2024年10月7日(月)号

第3回アジア協力対話首脳会議=平和と繁栄の共有を促進

 ペートンターン首相は10月3日、カタールのドーハで開催された第3回アジア協力対話(ACD)首脳会議に出席した。首相就任後、初めての外遊。首相は演説で、中東地域の緊張が高まっていることについて、罪のない民間人に影響を及ぼす人道上の脅威を深く懸念していると語り、1日も早い中東の平和実現を訴えた。国際社会と連帯して紛争に関わる当事者に敵対行為の即時停止を求めていくと述べた。


 リッツ・カールトン・ドーハ・ホテルで開催された第3回首脳会議のテーマは「スポーツ外交」。カタールで2022年に開催されたサッカーW杯の成功を例に、世界の人々をつなぎ、関係を強化する上でのスポーツの持つ重要な役割を強調した。
 ペートンターン首相は、地政学的対立、気候変動、技術の進歩など地球レベルでの対応が求められる複雑な課題に直面していると指摘。21世紀がアジアの世紀と呼ばれる中、ACD首脳は世界が求める安定と成長への道を示さなければならないと述べた。特に世界人口の6割が居住するアジア地域は食糧安保、エネルギー安保の両面で世界に対し重要な役割を担っている。
 首相はタイが農業、食品産業に強みを持ち、世界の食糧需要に応えていることを示した上で、ACD参加国が貿易ネットワークの強化で協力を深めるよう訴えた。世界の食糧サプライチェーンの構築にあたって、タイは「世界の東西を結ぶゲートウェイとなる可能性がある」。
 道路、鉄道、空港、港湾などタイがあらゆる交通インフラを整備してきたことを示し、ACD参加国がアジア全体を結びつけ、経済成長を促進するための新たな貿易ルートの開発で協力するよう呼びかけた。食糧安全保障では「ACD諸国が相互の通商関係を強化し、世界のサプライチェーンが柔軟かつ強靭さを維持できるよう、スタンダードを確立しなければならない」とした。参加国がタイと新たな通商枠組を設けることを歓迎する意向も示した。
 タイは来年にACDサミット議長国を務める。首相は「ACDはアジアのさまざまな地域がひとつに集まるアジアで唯一の大陸協力枠組」だとし、競争や対立を超えた協力を重視していることを強調した。来年の議長国として今後も加盟国との協力を進め、域内の平和と繁栄に貢献していく意向を示した。アセアン、湾岸協力理事会(GCC)、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)などの地域連合とも連携し、アジア最大の協力枠組としてのACDの機能を強化することで世界経済の安定と安全保障に貢献していく。
 タイは1997年のアジア金融危機の震源地となった。首相はこの苦い教訓を踏まえて金融部門の安定に向けたより柔軟でバランスの取れた金融制度構築をテーマとした会議をタイが開催することを明らかにした。
 アジア協力対話は、アジアの外務大臣が関心事項について定期的に意見交換する非公式な対話の枠組で、2002年にタイのイニシアティブにより開始された。アセアン、南アジア地域協力連合(SAARC)、湾岸協力会議、上海協力機構、ユーラシア経済連合などアジアにおける既存の地域枠組みを強化・補完する枠組として国際社会におけるアジアの強みと競争力の強化を目的としている。首脳会議は2012年にクウェートで最初に開催され、2016年には第2回会議がバンコクで開催されている。
 ACDの参加国はアセアン各国、日本、アフガニスタン、アラブ首長国連邦、イラン、インド、ウズベキスタン、オマーン、カザフスタン、カタール、韓国、キルギス、クウェート、サウジアラビア、スリランカ、タジキスタン、中国、トルコ、ネパール、バーレーン、パキスタン、パレスチナ、バングラデシュ、ブータン、モンゴル、ロシア。
 首相はACD首脳会議とは別に、イランのマースード・ペゼシュキヤーン大統領、カタールのムハンマド・ビン・アブドゥラフマン・ビン・ジャシム首相、タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領とも個別に二国間首脳会談を行なった。
 一方、外務省は、イスラエル、レバノン、イランに在留するタイ人の保護・救出に向けた準備を進めている。紛争地域の大使館には情勢を常時モニタリングし、当該国政府との連携を強化してすぐに行動できるようにしておくよう指示した。在留タイ人には紛争地域に近づかない、在留国政府の指示・勧告に従う、出国希望者は直ちに手続きを取るよう呼びかけた。
 イスラエル及び近隣諸国への出稼ぎ労働者の派遣は一時停止した。政府間合意に基づいてイスラエルで就労しているタイ人労働者は現在約3万人。

タイと日本の相互訪問=1~8月の観光客数が拮抗

 タイを旅行した日本人と日本を旅行したタイ人観光客数が拮抗している。今年1~8月に日本を訪れたタイ人観光客は延べ70万6500人、タイを訪れた日本人観光客数は延べ66万8221人。昨年は1年間にタイ人99万5558人が日本を訪れ、日本人80万5768人がタイを旅行している。
 タイ観光公団(TAT)東アジア営業部のチューウィット・シリウェーチャクン部長は、今年の日本人観光客数が100万人を超えると見ている。北部地方を襲った洪水とバーツ高が阻害要因になるものの、毎年第4四半期(10~12月)はタイの観光業にとって書き入れ時で、観光客数増を見込んでいる。一方、タイ旅行代理店協会(TTAA)は日本を旅行するタイ人が今年は初めて100万人を突破すると予想している。日本の第4四半期は、タイでは経験できない秋から冬の雰囲気を楽しむため、日本への旅行を思い立つ人が増える。
 ただし両国を結ぶ航空便の座席数は2019年当時の65%までしか回復していない。バーツ高に加えて航空運賃が高めに推移していることも、日本人の出足を鈍らせる。特に人口比で30%を超えた日本の65歳以上高齢者の海外旅行熱が冷めていることも懸念材料。手持ち資金を旅行よりも自身の健康に振り向ける傾向が強い。日本人で旅券を所持している人は総人口1億2500万人に対し2000万人しかいない。コロナ流行期に旅券が期限切れになってから更新していない人が増えた。日本旅行業協会(JATA)は昨年にパスポート取得費用サポート・キャンペーンを実施し、旅券取得を促している。
 タイ観光公団は24年度に更新した旅券で最初にタイを訪れる日本人観光客に特典を用意するキャンペーンを実施しており、新年度となった10月1日以降も継続する。ターゲットは比較的購買意欲の高い若年層。TATは9月最終週に東京で開催された「ツーリズム・エクスポ・ジャパン2024」にも旅行業者13社と共に参加し、タイ観光のアピールに努めた。
 23年にタイを訪れた日本人若年層は日本人全体の2割に過ぎなかったが、チューウィット部長は今後伸びる余地があると見ている。学生やコンサート/会合参加者、新卒者が主なターゲット。ただし日本人は中国人のように爆発的に増える観光客市場ではなく、相対的に高額出費してくれるハイ・クオリティー市場だという。タイ滞在中の日本人の平均出費額は1人あたり約5万バーツ、滞在日数は9.25日。日本人のデジタル・ノマドのタイ滞在も増えると期待している。
 タイが洪水に悩まされているのと同様、気候変動で日本も天災が頻発し、日本人の旅行離れに拍車をかけているという。日本人の海外旅行先でタイは韓国、米国、台湾に次ぐ4位につけており、依然として魅力のある旅先になっている。今年、日本の賃金上昇率が33年ぶりの高水準を記録したことも追い風になりそう。チューウィット部長は「日本国内の観光地がインバウンド観光客で溢れて混雑していることも、海外旅行熱を再燃させるかもしれない」と希望的観測を示している。

その他のニュース
[経済ニュース]
金融機関の個人情報=26年までに共有制度導入

農業経済事務局がシンポジウム=FTA基金の助成事業を紹介

オムロン・ヘスケア=心電計付き血圧計

LINEマン・ウォンナイ=過去3年で最大規模の販促費

ミニEECフェア=10月7~9日に開催

[社会ニュース]
チェンマイの洪水悪化=象センターでは2頭が溺死

貸切バスの安全対策=運輸省が徹底

ミャンマー内戦長期化で=麻薬・覚醒剤の密輸が激増

[閣議決定]
24年10月1日

[先週の為替・株式相場]
9月30~10月4日

[商品市場]
バンコク首都圏の燃油小売価格
天然ゴム(ハジャイ中央市場10月4日正午時点)

[金融市場]
外為相場
銀行預金金利
銀行貸出金利

あわせて読みたい
無料トライアル 【無料トライアルのご案内】 タイ経済パブリッシングは毎日(土日祝を除く)、A4サイズのPDF版ニュースレターを定期購読者様にメール配信しております。 購読料金...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次