財政局の月例経済財政報告=輸出と民間消費増も観光業が減速
ポーンチャイ・ティーラウェート財政局長は5月29日に発表した月例経済財政報告で、4月のタイ経済は、10か月連続での輸出の拡大や民間消費の継続的な成長といった要因に支えられたと述べた。一方で、外国人観光客からの観光収入の伸びは鈍化した。タイ人旅行者数は引き続き増加した。今後は、特に米国と中国といった主要貿易相手国の経済状況や経済政策について、タイ経済への影響を注視する必要があると指摘した。
民間消費に関する指標は、前年同月比で引き続き拡大傾向を示した。4月の自動二輪車の新規登録台数は前年同月比で4.1%増加し、季節調整後の前月比でも10.5%増加した。乗用車の新規登録台数も前年同月比で2.6%増加し、季節調整後の前月比では14.6%増加した。一方で、4月の農家の実質所得は前年同月比で5.0%減少し、消費者信頼感指数も前月の56.7ポイントから55.4ポイントに悪化した。全体的な景気の回復が依然として鈍く、生活費が高止まりしていることや、貿易戦争の激化が懸念されていることが影響している。
民間投資に関する指標は、前年同月比で改善の兆しを見せた。民間投資のうち設備投資に関しては、4月の資本財輸入量(速報値)が前年同月比で22.8%増加し、季節調整済み前月比でも8.7%増加しており、回復傾向を示している。4月の商用車の新規登録台数は前年同月比で7.5%減少したものの、季節調整済み前月比では11.5%増えている。建設投資では、4月の不動産取引税収入が前年同月比で10.1%減少した。
政府の予算支出は減速の兆しを見せている。4月における予算執行額は2645億バーツで、そのうち今年度予算からの支出が2518億バーツとなっている。内訳は、経常支出が2126億バーツ、投資支出が392億バーツ。前年度予算からの支出は127億バーツとなった。
これにより、2025年度の期初から7か月間における予算執行額は2兆3785億バーツとなり、うち今年度予算からの支出は2兆1968億バーツで、経常支出が1兆9128億バーツ、投資支出が2841億バーツとなっている。前年度予算からの支出は1817億バーツだった。
物品輸出額は前年同月比で拡大した。4月の輸出額は256億2510万㌦で、前年同月比10.2%増となり、10か月連続のプラスとなった。石油関連、金、武器を除いた輸出額も7.1%増加した。コンピュータ・同関連機器、宝飾品(金地金を除く)、電気回路基板の輸出増が寄与し、それぞれ75.1%、42.1%、39.0%の伸びとなった。このほか、砂糖、天然ゴム、果物缶詰・加工品、ペットフードの輸出もそれぞれ36.0%、22.5%、21.9%、10.1%増加した。一方で、米、キャッサバ製品、自動車・同部品の輸出は減少した。
仕向け地別にみると、米国、アセアン(9)、インド向けがそれぞれ23.8%、15.0%、10.2%の伸びを示した。一方、中東、オーストラリア市場向けは、それぞれ15.7%、4.0%減少した。
サプライサイドの指標では、外国人観光客による観光サービス支出が鈍化する一方で、国内観光は前年同月比で引き続き拡大した。4月の外国人観光客数は255万人で、前年同月比で7.6%減少したが、季節調整済み前月比では3.9%増加した。一方で、タイ人による国内旅行者数は2500万人で、前年同月比で1.7%、季節調整済み前月比で5.8%増となった。
農業部門では、4月の農産物生産指数が前年同月比で6.2%、季節調整済み前月比で2.3%増加した。主に米や天然ゴムといった主要作物の増加による。キャッサバとトウモロコシの生産は前月比で減少した。
工業部門では、4月の工業部門信頼感指数が前月の91.8ポイントから89.9ポイントに低下した。3月下旬に発生した地震や、米国による輸入関税引き上げ措置への懸念が影響している。
経済の安定性は引き続き良好な水準にある。4月の一般インフレ率はマイナス0.22%、コアインフレ率は0.98%だった。3月末時点の公的債務残高はGDP比64.4%で、2018年財政規律法に基づく財政規律の枠内に収まっている。
また、対外的な安定性も堅調で、世界経済の変動リスクに対して耐性がある状態を維持している。4月末時点の外貨準備高が2567億㌦と高水準で安定していることに示されている。
世界の金融経済の状況は、米国の関税政策の影響により減速の兆しを見せている。4月の世界総合購買担当者指数(Global Composite PMI)は50.8ポイントとなり、前月の52.0ポイントから低下したが、依然として50.0ポイントを上回っており、世界経済が引き続き緩やかな拡大傾向にあることを示している。
一方で、4月の世界製造業購買担当者指数(Global Manufacturing PMI)は49.8ポイントに下落し、前月の50.3ポイントを下回った。新規受注や雇用など複数の指数が低下している。世界サービス業購買担当者指数(Global Services PMI)は、3月時点で50.8ポイントと、前月比で低下し、過去18か月で最も低い水準となったが、依然として50ポイントは上回っている。
また、世界的に観光業が減速の兆しを見せている。各国のインフレ率と政策金利の動向については引き続き注視が必要。地政学的な緊張や米国の貿易制裁措置は、引き続き世界経済に対する重要な圧力要因で、不確実性の高い状況が続いている。
5月の金融市場の動向では、株式市場は一部で回復の兆しが見られ、国内個人投資家による買いが入った一方、外国人投資家は引き続き売り越している。外部要因への警戒やタイ経済の回復が十分でないことを反映している。
債券市場においては、外国人投資家によるタイ国債への信頼が維持され、安全資産としての需要が高まっている。世界経済の不透明感と各国の金融引き締め政策の影響による。
また、トランプ大統領が相互関税措置の猶予を発表したことで、世界と新興国市場の株価指数は上昇し、金融市場の変動性も低下した。投資家の懸念がやや和らいだことを示している。
ただし、米国の10年債利回りは5月初旬から上昇しており、米国経済の先行きに対する投資家の懸念が表れている。とはいえ、年初と比較すれば利回りは依然として低い水準にある。
CPフーズ=THAIFEXで最先端技術披露
アグリ・食品大手のチャルーン・ポーカパン・フーズ社(CPF)は、アジア最大規模の食品見本市「THAIFEX-Anuga Asia 2025」において、食品製造の持続可能性確立に向けた最先端技術を出展し、「世界の台所」としてのタイと自社の立ち位置を発信している[=写真]。今年のイベントで同社が掲げたコンセプトは「KITCHEN OF THE WORLD : QUALITY THROUGH SUSTAINOVATION」。

子会社であるCPFフード・ネットワーク社のエークピヤ・ウアウティクルーク社長は、今年も自社製品の品質水準の高さをアピールする点は例年通りで、既存の食肉加工品に加え、新製品も相当数用意しているという。「キッチン・ジョイ」「ミート・ゼロ」などの自社ブランド製品のほか、タイの伝統スイーツである「カオニャオ・マムアン(マンゴーとココナツミルクで蒸したもち米を組み合わせた菓子)」を応用した生春巻きなども出品している。近年、スカンジナビア市場でシェア8割を誇る人気商品となっている本格タイ料理メニュー「タイ・キューブ」も展示した。
「キッチン・ジョイ」は、自国料理へのこだわりが強く参入が難しいとされたイタリア市場に初めて導入されたタイ料理メニュー。また、英国などで人気を博しているブランド「オーセンティック・アジア」は、日本の竜田揚げを含む和食メニューや「蜂蜜レモンソースのチキン唐揚げ」などの韓国料理メニューに加え、タイ料理を組み合わせたアジア3か国のメニュー構成となっている。
同社のチキン料理は宇宙食としても採用されたことで知られているが、それ以外にも高品質な食品を世界に向けて次々と発信してきた。エークピヤ社長は、「世界の景気低迷が懸念されているが、人々は何があっても食べることだけはやめない。品質と安全性を保持できれば常に需要はある」と述べ、自社が品質と安全性を最優先していることを改めて強調した。
食肉や冷凍エビといった原材料だけでなく、レディ・トゥ・イート食品でも世界をリードする立場を目指しており、自社ブランドの世界市場における認知度が着実に高まっているという実感を明らかにしている。イベントのコンセプトに沿って、品質面と環境への配慮を兼ね備えた食品メーカーとしての姿を発信し、さらなる飛躍を期している。
今年に入ってからも、消費者の消費傾向は変化を続けている。最近では財布の紐が固くなり、外食を控える傾向が強まっている。これは世界的な現象で、食材を買って自炊したり、惣菜を購入して自宅で食べたりする家庭が増えている。この傾向はCPFにとって追い風となる。一方で、長期的には健康志向が高まることが確実視されており、肉の消費量が減少し、より健康に良い食材を求める消費者が増えると予測されている。そのため、同社ではプロバイオティクス(善玉微生物)食品の開発にも力を入れている。
昨年のTHAIFEXは、CPFにとって海外市場の拡大につながる契機となった。今年も北欧やバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、CIS(旧ソ連邦独立国家共同体)11か国などで新たな市場の開拓を目指している。とりわけハラル食品の需要に将来性を見込んでいるという。
イベントは5月27日から31日まで(午前10時〜午後6時)、インパクト・ムアントンタニで開催されている。このうち一般市民の入場は31日のみで、その他の日程は業者向けの開催となる。
CPFのブースはチャレンジャーホール2に設置されており、植物由来のタンパク質を使った食品やマッシュルーム餃子など「ミート・ゼロ」ブランドの製品、昨年「ベスト・オブ・テイスト」賞を受賞したタイのグリーンカレー味の餃子も出品している。宇宙食として使用可能な品質管理水準を示す展示物も用意されている。
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