2025年11月28日(金)号

財政局の月例経済財政報告=民間投資の減速傾向続く

 財務省財政局が11月27日に発表した月例経済財政報告によると、10月のタイ経済は、16か月連続で拡大した物品輸出と、国内観光の伸びが支えになった。一方で、民間投資と外国人観光客数は引き続き減速している。ウィニット・ウィセートスワナプーム局長[=写真]は、政府の景気刺激策の効果、南部の各地で発生している洪水被害、さらには複数地域での地政学的緊張の動向を注視する必要があると指摘。こうした要因がタイ経済に影響を及ぼす可能性があると述べた。


 民間消費の指標は前年同月比で横ばいの兆しを示した。10月の新規乗用車登録台数は前年同月比18.1%増となったものの、季節調整後の前月比では1.4%減となった。消費者信頼感指数は10月に50.7から51.9ポイントへと上昇した。政府の景気刺激策、特に「コンラクルン・プラス」への期待感が信頼感を押し上げた。ただし、米国の関税政策の貿易への影響や地政学的緊張への懸念は依然として残る。10月の二輪車の新規登録台数と実質農業所得は前年同月比でそれぞれ5.3%減、13.7%減となった。
 民間投資の指標は前年同月比で減速の兆しを示した。設備投資の動向を示す資本財輸入額は、10月に前年同月比1.2%減となり、季節調整後の前月比でも5.3%減となった。一方、10月の商用車の新規登録台数は前年同月比1.7%減となったものの、季節調整後の前月比では4.8%増となった。
 予算執行は増大した。10月の政府支出は7175億バーツとなり、うち2026年度予算からの支出が6883億バーツで、内訳は経常的経費が5816億バーツ、投資的経費が1067億バーツとなった。前年度予算からの執行額は292億バーツだった。この結果、政府は合計で7175億バーツの予算を執行したことになる。
 輸出額は前年同月を上回った。10月のドル建て物品輸出額は288億3560万㌦となり、前年同月比5.7%増で16か月連続の拡大となった。原油・同関連品目、金、武器を除いた輸出額は15.7%増で、コンピュータ・関連機器が67.8%、電話機・関連機器が21.5%、自動車・同部品が16.3%増と伸びた。このほか、動植物油脂、生鮮・冷蔵・冷凍エビ、果物缶詰・同加工品がそれぞれ順に168.9%、24.3%、15.0%増加した。一方で、米、天然ゴム、タピオカ製品、ラジオ・テレビ・同部品の輸出は減少した。
 主要市場別にみると、米国、インド、中東、中国向けがそれぞれ順に32.9%、29.0%、9.4%、9.3%と伸びたものの、インドシナ4か国向けとオーストラリア向けはそれぞれ15.6%、0.2%減となった。
 サプライサイドの指標では、特に外国人観光客による観光サービスが鈍化した。一方、国内観光は前年同月を上回った。10月の外国人観光客数は257万人で、前年同月比3.9%減となったものの、季節調整済み前月比では8.3%増となった。国内観光は2320万人となり、前年同月比2.0%増となった。
 農業部門では、10月の農産物生産指数が前年同月比1.1%増となり、季節調整済み前月比で3.6%増となった。天然ゴム、パーム椰子、トウモロコシなど主要作物の生産増が寄与したものの、キャッサバと果物の生産は前月から減少した。
 工業部門では、10月の工業部門信頼感指数が87.3となり、前月の87.8ポイントからわずかに低下した。広範な地域での水害や洪水への懸念、国境貿易の減少が影響した。一方、タイの購買担当者指数(PMI)は56.6となり、前月の54.6ポイントから上昇した。
 経済安定性は良好な水準を維持した。10月の一般インフレ率はマイナス0.76%、コアインフレ率はプラス0.61%となった。9月末時点の公的債務残高はGDP比64.8%で、2018年国家財政規律法で定められた財政規律の枠内に収まっている。対外面の安定性も堅調で、世界経済の変動リスクに対応できる水準を維持している。10月末時点の外貨準備高は2720億㌦と高水準を保った。
 世界の経済・金融情勢は前月から改善した。10月の世界総合PMI(Global Composite PMI)は52.9となり、前月の52.5ポイントから上昇した。指数は50を上回っており、世界経済が拡大基調にあることを示している。世界製造業PMIは50.8となり、前月の50.7ポイントからわずかに上昇した。生産と新規受注が3か月連続で拡大した。世界サービス業PMIは53.4となり、前月の52.9ポイントから上昇した。サービス部門が34か月連続で拡大したことを示している。
 世界の観光と輸出の動きも堅調に推移している。また、各国の政策金利は、多くの国でインフレ率が低い水準にあることから、引き下げ方向に動きつつあり、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げの方向性も示されている。一方、地政学リスクでは台湾海峡情勢で、中国と台湾双方の強硬姿勢により緊張が高まる傾向がみられる。
 タイの金融市場は、足もとで一部に持ち直しの兆しがみられる。特に株式市場では、個人投資家の買いが戻り始めている。11月24日には12億5161万バーツを買い越した。国内投資家のタイ株式市場への信頼が続いていることを示している。11月(11月24日までの累計)では214億1610万バーツの買い越しとなり、10月の134億1737万バーツに続く買い越し基調が続いた。年初来の買い越し額は1545億8098万バーツに達し、短期的な利益確定売りがみられるなかでも、個人投資家の強い信頼が維持されている。
 一方で、外国人投資家は11月24日に11億3479百万バーツの売り越しとなり、11月全体(11月24日まで)は125億351万バーツの売り越しとなった。10月の43億8830万バーツの売り越しに続く動きで、タイ経済や金融市場の安定見通しが改善するなか、海外勢が一部ポートフォリオを調整している状況がうかがえる。一方で、債券市場では、11月24日に14億6400万バーツの買い越しとなり、11月累計の買い越し額は151億5060万バーツとなった。10月の371億5900万バーツから伸びは鈍化したものの、年初来では789億575万バーツを買い越している。世界経済の不確実性が残り、主要国の金融政策が依然として引き締まり基調にあるなかでも、タイの財政の安定性や政府債の安全資産としての魅力が評価されていることを示している。

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