生産には貢献しないことから、経済的価値を創出するものとは見なされないと指摘。カジノの経済的な利益に疑問符をつけている。社会的な負の影響もあるため、同法案に関する徹底的な調査と各界からの意見収集を怠らないよう求めた。
 反ギャンブル活動を展開するストップ・ギャンブル基金は、法案の中身がシンガポール・モデルから大きく逸脱し、ホテルやショッピングモールなどを軽視し、カジノにのみに焦点を当てていると批判した。また法の制定前に負の影響を慎重に考慮するよう求める声明を発表している。
 これに対し、経済界は国内観光と経済に大きな推進力をもたらすと期待している。タイ商業会議所大学のタナワット・ポンウィチャイ学長は複合娯楽施設が一部の国で1兆バーツを超える収入を生み出していることを指摘している。アセアンでもシンガポール、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ラオス、ミャンマーで、50億バーツから1000億バーツ以上の収入があり、タイは潜在的な収入を失っているとした。マカオを訪れる人はギャンブルだけでなくエンターテインメントを楽しむ者も多いことを示し、複合娯楽施設はギャンブルだけではない効果的な運営が求められると指摘した。
 デュシット・ホテルズ&リゾーツのシラデート・ドナワニック副社長は観光業と経済の振興に貢献すると述べ、カジノ合法化を支持している。ただし政府が効果的に管理し、規制できるかどうかが重要で、規制なしで大麻を合法化した際に見られたような問題を避ける必要があると強調した。

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