憲法改正3案を国会が審議=上院票不足でプアタイ党案は否決
国会は10月15日、憲法改正案3本を審議し、第1読会でいずれも過半数の支持を得たが、プアタイ党案は上院の必要賛成数に届かず否決された。国民投票は総選挙と併せて来年3月に実施される見通しで、与野党は一本化に向けた協議を急ぐ。憲法改正を巡っては、制度の正統性、政権運営の困難さ、国民参加のあり方をめぐる論争が続いている。
国会は15日、上下両院合同会議を開き、プームチャイタイ党、プアタイ党、民衆党の3党が提出した憲法改正案を審議した。第1読会では、プームチャイタイ党案が629票(上院167票)、プアタイ党案が521票(上院60票)、民衆党案が460票(上院108票)の賛成を得た。3案はいずれも国会の過半数の支持を得たが、プアタイ党案は憲法で定められた上院在任議員数の3分の1(66票)に届かず、否決された。
採決を前にした討論では、各党の代表がそれぞれの改正案に関する見解を表明した。プアタイ党のスティン・クランセーン下院議員は、タイで憲法が頻繁に制定される背景には「書いては破られ、破られては書く」という悪循環があると指摘し、問題は「書いた人」ではなく「破った人」にあると述べた。さらに、「クーデター後の憲法は国民に受け入れられにくい。うんざりしているが、国民生活の問題を解決するには良い制度を構築することから始めなければならない」と強調した。
スティン議員は、2017年憲法についても「何度も改正が試みられ、外国からも受け入れられていない」と述べ、選挙で各党が改正を掲げたのは「現行憲法の下では政権運営が困難だからだ」と主張した。「この憲法は第1党が政権を握れず、第3党や第4党が政権を構成する仕組みになっている。不正防止を目的に掲げながら、これまでに多くの政党が解散に追い込まれた。3年間で3人の指導者を生んだ」と批判した。
また同議員は、下院議員と上院議員の行動を制約する第144条の問題を指摘した。「デジタルウォレットのために予算を国民支援に振り向けようとしても、議員は政治的権利を剥奪される可能性がある。これは国民代表の役割を強めるのか、それとも損なうのか」と問いかけ、憲法改正を望まない政党が信頼を失うことへの懸念を示した。
民衆党のパリット・ワチャラシン下院議員は、一部の議員から自党案が「統治体制の転覆を狙う破壊的な案」と非難されたことに反論した。特に、第1章と第2章の文言改正を禁止していないことが統治体制転覆に結び付けられている点について、「文言の見直しを検討する権利は議員と国民全員にある。第1章と第2章をロックしないことは体制転覆を意味しない」と反駁した。
プームチャイタイ党のパラドーン・プリサナーナンタクン総理府相は、自党案について「憲法改正で国民参加が不十分だとの懸念を踏まえ、当初は国民の直接選挙で憲法起草議会(SSR)を選出する構想だったが、憲法裁判所の判断により国会選出とした」と説明した。さらに「自党案が『青い憲法』(党利的な改正)につながるとの懸念は当たらない。我々は案に固執していない」と強調した。そのうえで、「国民参加への懸念がある場合には、プアタイ党のモデルを参考に、地方議会代表が県単位でSSRを選出し、国会に送り、300人から100人に絞る方式を採用する用意がある」と述べた。
憲法改正の国民投票は、現政権の公約に基づき、4か月後の2026年1月31日に予定される国会解散に伴う下院総選挙と同時に実施される見通しとなっている。ボウォンサック・ウアンノー副首相[=写真]は、投票日を2026年3月29日とする案を最有力候補として挙げた。

副首相によると、国民投票法では投票日の少なくとも90日前までに官報で公表する必要があるため、国会は12月15日までに憲法改正案を可決させる必要があるという。ただし、公布を待つ新たな国民投票法改正案が施行されれば、公表期限は60日前までに短縮される。この場合、国会での最終審議は翌年1月15〜19日まで延長される見通しとなる。
ボウォンサック副首相は、「現時点では3案を一本化した上で、12月15日から20日の間に第3読会で採決を行なう必要がある」と述べ、議員に協力を呼びかけた。
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