相互関税で輸出に最大2750億バーツ損失=UTCCが来年の成長率への影響を警告
タイ商業会議所大学(UTCC)は、米国による19%の相互関税の影響で、2026年のタイの輸出額は約2750億バーツ減少するとの見通しを示した。タナワット・ポンウィチャイ学長によると、米国の関税政策は今年の残り5か月間で1150億バーツの輸出に影響を及ぼし、経済成長率を0.62ポイント押し下げる可能性がある。この見積もりには、関税引き上げによる直接的な損失1070億バーツに加え、グローバルなサプライチェーンを通じた間接的損失270億バーツも含まれる。一方で、貿易の迂回効果により、タイは189億バーツの利益を得る可能性もあるとしている。UTCCは2025年の経済成長率を1.5~2.0%(中央値1.7%)で据え置いた。
2026年については、関税の引き上げによる直接的な損失が2560億バーツ、サプライチェーン経由の間接的な損失が647億バーツと試算、輸出収入に対するの損失は合計で2750億バーツ(GDPの1.48%)に達する見込み。一方で、貿易の迂回効果による利益は453億バーツと推計した。
UTCCは、電気・電子機器、機械・同部品、ゴム製品といった米国市場への依存度が高い産業が特に影響を受けやすいと指摘した。ただし、タイの米国向け主要輸出品目10品目と競合国の状況を比較すると、マレーシア、インドネシア、フィリピン、カンボジアと同程度の関税を課されており、特別に不利とは言えない状況。これに対し、シンガポールは10%、日本と韓国は15%と、タイよりも低い関税率が適用されており、高度な集積回路基板、化学製品、半導体、産業機械などの分野で優位に立っている。逆に、ベトナム、台湾、スリランカ、バングラデシュは20%、インドとブルネイは25%、ラオスとミャンマーは40%、中国は51%と、タイよりも高い関税を課されている。このような関税格差は、タイにとって米国市場における電気機器、電子部品、機械、コンピュータ、家具、その他雑貨といった分野で市場シェア拡大の機会をもたらす可能性がある。
UTCCは、政府に対し、①影響を受ける産業への支援、②原産地規則の厳格な運用、③輸出市場の多角化、④高付加価値の外国直接投資の誘致、⑤国内需要の刺激、⑥積極的な通商外交の展開による経済成長の後押し、という6つの政策提言を行なっている。
経済3団体合同委員会は経済成長率予測を上方修正
商業、工業、銀行の経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)は8月6日の月例会見で、今年の経済成長率を1.8~2.2%と見積もり、従来予測の1.5~2.0%から上方修正した。物品輸出は2~3%増となる見込みで、従来予測を上回る。こうした見通しの改善は、関税交渉の成果によるもので、タイに対する関税は36%から19%に引き下げられた。詳細については今後さらなる交渉が必要で、予断を許さない状況ではあるものの、当面は近隣諸国と比べて不利な立場に立たされるという最悪の事態は回避された。
一方で、年後半の経済は減速傾向を示すと予想されている。輸出は、短期的な駆け込み需要による一時的な要因が剥落することで、勢いを失う。また、価格競争の激化、バーツ高の進行、インフォーマル経済の問題、米国におけるインフレの影響による消費者の購買力の低下といった要因が重なることで、輸出環境は厳しさを増しそう。観光収入も、特に近距離圏からの観光客の減少により鈍化しており、タイとカンボジアの対立による影響も懸念材料。こうしたなか、今年第4四半期から来年前半にかけての経済は、特に輸出で、米国の関税措置による影響が顕著に表れるほか、競合国との競争激化による不確実性が高まる見通しにある。影響の程度は品目ごとに異なり、在庫の保有状況の違いも加わって、さらなる変動が予想されるとした。
JSCCIBは、短期的な対応と将来に向けた構造的な調整の双方が急務となっていると指摘した。短期的には、国内市場において、タイが市場開放を進めることに伴い、価格競争が一層激しくなる見通し。
議長を務めたタイ銀行協会のパヨン・シーワニット会長[=写真]は、トランスシップメントへの40%課税やローカルコンテンツ比率について、民間側に強い懸念があると語った。従来は世界貿易機関(WTO)の基準である40%が適用されていたが、米国は独自基準を導入する予定で、詳細は未定ながら、ローカルコンテンツを満たしていないタイ製品には40%の関税が課されるおそれがある。また、国内市場でも輸入品との競争が激しくなり、利益率の低い商品群に影響が出る可能性がある。

政府は、現在進めている米国との交渉で詳細の詰めを急ぎ、年末までに決着をつけたい考え。パヨン氏は、競争力の維持と投資継続の観点からも、事業者に明確な情報を早期に提供するよう求めた。対応が遅れると、タイ製品の国際競争力はさらに低下し、輸出市場におけるシェアを失うリスクが高まると警告した。特に影響を受けるのは、機械部品、電子機器、ゴム製品、食品加工品などで、これらは米国市場への依存度が高い。
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