2024年6月5日(水)号

1500バーツ以下の輸入品=VAT課税の省布告案を閣議決定

 チャイ・ワチャロン政府報道官が6月4日の閣議後に明らかにしたところによれば、海外から輸入される1500バーツ以下の商品に対しても7%の付加価値税(VAT)を課す財務省布告案が同日の閣議で承認された。官報記載から15日後に施行になる。今年末までの時限措置で、国税法典の改正により、追って恒久的な措置とする。
 チュラパン・アモンウィワット財務副大臣によれば、施行当初は国税局に代わって関税局がVATを徴収する。課税のためのシステムは国内外の企業のプラットフォームに接続される。

チュラパン財務副大臣


 消費者がネット通販などを通じて海外から個別に輸入した、価格が1500バーツ以下の商品へのVATの課税について、国税局が準備を進めてきた。タイ国内に拠点を持たない海外のプラットフォームで購入した商品については税を徴収できず、国内の業者との間で不公平が生じている。この点を是正して平等に徴税するため、国税法典の改正を進める。同財務副大臣は「外国でも容認されるような円滑で迅速、簡易な徴税システムを早期に適用したい」と述べている。

◆他国でも課税開始
 ティラート・アタナワニット関税局長によれば、ネット通販の普及で、外国、特に中国の廉価な商品をオンライン・プラットフォームを通じて購入するタイ人が急増している。同種の商品を販売している国内の業者は価格競争で苦戦を強いられ、廃業に追い込まれる者も出ている状況になっている。
 郵便小包で届いた商品を受け取る場合、購入者は郵便局でVATの支払いが義務付けられるようになる。従来、価格が1500バーツ未満の商品はVAT非課税とし、輸入関税を徴収するという方針だったが、この種の商品が大量に中国などから流入する中、当局が1本のコンテナに大量に混載されている商品の1つ1つを現場でチェックして関税を徴収するこは不可能で、VATを一律課税することにした。
 低価格商品に対する免税は世界的には一般的な慣行。過去の常識では商品として流通するものが1個だけ梱包されて輸入されるなどということは考えられず、一般個人が自身で使用するために持ち込むものと見做して免税対象としてきた。どの価格まで免税対象とするかは国によって異なり、タイはこれまで1500バーツを境界線として来たが、米国などはバーツ換算で2万バーツ相当としている。
 しかしデジタル化の進展で状況は大きく変化。たった1枚のシャツであっても輸入することが可能になり、利用する消費者が急増している。免税措置の対象となることで、これらの商品の価格競争力はさらに上昇し、国産の同種の商品を駆逐する事態になっていた。これを受けてタイだけでなく、オーストラリアなども低価格商品への課税を開始している。
 2021年にスワンナプーム空港、ムクダハン、ナコンパノムの国境検問所の税関を通過した宅配免税小包の数は全部で4080万点、金額は98億4000万バーツだったが、22年には4710万点、116億バーツに、23年には5680万点、179億バーツに増加している。都内ラクシーの郵便物集配センターに集積された郵便小包は21年が409万点、11億4000万バーツ、22年は291万点、8億9500万バーツ、23年は211万点、6億7600万バーツとなっている。

◆中国製品の価格優位は変わらず
 ネット通販インフラのプロバイダー、aコマース社のポール・シーウォラクンCEOは、VAT徴収による価格破壊の抑止という当局の趣旨には同意するものの、通関手続きが煩雑になることで手間と時間が増えることを懸念している。低価格を売りに業績を伸ばしているネット通販プラットフォームの中には、VAT徴収が業績に重大な影響を及ぼすところが出てくる可能性もある。ただしタイ国内の中小零細企業や国内経済が享受するメリットは大きくなることから、基本的にはVAT徴収を肯定的に受け止めている。
 あるネット通販事業者の幹部は、VAT徴収で中国製品と国産品の価格差は縮まるが、それでも中国製品の価格優位性は変わらないと指摘する。タイ電子商取引協会のカンティラット・パカワットクリルート会長は、「VAT徴収は業者によって受け止め方が異なり、中国製品を扱っている者にとってはコスト増、国産品を扱っている者にとっては朗報だ。いずれにしても関係政府機関は今回の措置が中国との間の通商合意に抵触する恐れがないかどうかについて注意を払う必要がある」と指摘している。
 国際貿易アナリストのアート・ピサンワニット氏は、7%のVAT徴収で中国製品が価格競争力を損なう可能性は低いと指摘。VAT徴収後の価格も依然として国産品よりも格安で、税制以外にも品質基準などを輸入品に厳格に適用することで、廉価で低質な商品の流入を抑止するといった措置が必要だと主張している。
 アート氏によれば、インドネシアなどは輸入品の価格が国産品より低かった場合に、価格水準がほぼ同額になるよう税額を設定する課税制度を採用している。またネット通販プラットフォームを通じた商品の販売価格の下限を3500バーツ相当に定めたことで、同国の対中国貿易赤字の削減に効果があったことも報告している。タイの対中貿易赤字は年間1兆バーツに達している。

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