タイ・カンボジア国境衝突が深刻化=国際司法裁提訴をタイ政府は認めず
国境線の解釈の相違を原因として、兵士同士の銃撃戦が発生したカンボジアとの関係が緊迫の度合いを増している。事件直後には両国の陸軍総司令官同士が会談し、穏便な解決を目指すことで基本合意に至ったものの、カンボジア政府が国境線の解釈を国際法廷に委ねる意向を表明するなど、事態は不安定な推移を見せている。
タイ政府は6月5日、カンボジアとの領土問題に関して、国際司法裁判所(ICJ)の管轄権を認めないと表明した。タイ・カンボジア国境の状況に関する2回目の声明を発表し、5月28日にチョンボック地区で衝突が発生して以来、両国は既存の二国間メカニズムを用いて問題解決に取り組むことで合意していると主張した。これには、合同国境委員会(JBC)、タイ・カンボジア一般国境委員会(GBC)、地域国境委員会(RBC)が含まれる。この合意は、5月29日に両国の陸軍司令官の間で行なわれた協議に基づいていると強調した。
タイ政府の声明は、カンボジアが国際司法裁判所への付託の意向を表明したことについて、1960年以来、ICJの強制管轄権を認めていないと主張。タイとカンボジアにはこの種の問題に対応するための二国間メカニズムがすでに存在するとしている。また、最も重要なのは、双方がこの事件の解決に専念し、拡大させないようにすることであり、事態を不必要に複雑化させてはならないとした。
声明はまた、政府としてはいずれの当事者にも損失が生じることを望んでおらず、既存のメカニズム、とりわけJBCを通じた国境交渉は成果を上げているとした。そのうえで、タイは6月14日にJBCプロセスを再開する用意があると表明。カンボジアに、平和、安定、相互尊重への共通のコミットメントを反映する形で交渉に応じる意思表示を求めた。
カンボジア政府は6月2日、スリン県パノムドーンラック郡のタームアントム、タームアントート、タークワーイ、およびウボンラチャタニ県ナムユーン郡の「エメラルド・トライアングル」の一部に関する長年の国境紛争を解決するため、ICJに提訴した。5月28日に発生した国境地帯での軍事衝突を受けたもので、カンボジア政府発表によれば、同国兵士1人が死亡した。
カンボジア政府側は、公正で平和的かつ持続可能な解決を求めているとし、この動きがカンボジア国会の上下両院合同会議で全会一致の承認を受けていることを伝えている。ICJへの提訴を進める一方、カンボジアは二国間対話へのコミットメントも再確認し、6月14日に国境画定会合を開催するとしている。ただし、4か所の係争地は議題から除外されるとした。
プームタム・ウェチャヤチャイ副首相兼国防相によると、2024年3月19日付の閣議決定において、タイはこの件に関するICJの管轄権を認めないことを明確に示している。「現在、ICJが介入すべき問題は存在しない」と述べ、カンボジアには国際法的手段を取る権利はあるものの、タイがそれに従う義務はないとした。同副首相は、状況が改善しなければ、緊張が高まる可能性があるとし、「我々には対応策が用意されており、協議は進行中だ。さらなる措置が必要であれば、ためらわず実施する」と語った。
タイ政府の対応が後手に回っているとの批判が高まる中、ペートンターン首相は4日の閣議後の会見で、「平和的解決を最優先するが、タイの領土の侵略は決して許さない」との決意を改めて示した[=写真]。

この問題は4日の閣議でも取り上げられた。カンボジア側が態度を硬化させた理由は明確ではないが、首相は「国内ではこの問題について一致団結することが重要だ」と述べ、無用な分断を招くような批判は控えるよう呼びかけた。
今後の対応についてメディアに問われた際には、「慎重に検討したうえで決然と行動する。領土を守ることは最優先事項」と述べ、いかなる事態においても国民と国土を守る準備が整っていることを強調した。必要とあれば、武力による防衛も選択肢になると示唆した。
プームタム副首相が現地を視察する予定のほか、両国の合同国境委員会が6月14日に会合を開き、対応策を協議することになっている。首相としてはまず、話し合いによる穏便な解決を目指す姿勢を見せている。
一方、メディアからは「すでにカンボジア軍が越境し、200㍍もタイ領内に入り込んでいるとの情報がある」との指摘があり、それを否定する首相との間で一時緊張が走った。首相は「プームタム副首相兼国防相の視察で、それも明らかになるだろう」と述べた。
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