26日にMPC政策決定会合=首相が講演で利下げ要請
政府と民間企業部門は、2月26日に開催されるタイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)の政策決定会合での政策金利の引き下げを求めている。ペートンターン首相は国民や中小事業者の流動性の確保を理由に、商業銀行に対して融資を増やし、投資を促進するよう求めた。タイ商業会議所会頭は事業者の金融コストの削減につながる利下げを支持し、インフレは利下げを妨げる要因ではないと主張した。中銀は最新の経済指標を基に金利を下げるかどうかを判断する。
MPCは2月26日に今年最初の会合を開く。現在の政策金利は年2.25%。政府や民間企業部門からは金利を引き下げるべきだという声が高まっている。
アジア各国の政策金利と比較すると、タイの金利は相対的に低い水準にある。インドの政策金利は年6.50%、インドネシアとフィリピンは年5.75%、中国は年3.10%、韓国、ベトナム、マレーシアは年3.00%であり、日本だけがタイよりも低い年0.50%となっている。今年1月から2月にかけて、インドネシア、欧州中央銀行、カナダ準備銀行が政策金利を0.25%幅で引き下げている。
ペートンターン首相は2月19日にシリキット国際会議場でマティチョン紙が開催したセミナー「Matichon Leadership Forum 2025 Trust Thailand」の開会式に出席し、基調講演で利下げを求めた。首相はタイ経済の全体像、潜在力、成長の機会について述べた。
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タイ経済は昨年、様々な課題や困難に直面した。首相は一例として国内の資金流動性が低下していることを示した。足元では、タイ経済に前向きな兆しも見え始めている。2024年の経済成長率は2.5%に達し、2023年の2.0%から加速した。政府の経済刺激策、特に消費促進策が国内需要の拡大につながっている。外国人観光客数はコロナ後で最も多くなった。首相は、政府のビザ免除策が観光客の利便性を向上させたほか、タイを訪れる人々の安全と安心感を高めたことが世界中からの観光客の増加につながったと述べた。
首相は今年の成長率目標を3%に設定したことを明らかにした。成長の原動力として、民間投資の増加や消費の回復を見込んでいる。政府も投資予算を有効活用し、インフラの整備や大規模プロジェクトへの投資を推進することで、雇用を創出し、資金循環を活性化させる。
タイの成長率が他のアセアン諸国に比べて低いとの指摘については、国内外の要因を詳細に分析する必要があると述べた。タイの産業は長年停滞しているのに対し、近隣諸国は着実に成長している。マレーシアは半導体産業への投資を継続的に拡大し、ベトナムはソフトウェア開発や人材育成に注力しているのに対し、タイはこれらの分野の開発がまだ本格化していないと指摘した。
首相は資金流動性や経済システムの問題にも言及した。特に、銀行融資の減少が経済活動の停滞を招いている。中小企業の資金調達が難しくなっていることを指摘した。首相は短期的な経済支援策として、商業銀行に個人事業者への貸出強化と金融支援を要請しており、中銀には金利の引き下げを検討するよう求めていることを明らかにした。
タイ商業会議所(TCC)のサナン・アンウボンクン会頭は、首相の金利引き下げ要請を支持し、「現在の経済状況では金融コストの削減が不可欠」と述べた。タイ経済は低インフレと消費の低迷に直面しており、追加の景気刺激策が必要だとした。特に、中小企業にとっては、低金利が事業拡大や資金管理に貢献するため、金融緩和が望まれると述べた。低金利政策と併せて、融資を受けやすくする施策も求められると付け加えた。
エコノミストの多くは今年上半期に政策金利を引き下げる可能性は高まっていると分析している。昨年の経済成長率は2023年から加速したものの、市場や中銀が予測した2.7%には届かなかった。物品輸出の拡大、観光業の回復、政府の経済刺激策といったプラス要因にもかかわらず、消費者の節約志向は強まり、自動車や住宅の購入の低迷が経済成長を抑制する要因となった。
国家経済社会開発評議会(NESDC)は今年の経済成長率予測を2.3~3.3%に据え置き、中央値を2.8%としている。タイは米国の関税引き上げの対象となる可能性があり、経済成長にとって新たなリスクとなっている。
フィッチ・ソリューションズのBMIリサーチは、成長率が予測を下回ったことで、MPCの次回会合で0.25%幅での利下げの可能性は高まったと指摘している。BMIは、政府の財政出動の拡大を背景に今年のタイの成長率を3%と予測している。ただし、米国と中国の経済成長が減速するとみられ、タイの輸出が好調を維持できるかどうかは不透明だと指摘した。
メイバンクは今年の経済成長に影響を与える主要なリスク要因として、米国の関税政策、経済の不確実性による直接投資の遅れ、信用収縮による住宅投資と個人消費の低迷を挙げた。特に米国の関税政策に関しては、現在、タイが米国製品に課している加重平均の関税率が6.2%であるのに対し、米国がタイ製品に課している関税率は0.85%にとどまっていることから、米国による関税引き上げは避けられないとの見方が強い。
メイバンクは、中銀が26日の会合で金利を据え置くと予想したが、声明では上半期中に0.25%幅の利下げを行なう方向性を示す可能性が高いとみている。ダヌチャー・ピチャヤナンNESDC事務局長は、現在の金利を維持し、経済がさらに悪化した際の政策手段として利下げ余地を残しておくべきとの考えを示している。
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