2025年12月4日(木)号

11月のインフレ率は-0.49%=2026年予測は0.0~1.0%

 商業省が12月3日に発表した11月の一般消費者物価指数(CPI)は、100.15となり、前年11月の100.64ポイントから0.49%低下した。物価の下落幅は前月のマイナス0.76%からは縮小した。ナンタポン・ヂララートポン商業政策戦略事務局長[=写真]によると、インフレ率が引き続きマイナスとなったのは、電力料金や燃油価格といったエネルギー関連の物価が、国際エネルギー情勢と政府の生活費負担軽減策を背景に下落したことが大きい。一方、食品・飲料は、過去3か月連続の下落から上昇へと転じた。野菜、調理済み食品、ノンアルコール飲料の価格が上昇した。その他の物品・サービスの価格動向は、全体的なインフレに大きな影響を与えるものではなかった。


 11月のインフレ率は前年同月比0.49%の下落となったが、品目別では明確な動きが見られた。非食料・飲料の物価は1.13%の下落となり、特に電力料金やガソリン、軽油、ガソホールといったエネルギー関連物価が大きく下がったほか、制汗剤、石鹸、ヘアコンディショナー、シャンプー、スキンケア製品、フェイスパウダーなどのパーソナルケア用品、自動車、航空運賃、各種衣料、洗剤や柔軟剤、床用洗剤、漂白剤といった家庭用清掃関連製品の価格も下落した。一方で、家賃、海外・国内旅行費、ごみ収集料金、理美容サービスなどは上昇した。
 食料・飲料の物価指数は前年同月比0.54%の上昇となり、調理済み食品(総菜、汁かけ飯、麺類)、生鮮野菜(コリアンダー、空心菜、ナス、カイラン、白菜、唐辛子、キュウリ、さやいんげん)、ノンアルコール飲料(インスタントコーヒー、ホット/アイスコーヒー、チョコレート飲料)、砂糖を使用した菓子類(デザート、アイスクリーム)、魚介類(タイ、蒸しアジ、イカ)、調味・料理用材料(ココナッツミルク、チリペースト、食用油)が上昇した。ただし、果物(マンゴー、ブドウ、バナナ、りんご、オレンジ)、鶏卵、もち米、精米、豚肉、ニンニクなどは価格が下落した。
 生鮮食品とエネルギーを除いたコアインフレ率は0.66%の上昇となり、前月の0.61%からわずかに加速した。
 消費者物価指数は、前月比で0.15%上昇した。食品・飲料カテゴリーが0.28%上昇した。なかでも生鮮野菜の価格が上昇した。香菜、赤唐辛子、さやいんげん、空芯菜、ナス、白菜、ライム、キュウリなどの価格が上昇しており、降雨が続いたことが栽培状況に影響を及ぼし、市場出荷量が減少した。デリバリー食品は事業者による販促キャンペーン期間が終了したことで値上がりした。豚肉の価格も上昇している。観光シーズンに伴い消費需要が高まったことに加え、政府の消費刺激策の恩恵も受けた。
 一方で、一部の商品は価格が下落した。生鮮果物では、みかん、パパイヤ、ブドウ、アボカドが値下がりしたほか、鶏卵、白米、もち米、飲料水も価格が低下した。
 商業省は、2026年の一般インフレ率の見通しを0.0~1.0%(中央値0.5%)と予測した。物価を押し上げる要因としては、(1)主要農産物価格の安定化政策により農産物価格は上向く見通しにある。加えて、農家が前年に価格が低かった品目の作付量を減らす傾向にあり、一部の農産物の市場出荷量が減少し、価格上昇につながるこ。(2)観光部門の回復が進み、観光客数が約3490万人と2025年の3340万人から増加し、観光収入が2兆7900億バーツと見込まれることで、関連する商品・サービス価格が上昇する可能性がある。
 一方で、物価を押し下げる要因もある。世界の原油価格は4年連続で下落する見通しで、国内の小売油価格が低下し、特に軽油価格は2025年の平均を下回る傾向にある。政府は家計の負担軽減のための支援策を継続する見通しで、特に家庭向け電力料金、公共交通運賃の引き下げや液化石油ガス(LPG)価格の据え置きなどが挙げられる。
 タイ経済が2026年に1.7%の低成長にとどまり、2025年の2.0%を下回る。8年連続で3%を下回る成長となることで、国内需要は弱々しいままで、デマンドプル型のインフレ圧力に欠ける。また、主要国の経済成長も低く、輸出製品の価格が継続的に下落するため、低インフレが海外から持ち込まれる傾向にある。さらにバーツ高により、衣料品、電化製品、電子機器など、価格の安い輸入品が流入しやすくなることも物価を引き下げる要因になる。
 一方、11月の生産者物価指数(PPI)は、109.4ポイントとなり、前年同月と比べて1.6%減少した。農業・漁業部門は12.6%低下した。籾米、キャッサバ、パーム椰子、天然ゴム、豚(生体)、牛(生体)、バナメイエビなどが下落した。鉱業製品の物価は6.3%下落した。主に原油・天然ガスの価格が下落した。工業製品は0.1%上昇した。主に、その他工業製品(金、宝飾品)が上昇した。
 生産者物価指数を生産段階別にみると、完成品は1.4%上昇した。半製品の指数は3.9%低下した。シート状ゴム、砂糖、砕米、燃料油、合成樹脂、プラスチック製品(プラスチック容器、パイプ、継手)などが下落した。原材料の指数は12.8%低下した。主に籾米、天然ゴム、サトウキビ、ラテックス、原油の価格低下による。

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