APEC首脳会議でアヌティン首相演説=不確実性の時代に連結強化呼びかけ
アヌティン首相兼内相は10月31日から11月1日にかけて韓国・慶州市で開かれた第32回AAPEC首脳会議に出席し、自由貿易の推進やAI・デジタル分野の連携強化、越境犯罪対策の協力深化を訴えた。成長と包摂の両立、地域の持続可能な発展に向け、民間主導の投資促進や人材育成支援を打ち出し、OECD加盟手続きの開始も表明した。タイは国際連携の枠組み強化を通じ、未来に備えるアジア太平洋構築への積極貢献を目指す。

首相は10月31日午前に開催された第1セッション「Towards a More Connected, Resilient Region and Beyond(より結束し、強靱な地域とその先へ)」に出席し、声明を発表した。
首相はまず、議長国である韓国政府の温かい歓迎と会議準備への尽力に謝意を表するとともに、議長国の招待により参加したアラブ首長国連邦(UAE)を歓迎した。また、国際通貨基金(IMF)専務理事が2025年の世界経済見通しについて述べたなかで引用した「不確実性こそが新たな常態である」という言葉を引きながら、「世界が多くの困難に直面している時代において、協力は選択肢ではなく、必要条件だ」と強調した。そのうえで、「APECは開放性、包摂性、未来志向を堅持し、より強くしなやかな地域を築くべきだ」と呼びかけた。
首相は、自由貿易と市場の連結こそが持続的繁栄の礎であると述べ、国際的ルールに基づく、包括的で現代的な協力枠組みの重要性を強調した。特に中小企業が地域経済連携の恩恵を受けられるようにすべきだと訴えた。
また、投資はイノベーションと持続可能性の両面を推進する原動力だとし、タイでは「Thailand FastPass」制度を実施して、クリーンエネルギー、デジタルインフラ、ハイテク産業といった分野の質の高い投資家の受け入れを促進していると説明。今日の成長を将来世代の地球のためにつなげることを目指していると述べた。
首相は「民間部門こそが未来への移行を牽引する力」とし、人材投資、デジタルやAIスキルの強化、デジタル標準のハーモナイズが、地域間貿易の効率化と迅速化、さらには包摂的な発展を促進する鍵になると指摘した。
タイはAPECにおける協力から大きな刺激を受けており、首相はこの場で経済協力開発機構(OECD)への加盟手続きを開始したと表明した。国際基準の遵守と経済圏間の協調へのタイの強いコミットメントを示すものと強調した。
タイはAPEC域外との協力拡大にも力を入れており、今年末には中国と「メコン・ランサーン協力サミット」を共催するほか、来年には、アジア協力対話(ACD)閣僚会議とIMF・世銀年次総会を主催することを示した。これらの会議は、APEC加盟国と域外のパートナーとの緊密な協力を深め、共通の課題に取り組み、新たな経済的機会を創出する重要な場になると強調。APECは力を合わせて、結束し、強靭で、持続可能な地域を築き上げ、現在そして未来の世代のためにより良い社会を実現できると結んだ。
11月1日の第2セッション「Preparing a Future-Ready Asia-Pacific(未来に備えるアジア太平洋の構築)」では、韓国大統領による開会の辞の後、APEC首脳が順に発言し、アヌティン首相は米国に続いて3番目に発言した。
首相は、この36年間、APECが世界経済の成長エンジンとして地域を牽引してきたが、今、世界はテクノロジーの進化、人口構造の変化、気候変動といった急激な変化に直面していると指摘した。そのうえで、「APECは今後も安定・革新・適応力を備えた地域としての役割を維持し、未来に備えなければならない」と述べ、3つの重点提案を示した。
第1に、地域協力と包摂的成長の推進への揺るぎない取り組みで、首相は「誰かが取り残されるなら、繁栄に意味はない」と述べ、より深い経済統合を通じて社会のあらゆる層、特に脆弱層が利益を享受できるようにすることが重要だと強調した。
第2に、AIとデジタルトランジションを挙げ、AI技術の信頼性・安全性・倫理的利用を確立し、平等なアクセスを推進すべきだとし、タイが「AI倫理ガイドライン」を策定済みで、公正かつ安全に活用できる技術設計を進めていると説明した。また、APEC全体としても、デジタル化の進展から得られる利益をコンテンツやプラットフォームの両面で公平に分配し、イノベーションを地域経済と人々の力に変える必要があると述べた。
さらに、サイバー犯罪対策の緊急性にも触れ、特にオンライン詐欺や人身取引といった国境を越える犯罪に対しては、情報共有、法執行の連携、社会的啓発を通じた協力が不可欠だと指摘した。首相は韓国と米国のリーダーシップに謝意を示し、タイとしてもオンライン詐欺対策センター(AOC)とAPEC Online Scams Exchange Forumを通じて積極的に協力していくと述べた。
第3に、すべての世代・層に力を与える社会の構築を掲げた。高齢化が進むなか、包摂的な雇用、効率的な医療制度、生涯学習の促進が必要だとした。タイは高齢者雇用促進政策、国民皆保険制度の拡充、家族計画の高度化を推進しており、すべての世代が安心して暮らせる社会を目指していると述べた。
首相は、「不確実性が支配するこの時代に、単独で立ち続けられる経済圏はない。APECが方向を一つにできれば、世界の発展を支える原動力であり続けることができる。道のりは容易ではないが、我々は強固な協力と共通の目標をもって歩んでいく」と語り、「APECは互いに連結し、持続可能で、真に未来に備えた地域を共に築く」と締めくくった。
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