2025年2月11日(火)号

「クルンタイ・コンパス」=今年はタイ経済の転換点

 クルンタイ銀行調査部の「クルンタイ・コンパス」は今年の経済成長率を2.7%と見積もり、タイ経済の転換点となる5つの課題に注目している。25年のタイ経済は観光業、民間投資、政府の政策による支援が原動力になる。
 チーフエコノミストのパチャラポン・ナンタラマート副頭取[=写真中央]は、24年に経済成長を支えた物品輸出について、貿易戦争が再び激化することや世界経済の不確実性から、伸びは2%にとどまり、前年から鈍化すると予測した。上半期は順調に増加すると見込まれているが、米国の貿易障壁措置が下半期の輸出に影響を与える可能性がある。また、中国の製造業の供給過剰問題や激しい競争による輸出市場の構造的な問題も依然とした課題だと指摘した。
 観光業は今年もタイ経済の主力のエンジンになりそうで、外国人観光客数はコロナ前水準である3900万人に回復すると予測した。民間投資も回復し、特に外国人直接投資(FDI)による投資の増加が期待される。特に、未来産業分野が成長を牽引すると期待している。政府は経済の下支えに重要な役割を果たしており、特に年初に実施される経済刺激策のフェーズ2と3、ショッピング減税の「Easy E-Receipt」などの施策が上半期に経済成長のモメンタム(勢い)を高めるとした。ただし下半期には経済の変動に対応するため、追加的な施策を検討する必要が出てくる可能性を指摘している。
 クルンタイ・コンパスは、タイ経済にとって重要な転換点になる年と見ており、すべてのセクターが迅速に対応しなければならない5つの課題があると指摘している。
 1.貿易戦争の再開
 新たな貿易戦争により、タイの物品輸出は影響を受けるリスクが高まっている。タイの対米貿易は大幅な黒字になっているため、特に、電子機器や工業製品が高関税の対象となり、最大で40%~60%の高い輸入関税が課せられる可能性もある。
 2.インフォーマル経済
 タイ経済は48%をインフォーマル経済に依存している。タイ経済の潜在能力を向上させるためには、インフォーマルな経済をフォーマルな経済に統合する必要がある。
 3.自動車産業のパーフェクトストーム
 自動車産業は「完璧な嵐」に直面しており、エンジン車の時代は復活しそうにない。25年から26年にかけて、タイの自動車生産台数は147万~153万台に減少する。過去の平均よりも15%以上減少することになる。家計の購買力、EVの流行、価格競争が影響を及ぼす。
 4.観光業の変革:人工の観光地
 新たな観光客層を引き寄せ、観光収入を増加させるため、タイは「人工の観光地」の開発を進めている。25年には、タイを訪れる人工の観光地の観光客一人あたり支出は5万8300バーツ(約19%増)となり、一般的な観光客よりも高い支出が見込まれる。
 5.イ経済の制約の解除
 所得格差や、家計債務がGDPの104%に達している現状があり、タイ経済の成長を妨げている、これらの障害を取り除く必要がある。家計の所得の向上やセーフティネット(社会保障)の強化が求められる。債務者援助措置「あなたは闘い、私たちは助ける」を通じて、持続可能な形で負債返済能力を高め、競争力を強化する。また規制緩和を実施し、海外からの投資を引き付ける。
 クルンタイ・コンパスは25年をタイ経済にとっての転換点と見なしているが、これは課題でもあり機会でもあると指摘。すべてのセクターが協力し、収入を向上させ、競争力を高める方法を模索することが重要だとした。24年にタイ経済を刺激した短期的な政策から一歩進め、タイ経済を安定的かつ持続可能に前進させるための鍵となるのは、所得の向上や競争力の強化だとしている。

アユタヤ銀行とタイ・ユニオン=ESG連動型外国為替

 アユタヤ銀行(クルンシー)は2月5日、水産大手のタイ・ユニオン・グループ社とその子会社でペットフード生産のiテール社と国際基準に基づくESG連動型外国為替(FX)で提携すると発表した。持続可能性の推進に向けた3者による共同の取り組み。クルンシーはサステナブル・ファイナンスのリーダーとしての地位の確立を目指している。
 国際基準に沿った持続可能な外為リスク管理を実現し、タイにおけるサステナブル・ファイナンスの進展と金融イノベーションの発展を示すものとなる。ESGの要素を外為取引に統合したもので、為替ヘッジなどのコストを持続可能性の達成状況と連動させる仕組み。例えば温室効果ガス排出削減目標の達成や社会開発に関する指標の向上など、企業が設定したESG目標を達成することで、ヘッジコストの軽減など財務上のメリットを享受できる。


 タイ・ユニオンのサステナビリティ・リンク・ファイナンシング・フレームワークに基づき、サステナビリティ・パフォーマンス指標(KPI)と目標(SPT)を組み込んだ。これらの指標と目標は、外部機関による審査・検証を受ける。この取り組みにより、持続可能性の要素を含む外為リスク管理が強化され、取引コストの削減にもつながる。
 グルンシーは持続可能な金融の推進に注力しており、ESGファイナンスの専門家チームを擁し、取引先企業と連携している。サステナブル・ファイナンスのニーズは高まっており、昨年初めにはESG連動型デリバティブを導入した。今回のESG連動型FXは、外為リスク管理とESG要素を融合させた金融イノベーションで、企業の持続可能性目標の達成を支援するとしている。
 なお、同行とタイ・ユニオンはブルー・ファイナンス(海洋保全を目的とした金融プロジェクト)で協力し、成功を収めている。21年にはタイのほか日本でも初めてのサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を実現し、タイ初のサステナビリティ・リンク債(SLB)の発行にも成功した。
 タイ・ユニオン・グループ社のヨンユット・セータウィワット財務責任者は、タイ・ユニオンとiテールの事業戦略の中心に持続可能性を据え、「健康な生活と豊かな海」(Healthy Living, Healthy Oceans)をビジョンに掲げていると述べた。2025年までに長期資金調達の75%を持続可能性と連動したファイナンスにする目標を掲げている。

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