2025年5月20日(火)号

第1四半期のタイ経済は3.1%成長=政府投資と輸出が牽引

 国家経済社会開発評議会(NESDC)が5月19日に発表したところによると、2025年第1四半期(1~3月)のタイ経済は前年同期比で3.1%成長を記録し、前四半期の3.3%に続く堅調な伸びとなった。季節調整済みの前四半期比では0.7%の拡大。成長を主に支えたのは政府投資支出と物品輸出で、民間消費は伸び悩み、民間投資は収縮した。[9-13頁にプレスリリース全文]
 支出面では、民間消費が前年の3.4%増から2.6%増へと減速した。食品・飲料を中心とする非耐久財消費が鈍化し、サービス支出もホテル・医療などの支出が落ち着いたことで4.5%増にとどまった。耐久財は引き続き減少傾向にあり、自動車の消費は2.0%減となった。一方、消費者信頼感指数は前期から上昇し、51.5ポイントを記録した。
 政府消費支出は3.4%増で、前期の5.4%から減速した。物品・サービス購入費は9.8%増、社会保障関連移転支出は6.0%増、給与・報酬費は0.9%増となった。経常予算の執行率は23.6%で、前年同期の水準を上回った。
 総固定資本形成は4.7%増。政府投資は前年同期比26.3%増となり、3四半期連続で高い伸びを記録した。国営企業の投資は減少したが、中央政府による予算執行が牽引した。民間投資は0.9%減。設備投資はわずかに減少幅が縮小したが、建設投資は引き続き低調だった。
 物品輸出額は804億㌦を超え、前年同期比15.0%増と、過去13四半期で最も高い伸びを示した。工業製品が好調で、特にコンピュータが130.8%増、周辺機器が50.4%増、天然ゴムが32.4%増となった。一方、米やドリアン、石油製品などの輸出は減少した。輸出先では米国、中国、アセアン、EU向けが拡大し、オーストラリアと香港向けは縮小した。
 輸入額は前年同期比7.1%増の722億㌦。輸入数量と価格がともに上昇し、貿易収支は82億㌦の黒字となった。
 生産面では、農業と製造業、卸小売業で拡大がみられた。農林水産業は5.7%増で、気候条件や水資源の好転により主要作物の生産が回復した。籾米は22.6%、果物は16.5%、サトウキビは10.0%の増加。一方、キャッサバやパーム油などは減少した。農産物価格は全体として1.0%下落したが、農家の所得指数は3.7%増で7四半期連続の拡大となった。
 製造業は0.6%の成長を記録。輸出依存度が高い分野でプラス成長が続き、コンピュータや水産缶詰、ゴム製品が伸びた。国内向け製造業は清涼飲料やコーヒー製品などの減少により低調だった。設備稼働率は60.93%と、前期より改善したが、前年同期をわずかに下回った。
 観光業は引き続き回復傾向にある。外国人観光客数は約955万人で、コロナ前水準の93.8%に相当した。観光関連収入は13.7%増の7230億バーツ。国内旅行も増加し、タイ人旅行者による収入は16.1%増加した。平均客室稼働率は74.9%で、前期より上昇した。
 卸小売業は4.7%増。家庭用品や機械などの販売が好調で、小売店における売上も堅調だった。自動車関連の販売は依然として減少しているものの、保守・修理サービスは増加に転じた。
 運輸・倉庫業は5.4%増。全ての輸送手段でサービス提供量の伸びが鈍化し、陸上輸送や航空、水上輸送も緩やかな拡大にとどまった。
 建設業は16.2%増と高水準を維持した。中央政府の建設活動が大きく伸びる一方、国営企業は13四半期ぶりに減少した。民間建設は引き続き減少傾向で、特に住宅・非住宅建設が縮小した。例外的に工場建設のみが増加を続けた。
 失業率は0.89%とほぼ横ばい。インフレ率は1.1%、コアインフレ率は0.9%となった。経常収支は105億㌦の黒字、外貨準備高は3月末時点で2453億㌦に達した。政府債務は12.08兆バーツで、GDP比64.4%となっている。

◆2025年の経済成長率は1.8%の見通し
 今年通年の経済成長率は1.3〜2.3%の範囲で推移する見込みで、中央値は1.8%と予測されている。政府支出の増加が主要な成長要因とされ、失業率やインフレ率の低さ、観光業の回復なども支援材料となる。一方、民間部門の債務負担の重さや、外需の不透明さが成長の制約となる見通し。
 民間消費は前年比2.4%増を予測し、前回の3.3%から下方修正された。政府消費は1.3%増を維持する見込み。投資は0.9%増と予測される。政府投資は5.5%増と堅調な伸びを見込む一方、民間投資は0.7%減と予測した。
 物品輸出は1.8%増にとどまり、世界経済や米国の貿易政策による不確実性が背景にある。財・サービス輸出は3.5%増、輸入は2.3%増が見込まれ、いずれも前回予測から下方修正された。
 貿易収支は184億㌦の黒字を見込み、サービス収支の改善とあわせ、経常収支は137億㌦、GDP比で2.5%の黒字と予測されている。
 インフレ率は平均0.0〜1.0%、中央値は0.5%と見込まれており、電力料金引き下げや原油価格の設定条件の変更が影響している。

タイ・ベトナム首脳会談=2030年までに貿易額250億㌦

 5月16〜17日にベトナムを訪問したペートンターン首相は、ベトナムとの経済関係強化で合意した。両国は、2030年までに二国間貿易額を250億㌦に引き上げる目標を設定した。今回の公式訪問では、首相の実父であるタクシン元首相が提唱したタイ・ベトナム閣僚合同交流会(JCR)の第4回会合が、約20年ぶりに開催された。
 首相は16日、ハノイ市で、ベトナム首相のファム・ミン・チン氏[=写真右]と会談し、両国間の合意文書や書簡8通の交換式典に共同で立ち会った。タイ商業省とベトナム工業貿易省による経済・貿易協力に関する覚書、麻薬対策と国際的麻薬取引ネットワークの壊滅に向けた周辺国との協力強化事業に対する支援予算の引き渡し、タイ輸出入銀行とベトナム投資開発銀行によるグリーンビジネスと先端技術産業への融資支援に関する覚書、コンケン大学とFPT大学の半導体分野における人材育成協力に関する意向書、ベトナム工業貿易省とセントラル・グループによる2026〜2028年の協力プロジェクトに関する覚書、WHA社とフンイエン省の覚書、WHA社に対するタインホア省による投資許可証の発給、アマタ・ベトナム社とフート省の覚書に立ち会った。


 合意文書の交換後、両首相による共同記者会見が行なわれた。ペートンターン首相は今回の公式訪問に際しての温かい歓迎に謝意を示し、両国間の枠組みである「JCR会合」の共同議長を務めたことに言及した。また、今回の訪問でタイとベトナムは関係を「包括的戦略的パートナーシップ」へと格上げしたと述べ、世界的な不確実性が高まる中での重要な節目であると強調した。
 ヂラユ・フアンサップ政府報道官によれば、会合では治安、貿易・投資、観光、交通・運輸、持続可能な開発、草の根交流など、多岐にわたる分野で意見交換が行なわれた。
 首脳会談では、首脳レベルの往来を定期的に継続することを確認した。安全保障分野の協力強化、とくに麻薬対策、コールセンター詐欺、オンライン詐欺、人身売買、違法漁業への対応について、具体的な協力に言及した。
 貿易・投資分野では、サプライチェーン、地域経済、グリーン経済の3分野における両国間の協力を促進する「スリー・コネクト」政策方針が採択された。また、2030年までに年間250億㌦の貿易額達成を目指すことで一致した。2023年の実績は約200億㌦であり、ベトナムにとってタイはアセアン最大の貿易相手国となっている。今後は二国間合同通商委員会を設立し、目標達成に向けて協力体制を強化する方針だ。
 このほか、家畜や農産物の取引拡大、ベトナムを経由したタイ・中国間の貿易促進についても合意がなされた。ペートンターン首相は、タイ資本によるベトナムへの投資に対する同国政府の支援に謝意を示すとともに、ベトナム資本のタイへの投資を呼びかけた。
 交通・運輸分野では、タイ東北部とベトナムを結ぶ直行便の開設、ラオスを経由する陸路交通網、カンボジアを経由する海上輸送ルートの整備についても協議が行なわれた。
 観光面では、現在、タイからベトナムを訪れる観光客が年間100万人、ベトナムからタイを訪れる観光客が約50万人となっており、今後さらに相互訪問を拡大する方針を確認した。
 治安分野では、国境を越えた犯罪の増加に対応するため、麻薬取引、コールセンター詐欺、オンライン詐欺、人身売買、密漁といった問題の撲滅に向け、両国の治安当局による協力強化が話し合われた。
 また、デジタル・サービス分野においては、両国間でQRコードによる決済を可能にするシステムの開発を進めることでも合意している。
 両国は来年、国交樹立50周年を迎える。この節目を機に、ベトナム政府は年末に開催予定のメコン・ランサン・サミットにタイを招待している。
 首相は16日、ハノイ市で、ベトナム首相のファム・ミン・チン氏[=写真右]と会談し、両国間の合意文書や書簡8通の交換式典に共同で立ち会った。タイ商業省とベトナム工業貿易省による経済・貿易協力に関する覚書、麻薬対策と国際的麻薬取引ネットワークの壊滅に向けた周辺国との協力強化事業に対する支援予算の引き渡し、タイ輸出入銀行とベトナム投資開発銀行によるグリーンビジネスと先端技術産業への融資支援に関する覚書、コンケン大学とFPT大学の半導体分野における人材育成協力に関する意向書、ベトナム工業貿易省とセントラル・グループによる2026〜2028年の協力プロジェクトに関する覚書、WHA社とフンイエン省の覚書、WHA社に対するタインホア省による投資許可証の発給、アマタ・ベトナム社とフート省の覚書に立ち会った。
 合意文書の交換後、両首相による共同記者会見が行なわれた。ペートンターン首相は今回の公式訪問に際しての温かい歓迎に謝意を示し、両国間の枠組みである「JCR会合」の共同議長を務めたことに言及した。また、今回の訪問でタイとベトナムは関係を「包括的戦略的パートナーシップ」へと格上げしたと述べ、世界的な不確実性が高まる中での重要な節目であると強調した。
 ヂラユ・フアンサップ政府報道官によれば、会合では治安、貿易・投資、観光、交通・運輸、持続可能な開発、草の根交流など、多岐にわたる分野で意見交換が行なわれた。
 首脳会談では、首脳レベルの往来を定期的に継続することを確認した。安全保障分野の協力強化、とくに麻薬対策、コールセンター詐欺、オンライン詐欺、人身売買、違法漁業への対応について、具体的な協力に言及した。
 貿易・投資分野では、サプライチェーン、地域経済、グリーン経済の3分野における両国間の協力を促進する「スリー・コネクト」政策方針が採択された。また、2030年までに年間250億㌦の貿易額達成を目指すことで一致した。2023年の実績は約200億㌦であり、ベトナムにとってタイはアセアン最大の貿易相手国となっている。今後は二国間合同通商委員会を設立し、目標達成に向けて協力体制を強化する方針だ。
 このほか、家畜や農産物の取引拡大、ベトナムを経由したタイ・中国間の貿易促進についても合意がなされた。ペートンターン首相は、タイ資本によるベトナムへの投資に対する同国政府の支援に謝意を示すとともに、ベトナム資本のタイへの投資を呼びかけた。
 交通・運輸分野では、タイ東北部とベトナムを結ぶ直行便の開設、ラオスを経由する陸路交通網、カンボジアを経由する海上輸送ルートの整備についても協議が行なわれた。
 観光面では、現在、タイからベトナムを訪れる観光客が年間100万人、ベトナムからタイを訪れる観光客が約50万人となっており、今後さらに相互訪問を拡大する方針を確認した。
 治安分野では、国境を越えた犯罪の増加に対応するため、麻薬取引、コールセンター詐欺、オンライン詐欺、人身売買、密漁といった問題の撲滅に向け、両国の治安当局による協力強化が話し合われた。
 また、デジタル・サービス分野においては、両国間でQRコードによる決済を可能にするシステムの開発を進めることでも合意している。
 両国は来年、国交樹立50周年を迎える。この節目を機に、ベトナム政府は年末に開催予定のメコン・ランサン・サミットにタイを招待している。

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