向こう18か月の経済成長率=中銀見通しは2%未満
タイ中央銀行のピティ・ディサヤタット総裁補は7月9日に開催された金融政策フォーラムで、米国の関税政策からの圧力により、タイの経済成長率は今後18か月にわたって2%を下回るとの見通しを示した。米国の関税から生じる不確実性の高まりが、年後半と2026年を通じて、輸出、民間投資、国内消費に負の影響を及ぼすと述べた。中銀はトランプ関税の影響を継続的に監視し、経済の先行きをより正確に予測していくとしたが、米国の関税政策は世界経済とタイ経済の双方にとって重大な外的ショックであり、悪影響は来年まで続くと指摘した。

今年第3四半期と第4四半期については、前年比の平均成長率を1.6%、前期比では0.1%と予測した。中銀は、2025年の経済成長率を2.3%と予測しており、上半期は2.9%、下半期は1.6%を見込んでいる。2026年の成長率は、1.7%に下方修正した。2026年の四半期ごとの成長率の平均は0.6%と予測され、四半期あたり0.7~0.8%という潜在成長率を下回ると見積もった。
物品輸出は2025年に4%増が見込まれるが、米国の関税をめぐる不確実性により、2026年には2%減と予測した。民間投資は今年1.7%増が見込まれるが、来年は0.9%に減速する。一方、国内消費は2025年に2%成長し、2026年には1.7%に減速する見通しだ。
中銀は、主にトランプ関税の影響により、年後半の輸出が4%減少するとみている。上半期は前倒し出荷によって12.6%の大幅増がみられた。
ピティ氏は、中銀ならびに金融政策委員会(MPC)が、外的ショックの影響は来年まで続くと予測していることを紹介した。金融政策は、今年後半から来年を通じて、タイ経済の方向性に沿ったものになると述べた。ただし長期的な不確実性のなかで、経済の強靱性を維持するためには、政策余地の確保が不可欠だとも述べている。資金需要が弱い現状では、政策金利の引き下げは経済活動を刺激するにはあまり効果がないと付け加えた。
中銀の金融政策担当のサッカポップ・パンヤーヌクン総裁補は、予算の成立遅れなどの政治的リスクに経済が直面するなかで、国内政治の不確実性も注視すべき要因だと指摘した。
タイ商業会議所大学(UTCC)のタナワット・ポンウィチャイ学長は、米国がタイ製品に25~36%の関税を課した場合、タイは今年、約2000億バーツの輸出機会を失うとの試算を示している。ベトナムの関税率と同じ20%まで引き下げられるよう米国と交渉する機会は残されており、関税が8月1日に実施される前により有利な関税率を得られる可能性はあるが、そうした合意の実現は依然として不確実だとしている。
さらに、年内に下院解散といった政治的不安が起こり、政府が経済刺激予算を配分できない場合、経済成長率は1%幅で低下する可能性があるとした。このシナリオが現実になれば、経済成長率は1%未満となり、従来予測の1.7%を下回ることになる。タナワット氏は、25~36%の関税が1年間継続された場合、輸出に約4000億~6000億バーツの影響が及ぶとしている。
パオプーム・ローチャナサクン財務副大臣は、トランプ関税が脅威になるなか、金融政策は「アクセルを踏む」必要があると述べている。金融政策は政策金利に限られず、信用の分配、経済システムへの流動性の注入、銀行貸出を促すための条件緩和といった措置も含まれると説明した。
過去に財務省は、住宅ローン規制(LTVルール)の緩和を求め、最終的に中銀はこれに応じたが、検討には長い時間を要した。パオプーム氏は、責任ある融資の枠組みについても、より適切な時期に実施できるよう見直す必要があるとの見解を示している。
財政措置は、政府がすでに承認した1150億バーツ規模の景気刺激策があり、今年第4四半期と来年第1四半期の経済を活性化させると期待されている。政府は6月24日の閣議で計481件のプロジェクトを承認した。740万人の雇用創出と経済成長率の0.4%幅での押し上げ効果を見込んでいる。
パオプーム氏によれば、工業生産指数が2か月連続でプラス成長を記録していることから、米国による36%の関税がなければ、タイの経済見通しは改善を続けた可能性があるという。トランプ関税は大きな問題だが、タイに対する最終的な税率はまだ不確定だと強調した。
年後半については、タイ経済と世界経済がさらなる困難に直面すると予測し、タイ経済は前半と比べて減速するとしている。
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