2025年11月24日(月)号

付加価値税、2028年に8.5%へ=2030年には10%に引き上げ

 エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相[=写真]は11月20日、「マネーエキスポ2025」で講演し、付加価値税(VAT)税率を2028年までに1.5ポイント引き上げて8.5%にする計画を明らかにした。2030年には法定上限である10%まで引き上げる方針だと述べた。税率の引き上げは歳出削減とあわせて中期的な財政の安定性を強化するための財務省の計画の一部とされる。


 エークニティ氏は、財務省が中期財政枠組み(MTFF)を策定し、そのなかに2028年の段階的VAT引き上げが盛り込まれていると述べた。2028年には、タイは本来の成長力を取り戻していると考えており、その頃がVATを段階的に引き上げ始める適切なタイミングになると述べた。
 中期財政計画は、11月18日に閣議承認されている。政府の財政状況に対する国内外の投資家の信頼を得ることが主な目的で、計画には政府がVATを引き上げられない場合に代替措置を講じる方針も明記されている。エークニティ氏は、現在の経済状況を踏まえると、タイはまだVAT税率の引き上げの準備ができていないとも語り、今年や来年の計画ではないことを強調。タイ経済が2008年時点でも充分に回復していない場合、VAT増税ではなく、他の収入源の確保や歳出の削減といった対応策をとるとしている。
 ムーディーズとフィッチ・レーティングスは、タイのソブリン格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げている。これに対し、S&Pグローバル・レーティングは、政府の財政規律を維持する計画を信頼しているとして見通しを変更しなかった。2社の見通し引き下げの理由は、タイの財政赤字が国際基準(GDP比3%未満)を上回っている点にある。2025年度の財政赤字は4.4%に達している。
 中期計画では、政府財政の健全性に対する信頼を回復するため、2029年までに財政赤字をGDP比3%未満に引き下げると明記した。VAT引き上げや各種控除の見直しといった税制改革に加え、中期計画には歳出削減、インフラファンドの活用、官民連携(PPP)の拡大を通じて公共投資を支え、財政負担を軽減する方策も含まれる。
 経済学者の大半は、VAT税率の引き上げは政府にとって避けられないとの見方をしている。タイの財政は、10年前には公的債務残高の対GDP比が40%台にすぎなかったが、今や70%に近づいている。危機的状況ではないものの、注意が必要で、歳入増の計画なしに政府が財政赤字を続ける余裕がないことを意味している。
 ただし、VAT税率の引き上げは、景気が一定の水準、あるいは十分に回復した段階で行なうことが重要で、エコノミストは、経済が適切な水準に達していない状態で税率を引き上げることは、家計や中小企業の状況を悪化させるだけで、すべきではないと考えている。税率引き上げの影響を緩和するための明確な支援措置も必要になる。
 VATは1992年に導入されている。法定税率は10%。制度発足当初から時限減税措置がとられ、7%の税率でスタートし、以来、時限減税の期間を延長してきた。ただし経済危機が生じた1997年にはIMFの指導のもと、時限減税が打ち切られ、10%の税率が課されたことがある。当時、IMFの緊縮財政という処方箋が国際的にも強い批判を受けたこともあり、危機発足時のチャワリット政権を引き継いだ第2次チュアン内閣がVATの時限減税を復活させている。

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[閣議決定]
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