アヌティン首相が下院解散
アヌティン首相兼内相[=写真]は12月11日夜10時5分、下院の解散を宣言した。国内政治の問題が深刻化したため、権力を国民に返すと述べた。ワチラロンコン国王は、下院解散の勅令を裁可し、アヌティン首相が副署した。12日には内閣法制員会事務局のウェブサイトを通じて「仏暦2568年・下院解散勅令」を公布した。勅令の主文では、首相が上奏した内容を踏まえ、国王が下院を解散する旨を宣言している。

11日夜、アヌティン氏は自身のFacebookで「国民の皆さんに再び権力をお返しする」と表明した。民衆党との合意では政権発足から下院解散まで4か月の猶予が与えられており、解散は当初、来年1月末を予定していた。しかし、この日、上院議員の3分の1が新憲法案の承認権限を持つと定めた条項を削除する改正案を国会両院合同会議が反対329、賛成302で否決したことを受けて解散を決断した。
首相は上奏文で、政府が2025年9月から政権を担ってきたものの、複数政党による少数与党であり、下院で多数派を形成していなかったと説明した。この間、経済・社会・政治、国際関係、地政学、さらにタイ・カンボジア国境の不安定化など、国は多くの不確実性に直面してきた。
政府は、山積する緊急課題に迅速に対処し、国内の安定と平和の確保、国家運営の前進を目指してきた。首相は、憲法改正の推進、貿易戦争の影響への対処、国民所得の底上げによる格差縮小、自然災害被災者の救済、違法賭博やオンライン詐欺などの犯罪対策、タイ・カンボジア間の係争解決に向けた外交交渉と防衛体制の強化など、多方面での取り組みを挙げた。
しかし、国家運営には安定性が不可欠で、少数与党に加えて国内政治の混乱が重なった結果、政府は継続的で効率的かつ安定した行政運営が困難になっているとし、現状を放置すれば政治の不安定化と国際的な信認の低下を招き、経済への重大な影響をもたらす恐れがある。そして、最終的には議会制民主主義への国民の信頼低下につながりかねないとした。
首相は、こうした状況を踏まえ、下院解散による総選挙の実施が最適な解決策であると結論づけた。国民に政治的決定権を速やかに返還し、多数派を得た安定した政府を成立させることで、国家運営の円滑化を図るとした。
勅令は、憲法第103条と第175条に基づいて発せられ、官報に公布された日から施行される。総選挙は、公布日から45日以上60日以内に選挙委員会(EC)が期日を定めて実施する。
通常、投票日は日曜日になることが多いため、選挙は2026年2月1日または2月8日に実施される可能性が高い。ただし、今回の選挙は国民投票と併せて実施される点が特徴で、国民投票の準備が間に合うかどうか、ECの対応を見守る必要がある。12月11日の国会両院合同会議では、「新憲法案を作成することに賛成かどうか」を国民に問う国民投票の実施を進めることが可決されている。
ECのナロン・クランワリン委員長は、総選挙実施の準備は整っていると述べている。週明けにも内閣との協議を予定し、選挙は2月8日に実施される可能性があると述べた。
ナロン氏は今月7日に任命されたばかりで、12日午前に他の新任委員2名とともに任命式が執り行なわれている。ナロン委員長は記者団に対し、「下院が解散されれば、選挙委員会が投票日を決定しなければならない。我々はすでに準備を進めてきた。国会が解散される可能性を事前に想定し、一部の県で増減した人口に応じた選挙区の区割り作業を終えている」と語った。選挙日が2月8日になる可能性について問われると、「その可能性はある」とした。
タイ・カンボジア国境での武力衝突により、全国同一日に選挙が実施可能かとの質問には、「状況を常に注視しているが、選挙は全国同時に行なわなければならない」と答えた。
選挙と同時に国民投票を実施する可能性に関しては、まずは内閣の判断を待つ必要があると述べるにとどめた。週明けには内閣の代表が選挙委員会を訪れ、暫定内閣の権限について協議する予定。暫定内閣には国民投票の実施権限があり、予算承認の権限もあると理解していると語っている。
その他のニュース
[経済ニュース]
マイルド・ハイブリッド車=マツダがタイを生産拠点に
BOI訪問団が訪日=「タイ日投資フォーラム」を開催
個人貯蓄投資口座=経済閣僚会議で検討
国境紛争と関税協議は別問題=商業相「米との交渉は継続」
モーターエキスポ=EV予約が過去最高水準に
セントラル・リテール=グリーンローン20億バーツ
香港市場でタイ米優位続く=輸入団が南部の産地を視察
タピオカ輸出でサウジ開拓=ARASCOと3万㌧契約
[社会ニュース]
国際反汚職デー=政府が反汚職イベントを開催
国境紛争が世界遺産を脅かす=カンボジアの軍事利用を非難
洪水で子ども14万8000人に影響=南部3県の学校が深刻な被害
スリランカ贈呈象2頭の帰還問題=環境相が現地で判断材料を収集
外国人の入国拒否が増加=観光業界は透明な規則求む
ハジャイの復旧=7割まで進展
メソートの外国人収容所=中国人300人余が暴動
[企業紹介]
バンコク航空燃料サービス社=航空燃料税引き下げや構造改革を提言
[BOI認可事業]
11月3日認可45事業


コメント