北部の洪水被災地復興=観光業支援措置を閣議提出
ソラウォン・ティアントーン観光・スポーツ相[=写真中央]は10月11、12日に洪水の被害が大きいチェンライ県とチェンマイ県を訪問し、観光事業者と会談した。事業者側は低利融資、電気代と水道代の補助、所得控除措置などの支援を求めた。ソラウォン大臣は事業者のニーズを満たす援助措置を内閣に提出すると約束した。
観光支援措置は22年に導入した所得控除措置に似たものを想定し、被災地の観光関連の支出について所得控除対象とするプログラムを検討する。22年には企業が対象地域で実施した研修・セミナーの費用を所得控除できる措置を実施しており、今回も同様の措置を検討する。
ソラウォン大臣によれば、11月1日から「エウ・ヌア・コンラクルン」(Travelling North Half-Half)と呼ぶ観光刺激策を実施する計画もある。北部地方を旅行する1万人を対象に、800バーツの支出に対して半分の400バーツを国が補助するというもので、経費はひとまずタイ観光公団(TAT)が立て替えることを想定している。
このほかペートンターン政府は11月にチェンマイかチェンライで地方閣議を開催し、現地のニーズに沿ったプロジェクトを検討する方向で準備を進めている。
一方、財務省は洪水被災地の復興支援措置を導入する。チュラパン・アモンウィワット財務副大臣によれば、被災地の観光復興奨励措置と復興に向けた金融支援措置の二本立て。
政府は10月8日の閣議で被災世帯に1世帯あたり9000バーツの援助金を支給する方針を決定した。従来の援助金支給の原則では、住宅の冠水期間によって5000バーツ、7000バーツ、9000バーツとしていたが、一律9000バーツに改めた。これに加え洪水・台風・地滑り被災者救援センターが提案した1世帯1万バーツの住宅復興作業補助金支給も承認した。損壊した住宅の補修や農地の復旧にかかる費用は政府系特殊金融機関を通じたソフトローンで支援する。チュラパン副大臣は「他にもできる措置があれば検討する。実施後は現地を視察し、状況を確認していく」と述べた。
2017年の洪水では、同年7月5日~12月31日の期間中に被災地域に指定された地域住民の住宅補修費について最大10万バーツ、自動車修理費については最大3万バーツの個人所得控除措置を実施した。タイ中小企業開発銀行(SME・Dバンク)による中小事業所向けの事業復興支援のソフトローンも実施した。与信枠は50億バーツで、返済期限最長15年、最初の3年間の金利は3%だった。
観光業の信頼感指数が低下
タイ観光連合会(TCT)によると、今年第3四半期の観光業界の信頼感指数は前年同期比で下落した。工場の相次ぐ閉鎖による失業者の増加、不良債権の増加に加え、国内外の深刻な洪水被害が下押し要因になっている。
TCTのチャムナーン・シーサワット会長はタイ観光公団(TAT)に対し、プラユット政権が実施した「ラオ・ティアオ・ドゥアイカン(一緒に旅しよう)」と同種のプログラム実施を提案する意向を明らかにした。地方都市観光を対象に旅費の一部を国が補助することで地方都市観光を促進する。「国が50億バーツを拠出すれば、500万室の宿泊予約を確保できる。タイ人の3泊4日程度の国内旅行を活性化できる」と述べている。30県が洪水に被災している現状、国内観光の回復は難しいが、それだけにプログラムの導入を急ぐべきだと主張している。
今年第3四半期の観光業の信頼感指数は68ポイントで、コロナ前をベースにした100ポイントを依然として下回っている。前年同期は69ポイント、第2四半期は79ポイントだった。一方、第4四半期の業況見通しの指数は80ポイントで、前年同期の77ポイントから若干改善した。
指数はTCTが全国の会員企業740社を対象に今年8月10日から9月15日に実施した調査に基づいている。信頼感悪化の背景に景気の減速があり、最近の洪水が追い討ちをかけている。中東やウクライナでの紛争、バーツ高など観光業に負の影響をもたらす要因は多く、今後数か月も予低迷した状況が続きそう。政府によるデジタルマネー政策が現金給付という形で一部実施されたことについては、ある程度の効果は見込めるものの、短期間にとどまると見ている。
調査によれば、観光業者の平均収入は2019年水準の47%にとどまっている。82%の業者は「コロナ前の収入水準に達していない」と回答し、54%だった前年同時期の調査から大幅に増えている。2019年当時と比べた雇用の回復率は84%で、第2四半期の99%から低下した。第3四半期は農作物の収穫期で、一時帰省して収穫作業を手伝う被雇用者が増えたことも一因。
第3四半期のホテルの客室稼働率は54%。洪水が打撃を与えており、大手のみが、かろうじて平均水準を超えた稼働率を残している。
同会長は観光業の回復の足並みが揃わないことへの懸念を表明している。
MPCが16日に政策決定会合=政策金利は据え置き見通し
タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)は10月16日に政策決定会合を開く。エコノミストの多くは政策金利を年2.50%の水準に据え置くと見ているが、前回会合時に比べるとタイ経済の成長に対するリスクは増えていることから、今後の利下げ開始に向けた何らかのシグナルを発する可能性がある。早ければ12月の会合で利下げを決定するとの見方が有力だ。
中銀はタイ経済が成長軌道にあると見ており、下半期の成長率は上半期から加速すると予測している。物品輸出が上向き、観光業も回復傾向が続いている。政府支出も予算執行が正常な水準に戻している。政府は脆弱な層への現金給付などの経済刺激策を実施した。しかし世界経済には先行き不透明感が漂い、国内では北部、東北部を襲った洪水が農業、観光業と消費者の購買力に対する下押し要因になっている。
一般インフレ率は上昇する傾向にあるが、インフレ圧力はまだ低位にとどまっている。9月の一般インフレ率は0.61%となっている。第4四半期(10~12月)の一般インフレ率は金融政策の誘導目標である1~3%の水準に戻しそう。前年第4四半期に政府は国民の生活費負担軽減を目的として電気代や軽油小売価格を抑制し、消費者物価のベースが低くなっているため、ローベース効果が第4四半期のインフレ率を押し上げる。とは言え通年で見ると一般インフレ率は約0.5%にとどまる見通し。
世界各国の中央銀行は利下げを開始している。特に米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17、18日の会合で0.50%幅での利下げを決定した。FRBが今年残り期間に2回開く会合では0.50%幅での利下げが予想されている。米国の金利の低下は投資マネーの流れを米国から新興市場国へ逆転させるため、バーツは強基調に転じている。バーツ高で輸出業者の収入は減少し、輸出採算は低下している。
MPCの16日の会合では最新の経済成長率予測も発表になる。経済成長率とインフレ率の予測値は前回見積もりから大きく変わりそうにはなく、経済成長率は2.6%、インフレ率は0.6%とした前回予測を据え置く可能性が高い。一方で、25年の経済成長率はリスク増を反映して前回予測の3.0%から下方修正する可能性がある。
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