2025年9月5日(金)号

アヌティン氏を首相に選出へ=タクシン元首相は出国

 下院は9月5日9時から本会議を開き、午後には首相指名の投票に入った。プームチャイタイ党のチャイチャノック・チッチョーブ議員が12時過ぎにアヌティン・チャーンウィラクン党首を推挙。プアタイ党はチャイカセーム・ニティシリ氏を対立候補として推したが、アヌティン氏の指名は確実視されている。一方、タクシン・チナワット元首相は4日、プライベートジェットで出国し、ドバイに向かった。5日の下院での首相指名、自身の警察病院入院事件の最高裁判決(9日)を前にした行動で、様々な憶測を生んでいる。

タクシン元首相とペートンターン前首相


 プームチャイタイ党はすでにクラータム党、パランプラチャーラット党、タイサーンタイ党、ペンタム党と協力関係を結んでおり、与党からの造反を含めて146議席を確保したとされる。民衆党(143議席)が支持に回ることで、アヌティン氏は下院の現有議席の過半数である257票を確保できる見込み。民衆党は、新政権が国会で施政方針を発表してから4か月以内に下院を解散し、国民投票を実施して新憲法を制定するという条件の下でアヌティン氏を支持する。
 新政権の正式な始動は、勅命に基づき正式に首相に就任してから組閣を終え、国会で所信表明を終えた時点となる。それまではプームタム首相代行による暫定政権が続く。民衆党との合意の4か月以内は、9月下旬または10月初旬が見込まれる所信表明演説の日から起算することになるため、下院の解散は1月下旬から2月上旬になる。下院の解散後、総選挙は45日以上60日以内と憲法に定められている。投票から選挙委員会(EC)による議席の確定、下院での首相指名、組閣、新首相による所信表明までには数か月を要するため、アヌティン政権は約10か月続く見通し。
 政治評論家は、連立政権の安定性は今後の課題になると指摘している。国民投票や憲法改正、下院解散といった条件が政権に大きな制約となる可能性がある。
 一方、出国したタクシン氏は当初、フアヒンに旅行に出かけるとしていた。後にシンガポールに向かうとしたが、最終目的地はアラブ首長国連邦のドバイだった。シンガポールへの飛行中、シンガポールのプライベートジェット専用空港であるセレター空港が午後10時に閉鎖されたため、ドバイに向かったとソーシャルメディアに投稿した。ドバイには主治医がいるほか、2年以上会っていない友人たちに会う機会もあるなどと投稿した。9月8日までにはタイに帰国し、9日に最高裁判所で判決を聞くと約束した。
 裁判所は、タクシン被告に対し、刑務所に収監されることなく2022年半ばから2023年初めまで警察病院14階で長期入院した事件の判決公判に出廷するよう命じている。
 プアタイ党は4日、党の最後の首相候補であるチャイカセーム氏がプームタム・ウェーチャヤチャイ首相代行ら同党幹部とともに記者会見を開いた。党としてチャイカセーム氏を次期首相に推挙し、所信表明を終えれば、すぐさま下院を解散すると表明。民衆党に秋波を送った。プームタム首相代行による解散権の行使が不発に終わったためで、民衆党がプアタイ党の候補を支持すれば、民衆党とプームチャイタイ党が合意した政権発足から4か月以内の解散よりも早期に解散が実現すると呼びかけた。
 追い詰められたプアタイ党の窮余の策だが、3日時点でプームチャイタイ党のアヌティン党首との合意文書に署名済みの民衆党が受け入れるはずもなく、ナッタポン・ルアンパンヤーウット党首はプアタイ党からのこの提案を一蹴している。同党首は、民衆党が野党として行動することを改めて強調した。新政府には参加せず、閣僚ポストを受け取らない。アヌティン氏の首相就任を支持し、合意条件を守るよう繰り返し求めた。
 こうしたなかで、タクシン氏が5日の下院での首相指名を見届けることなく唐突に出国したことは様々な憶測を呼んでいる。ペートンターン首相の解任後、プアタイ党が民衆党との交渉で、主張を二転三転させ、挙句の果てにはプームチャイタイ党を選ぶなら、解散権を行使すると恫喝するなど、同党がとった不誠実な態度は強い批判を生んでいる。チャイカセーム氏の首相就任による政権発足即解散の提案も最後の悪あがきと有権者に蔑まれている。
 タクシン氏の出国は、政界工作の万策が尽きたことに加え、9日の裁判で自身に不利な判決が下りることを見越したものとみられ、判決日までに帰国するとの言葉を信じるものは少ない。

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