2025年7月17日(木)号

工業信頼感指数が4か月連続低下=カンボジア国境問題、バーツ高、最低賃金上昇

 タイ工業連盟(FTI)が7月16日に発表した工業部門信頼感指数は87.7ポイントとなり、前月の88.1ポイントから低下した。指数の前月比での下落は4か月連続となった。受注、売上高、生産量、業績の指標が悪化し、コストの指標のみが前月比で改善した。向こう3か月の指数も前月比で低下し、中間値を下回っている。


 タイ・カンボジア国境の通関停止措置や、カンボジアによるタイからの石油・LNG輸入の停止により、国境・越境貿易に悪影響が出ていることが信頼感の低下につながった。また、米国が鉄鋼・アルミ製品に対するセクター別関税を25%から50%に引き上げたことで、タイ企業の競争力が低下した。さらに、イスラエルとイランの紛争がエネルギー価格の乱高下を招いているほか、輸出と観光業にも減速傾向がみられる。海外からの安価な輸入品の流入も続き、国内生産が輸入品に置き換わる動きが進む。農産品価格の急落によって農家の所得は減少し、地方の購買力が落ち込んだ。
 加えて、政治的な対立と不確実性が投資家や民間部門の信頼感を損なっている。資金流入とドル指数の下落により、バーツを含む域内通貨が上昇基調にあることも懸念材料となっている。こうした状況を受け、FTIは政府に対し、通商戦略の見直しと早急な対応を求めている。
 6月には、いくつかの好材料もみられた。7月初旬に終了予定だった米国の相互関税猶予措置を前に、駆け込み輸出が活発化したことがプラス要因となった。また、タイと米国の通商交渉がポジティブな方向に進んでいる兆しがみられたほか、工業事業者は年央にかけて実施される企業の販売促進活動が国内消費を下支えする効果にも期待した。
 6月にFTI傘下の47産業グループの1342社を対象に実施した調査によると、事業者が懸念を強めている要因は、融資へのアクセス(51.7%)、為替レート(39.9%)、エネルギー価格(31.3%)、貸出金利(24.7%)。融資へのアクセスに対する懸念の増大は、今年第1四半期の起業向け融資が0.8%減と収縮に転じたことが背景にある。為替への懸念は、輸出業者によるもので、バーツが1ドル=32バーツ台前半に上昇している。貸出金利に対する懸念が5月調査(17.6%)から上昇したのは、タイ中央銀行の金融政策委員会(MPC)が6月25日の政策会合で金利の据え置きを決定したことによる。
 一方で、国内経済(61.0%)、世界経済(57.7%)、政府の政策(47.5%)についての懸念は、前月と比較して低下した。政府が総額1150億バーツの景気刺激策を決定したこと、イスラエルとイランが停戦合意に達したことや、米国との関税交渉進展のニュースが背景にあった。
 向こう3か月の信頼感指数は、5月の91.7ポイントから低下し、90.8ポイントとなった。タイ・カンボジア国境地域における問題の不確実性や、長期間にわたって検問所の閉鎖が続いていることが、国境貿易と越境取引に影響を及ぼすおそれがある。
 また、賃金委員会が最低賃金の引き上げを決定し、バンコクと一部の産業を対象に7月1日から400バーツに引き上げられたことが中小事業者の雇用に影響を及ぼしそう。米国の相互関税に関する政策の不確実性も、影響を与える要因となっている。
 一方で、景気刺激策として承認された1150億バーツの予算により、経済成長率を0.4%押し上げる効果が期待されており、「半額旅行支援キャンペーン」も、地方への所得分配と地域経済の活性化に寄与すると期待されている。
 FTIは、タイ・カンボジア国境検問所閉鎖によって影響を受けた事業者に対し、支援策を講じるよう求めている。売り先を失った商品の買い上げや他の市場への流通支援、低利融資の提供、中小企業に対する一時的な債務返済猶予、操業停止中の労働者への賃金補填、他の仕入れ先からの原材料輸入にかかる価格差の補助、海上輸送や航空輸送の支援などを求めている。
 政府が承認した1150億バーツ規模の景気刺激予算については、定められた期限内に速やかに執行するよう強く求めた。プロジェクトは厳格かつ透明な監督・モニタリング・監査が不可欠だと指摘している。
 8月1日に発効予定の米国の相互関税については、政府が発動前に交渉を加速させ、タイの競争力を維持できる水準まで関税率を引き下げるよう求めている。

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