米国とアセアン4か国=通商協定締結に向け共同声明
マレーシアのクアラルンプールで開催されたアセアン首脳会議・同関連会議の期間に、タイ、マレーシア、カンボジア、ベトナムの4か国は米国との間で、米国製品の市場開放に同意する新たな通商協定の締結を目指した共同声明をそれぞれ採択した。米国側は、貿易をより「公正」にするための互恵的な枠組みと位置づけている。

◆タイとの共同声明
 米国はタイ原産品の輸入関税を今年4月時点で一律19%としているが、協定に基づき別途定める品目にはゼロ関税を適用する可能性を残した。
 米国通商代表部(USTR)の発表によると、「米国とタイの互恵的貿易枠組みに関する共同声明」の要点は次の通り。
 タイは、工業製品、食品、各種農産物を含む米国製品の約99%に対する関税障壁を撤廃し、非関税障壁の是正にも協力する。特に米国からの輸出に影響する以下の分野を重視する。
 (1)米連邦自動車安全・排出ガス基準に適合した自動車の承認。
 (2)医療機器と医薬品について、米食品医薬品局(FDA)の認証および事前販売承認をタイの要件を満たすものとして認める。
 (3)燃料用米国産エタノールの輸入許可を発行。
 (4)関税報奨金制度の廃止を目的とする関税法改正と、規制上の優良事例の導入。
 (5)米国産食品・農産物の市場アクセスを改善し、障壁の防止策を講じる。米食品安全検査局(FSIS)が認定した食肉・家禽肉製品のアクセス迅速化、アレルゲン対応、乾燥蒸留穀物(DDGS)を含む園芸作物への科学的根拠に基づく要件の適用などを含む。
 知的財産権、労働、環境の保護については以下を含む。
 (1)国際的に認められた労働者の権利を保護する法改正を行ない、団結権や団体交渉権を保障する。強制労働や児童労働の高リスク部門での侵害是正も強化する。
 (2)高水準の環境保護措置を採用・維持し、違法伐採、漁業補助金、違法漁業、野生生物取引の対策を実施。WTOの漁業補助金協定を承認し、資源効率の高い経済を促進する。
 (3)地理的表示(GI)を含む知的財産権の保護を強化し、商標偽造、著作権侵害、不正管理、技術的保護手段の回避、滞留特許問題など長年の課題に対処する。
 デジタル貿易・サービス・投資では、米国のデジタルサービスへの課税を控え、自由な越境データ転送を保証。WTOでの電子データ送信関税モラトリアムの恒久化を支持する。さらに①映画上映枠割当の設定を控える、②通信部門への米国投資の外資制限を緩和、③国内デビットカード取引の国内処理要件を撤廃、④国営企業の非効率な事業慣行を改善する――の4点を盛り込んだ。
 経済・安全保障面では、サプライチェーンの強靭化と技術革新の促進を目的に協力を拡大する。輸出管理、投資審査、脱税対策でも連携し、第三国による不公正な貿易慣行への対処を強化する。
 また農産物、エネルギー、航空分野の取引も明示した。タイは米国からトウモロコシ、大豆粕、DDGSなど農産品を年間26億㌦購入し、LNGや原油、エタンなどエネルギー製品を54億㌦購入する。航空機は合計188億㌦相当、80機を発注する。
 両政府は数週間以内の正式協定締結を目指し、交渉を進めている。
◆ベトナムとの共同声明
 ベトナムとの声明内容はタイとほぼ同様。農業、航空宇宙、エネルギー分野での協力を明記し、ベトナム航空はボーイング機50機(総額80億㌦超)を購入することで合意した。ベトナム企業は米国企業20社と農産品購入に関する総額29億㌦超の覚書を締結した。
◆マレーシアとのレアアース協定
 マレーシアとの協定には、鉱物およびレアアース(希土類)分野が追加された。米国企業と協力し、生産能力拡大に向けた事業の信頼性を確保するため、操業ライセンス期間を延長。レアアースの対米販売に制限を設けないと約束した。
 このほか、航空機30機(オプション30機含む)の購入、半導体・航空機部品・データセンター機器など計1500億㌦相当の購入、年間34億㌦、500万㌧規模のLNG購入、2億410万㌦の石炭、通信製品・サービスの調達、さらに米国への700億㌦のファンド投資を含む。
◆カンボジアとの共同声明
 カンボジアは米国産工業製品への関税を全面撤廃する。食品・農産物分野ではすでに履行済み。労働者の権利保護を約束し、強制労働による製品の輸入禁止を制定・施行する。
 環境面では高水準の基準を維持し、違法伐採や漁業補助金、違法漁業、野生生物取引への対策を強化。航空機購入の合意はないが、エア・カンボジアがボーイングと協力し、国内航空エコシステムの発展を支援することで一致した。
 このほか、デジタル貿易、投資、知的財産、税関・貿易円滑化、国営企業改革など多分野のコミットメントを含む。
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