2025年10月3日(金)号

ソブリン・ウェルス・ファンド構想=経済3団体合同常任委が支持表明

 商業、工業、銀行の経済3団体合同常任委員会(JSCCIB)は10月1日の月例会見で、資本の流出入や為替管理の観点からソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)の設立構想に支持を表明した。タイ銀行協会(TBA)のパヨン・シーワニット会長[=写真]は、ドルの需要を高めることで為替の安定に寄与でき、米国による「為替操作国」監視リスト入りリスクを回避する代替手段になり得ると説明。急速に変化する環境に対応する新たな金融安定策の必要性を指摘した。


 JSCCIBは、バーツがドルや域内通貨に対して強含み、輸出や観光の競争力を損ねていることに懸念を示した。2025年の輸出は2~3%成長、外国人観光客は3400万人規模を予測し、経済成長率は1.8~2.2%の見通しを維持した。新政権の経済政策や景気刺激策は2026年以降の液剤成長の下支えにつながるとの見解を示した。
 この日の会合では、アヌティン首相が経済3団体との個別の会合を通じ、民間の意見を真摯に聞き入れ、協働的な姿勢を示したことに謝意を表明した。声明では多くの民間側の提案がすでに政府の政策に反映されているとし、今後これらが具体的かつ実効性を持って推進されることで、タイ経済の信頼と安定した成長につながるとの期待を示した。JSCCIBは下院解散総選挙までの限られた期間においても、政府の取り組みを全面的に支援する意向を強調。経済対策の停滞を防ぎ、政策の継続性を確保することが重要だと指摘した。
 経済を下支えしてきた輸出の伸びは鈍化しており、今年第4四半期から来年にかけて減速基調が強まる見通しにある。OECDは世界経済の成長率を今年は3.3%とする一方、関税の引き上げが個人消費や雇用を圧迫するマイナス要因から、来年は2.9%へ減速すると見積もっている。対米輸出は減少が見込まれ、国連開発計画(UNDP)は、アセアン全体で9.7%減、タイは12.7%減と評価しており、世界貿易は脆弱性を強める見通しにある。
 こうした環境下で、バーツは上昇基調を保ち、上昇を続ける金価格と強い相関を示している。一方で、金取引や暗号資産取引、非正規の外国人労働者による本国送金の影響を説明する詳細データが不足しており、国際収支では多くが内訳不明の誤差・遺漏に計上される状況が続く。JSCCIBは、関係機関が連携してデータを接続し、これら取引の実体経済への影響を早急に分類・分析すること、あわせてドル安基調を踏まえた長期的な均衡を図る構造的措置の検討を提案した。また、ソブリン・ウェルス・ファンドの創設など、既存の制度にとらわれない手段で市場の変動を管理するよう求めている。
 JSCCIBは、今年の輸出伸び率の見通しを2~3%に据え置いた。ただし、直近のバーツ高が輸出競争力と観光業に直接的な影響を及ぼしており、大きな下押し要因になっていると指摘した。第4四半期にかけてバーツ安方向へと安定させることができれば、輸出額は押し上げられる可能性があるとみている。あわせて新政権の経済政策が実行に移されれば、輸出環境は改善に向かう余地があるとの期待を示した。輸出の状況は引き続き注視し、来月の定例会合で見通しを改めて検討する方針を明らかにしている。
 JSCCIBは、域内付加価値比率(RVC)の水準を早急に引き上げる必要があると考えている。適正水準を維持できなければ、米国市場におけるタイ製品の競争力が損なわれ、関連する約40万人の雇用に影響が及ぶ可能性がある。このため、国産原材料の利用を促進し、サプライチェーンの川上産業を強化することが不可欠と指摘した。米国が求めるRVCの目安は40%とされ、これを満たすことが、タイの事業者が国際市場で安定的に競争力を維持する上での重要な基準となる。
 タイ経済は今年、1.8~2.2%成長が見込まれており、従来の予測を据え置いた。ただし政府が2026年度の予算執行を年内に全体の約3分の1まで前倒しでき、さらに外国人観光客数を3400万人規模まで押し上げることができ、「コンラクルン・プラス」による消費刺激、中小企業の支援、「Made in Thailand(MiT)」の推進といったクイック・ビッグ・ウィンの政策パッケージが機能すれば、経済を大きく下支えすることができるとした。この場合、成長率は2.5%に近い水準まで押し上げることができると期待している。
 JSCCIBは、タイ商業会議所大学(UTCC)による調査結果を踏まえ、タイ国内における深刻な汚職の状況に強い懸念を示した。汚職は経済発展の大きな障害であり、国内外の投資家の信頼を損なう要因となっている。同調査によると、タイにおける汚職は依然として政策レベルと地方レベルでみられる。透明性を欠いた大規模公共事業予算の利用、調達プロセスにおける賄賂要求、法律の恣意的・不平等な適用、といった事例が指摘されている。
 その結果、数多くの事業者が今なお圧力に直面しており、行政手続きや契約獲得の過程で官僚や政治的権力者に特別な資金を支払うことを余儀なくされている実態が浮き彫りとなっている。
 JSCCIBは「Zero Corruption」ワーキンググループを設置し、民間企業部門と市民社会からの提案を集約し、体系的な政策提案として政府に提出する考え。提案する措置が実際に実行され、投資家の信頼を回復し、経済と政治を透明で、公正で、持続可能なものとすることを目的としている。ワーキンググループは経済3団体のほか、パートナーとして、反汚職連合(ACT)や公的部門汚職防止取締委員会(PACC)などが参画する。緊急、中期、長期において優先的に取り組むべき課題を順位づけし、反汚職を実効的に推進していくとしている。

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